「満足した」<フンス
「ああそうかよ……」<ボロッ
さて、小一時間ほど経過したあとのこと。
散々暴れて満足したのか、どことなくツヤツヤしているTASさんと、そんな彼女と対称的にボロボロになっているROUTEさんを見て、思わず苦笑する俺である。
そうして苦笑しつつ、はてどうしたものかと首を捻る。
本来の予定では、こうして無人島の入り口に立つのはもっとあとのこと。……具体的には異世界から帰ってきてからのはずだったため、予定が空なのである。
無論、とりあえず無人島でキャンプをする、という風に予定を変更してもいいのだが……その場合、TASさんの不機嫌ゲージがどうなるかわかったものではないというか。
「いやまぁ、ROUTEさんがボロボロになり続けてくれるのなら、それでもいいかなーとは思うんだけど」
「ざけんなっ!!早急に解決策を見つけやがれ!」
「ですよねー」
散々追い掛け回されたROUTEさんは、かなりご立腹のようす。……この状況下で呑気にキャンプなんぞしていた日には、それこそ被害が飛び火してくることだろう。
そういうのは求めてないので、真面目に解決策を考える俺達なのであった。
「……とは言っても、具体的になにをどうしろと?あくまで偶然を装わないといけないんだから、私がどうこうってわけにもいかないんでしょ?」
「そうなんだよねー……」
そうして考え始めて数秒、真っ先に声をあげたのがCHEATちゃんである。
……確かに、現状ここにいるメンバーの中で、積極的に異世界転移を引き起こせそうなのは彼女か、もしくはTASさんのどちらかと言うことになるわけだが……この旅行に出る前に言っていたように、『積極的な異世界転移』は禁止事項だ。
できるかも?……という仮定の段階ならともかく、実際に出来てしまうと最早言い訳もできない……というわけで、こちらから積極的に転移しようとするのはご法度、というわけだ。
だからこそ、ここに来るまでに転移が発動しなかったことに困惑しているわけだし。
「……ふむ、じゃあもう一度ここに来るまでの行程をやり直す、というのはどうだろう?具体的には、陸路じゃなく海路を使う方向で」
「あー、移動手段が悪かったかもしれない、ってこと?……でもその場合、また船体真っ二つの可能性大じゃね?」
「…………ま、まぁ。背に腹は代えられない、というやつだよ、うん」
(今露骨に嫌そうな顔しましたですぅ)
その話を聞いて、次に声を出したのはMODさん。
あくまで偶然、という体を装う必要がある以上、こちらに試すことのできる方法はそう多くはない。
それを踏まえて、彼女は
確かに、一度目が偶然なのであっても、似たような環境を用意すれば再度同じことが起きる可能性……というのは十分にある。
また、検証をするのなら可能な限り同じ条件を揃える必要がある、というのは寧ろ常識の範疇だろう。
故に、今回明確に前回と違う部分──移動手段の変更が鍵となるのでは?……という話になるのであった。
……もっともらしい話ではあるが、同時に問題もあった。
当時の再現を考える必要があると言うのであれば、それはすなわち前回のように船が真っ二つになる必要性もあるのではないか?……という話になってしまう点だ。
特定の条件下で
それは何故か?偶然を必然に変えなければいけないからだ。
たまたま起きたことを再度引き寄せるというのは、言い換えれば偶然を利用できるように変化させるのと等しい。
「……?……あっ」
「その様子だと気付いたみたいだけど……船が真っ二つになる必要があると認められた場合、それは同時に
……うむ、船が真っ二つも問題だが、ここでの一番の問題はそれによって異世界転移できてしまった場合、その一連の流れが
つまり、結果として『偶然じゃなくなる』わけで。……うん、前回の再現を目指すのは宜しくないというか?
まぁ、もしかしたら前回ループは今回のそれとは地続き扱いではなく、世界的には方法が確立した判定にはなってない……なんてことになる可能性もなくはないのだけれど、正直か細い可能性過ぎて考慮に値しないような気もしないでもない。
そんなわけで、移動手段を船に変更する、というのは微妙におすすめされない判断だと言うことになってしまうのでしたとさ。
……こう考えると、偶然って難しいなぁ。