「そろそろ目的地も近付いてきたけど、準備はいいかー?」
「問題ない。気力は十分」
はてさて、サービスエリアを飛び出してからおよそ三時間ほど。
……案の定、件の無人島近くにたどり着くまでに予定オーバーしてしまうことになったが、それでもここまで来たのだから問題はない……ないったらない。
そういうわけなので、いい加減異世界転移の予兆でも出てくるんじゃないかなー?……とみんなに心構えをするように注意したのだけれど……ううむ、車内にて抑圧されたTASさんが、こちらが思う以上に張り切っておる。
やる気が空回りしなければいいのだが……TASさん相手だと、空回りしても必要分はこなす……というか、それ以上を求めて無茶苦茶しそうなので問題はなさげ、というような気配もするような?
いやまぁ、最高のパフォーマンスを発揮することを意識するのであれば、できうる限りテンションは均一にしておくべきのような気もするのだが。
あとやっぱり無茶苦茶するのはよくない()。
とはいえ、彼女のイライラについても一応の納得はできるため、その辺りのことを突っ込むのは止めにしておく俺なのであった。
……で、一瞬車内に向けていた視線を前に戻せば。
確かに目的地へと多少は近付いたものの、それでも周囲の渋滞は変わらず。……もう少し先に進めれば、この渋滞から離れて島の方に移動することもできるとは思うのだが。
でも、タイミング的にはそろそろ転移が発生しそうな予感もするし、そうなったらわざわざ曲がるまで待つ意味も無くなるような……?
そんな感じに、あれこれと考えることで渋滞待ちの時間を潰している俺であるが、その行動にもそろそろ限界が見えて来た気がする。
なにせこの辺りの思考、既に四回くらいリピート中だからね!
……うん、運転手である以上気分転換に出来ることの種類が少なく、今やれることというと何かを考える……くらいしかないから暇なんだわ、マジで。
それに、さっきまではTASさんが横にいてあれこれ喋ってたりしたけれど、その彼女も結局耐えかねて他のみんなの遊びに無理矢理混ざりに行ったし。
……え?また追い出されたりしなかったのかって?
CHEATちゃんが生け贄になることでバランス取ってましたよ、ええ。
まぁ、真面目にTASさんの相手をさせようと(しかも手加減無しモードのそれを)すると、AUTOさんですら微妙に見劣りしてしまう以上、CHEATちゃん以外の誰に務まるんだ……って話でもあるのだが。
なので、こういう時は『流石CHEATちゃん!』って気分になるというか。
……え?本人かなり嫌がってないかって?気のせいじゃない?
ミラー越しに『やだーっ!?』みたいな感じに暴れているCHEATちゃんと、それに対して不敵な笑みを向けているTASさんが見えたりしたけど、俺は元気です()。
「……あれー?」
「露骨なまでに困惑していらっしゃいますわね。……まぁ実を言うと、私も似たような気分なのですが」
背後の騒ぎが沈静化した頃。
……
飲み物を持ってきたAUTOさんは、助手席部分で俺の様子を確認したのち、小さく苦笑しているが……その実、こちらと同じように困惑しているようでもあった。
それもそのはず。
今の俺達だが、渋滞から離れることに成功し、無人島への入り口部分にたどり着いていた。
……もう一度言う。
これにはTASさんも困惑顔。……
とはいえ、その気持ちもわからないでもない。
本来なら、この無人島に到着することは──例えそれが入り口にたどり着いただけであったとしても、本来はあり得ないことなのだから。
……そう、思い出して貰えればわかると思うのだが、前回の俺達が無人島に到着したのは
ということは、本来ならあの渋滞から飛び出し、この場所にたどり着くまでの一時間の間に異世界へと転移している……というのが想定されたルートになるはずなわけで。
それが何のトラブルもなく、こうして無人島に到着してしまっているのだから、何かしらの干渉があったことを疑うのは寧ろ正常な反応……ということになるのだ。
で、現行メンバーでそんなことが出来そうでかつ、わざわざTASさんに逆らうだけの気概があるのはROUTEさんくらいのもの、というわけで。
「おかしくねーか?!CHEATとかさっきまでこいつと張り合ってたじゃねーか!?重要参考人だろどう考えても!?」
「甘いねROUTEねーちゃん。逆らっていいタイミングは決まってるのさ」<キリッ
「キメ顔で情けねぇこと言ってんじゃねー!!?……ってギャー!!?」
「例え犯人じゃなくても、それはそれで貴方にはぼこぼこになって貰う。何故なら私のストレス解消が必要だから」
「横暴すぎるだろうがっ!?」
うーん、それはごもっとも。
でも貴方が受けてくれることで、俺への被害は確実に減ってるのでとても助かってますよ。
……とは口に出さない俺なのであった。絶対キレられるからね、仕方ないね。