うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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君が居た夏は遠く、遠く

 そのあとも、なんとかして偶然転移できないか?……みたいなことをみんなで話し合ったものの、『意識して行動してる時点で偶然ではないのでは?』という至極もっともな話に帰結してしまい、完全に手詰まりに陥っていた。

 

 ……うん、やはり『偶然』というのが大問題だ。

 これを律儀に守ろうとすると、極端な話()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になってしまう。

 真面目にどうしようもねー、と頭を抱えたくなるというか。

 

 

「……となると、やはりここで私達ができることは一つしか有りませんわね」

「と、言うと?」

 

 

 そうして皆が頭を抱える中、声をあげる者が一人。

 それはみんなの頼れるAUTOさんだったわけなのだが……彼女は小さくため息を吐きながら、ただ一つの対策を提案してくる。

 

 

「一度転移のことは忘れて、素直に無人島キャンプに勤しみましょう」

「えーっ!?」

 

 

 その提案に、CHEATちゃんがみんなを代表して驚愕の声をあげたのだった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「意識すると偶然ではなくなる、というのであれば、最早一度脳内からそのことについての意識を消し去る他ないと思いませんか?」

「言ってることは間違いじゃないんだけど……」

「その場合、こいつはどうするんだよ?意識から消せるようには思えねぇんだが」

「……みんなからの扱いが凄く失礼。私だってどうしようもない時には諦めるくらいはs()異世界……」

「ほらダメじゃん!」

 

 

 AUTOさんの提案は、至極もっともなモノであった。

 偶然、というのはその言葉通り()()()()起きるもの。……ゆえに、起こそうと行動してる時点で該当しなくなるのだから、一度リセットを掛けなければどうしようもない。

 

 それは確かにそうなのだが、だからといってすぐに気持ちを切り替えられるのか?……と聞かれると、約数名無理そうなのが居るというか……。

 いやまぁ、特に隠す必要もなくTASさんのことなわけだが、ご覧の通り転移したい欲が溢れすぎて暴走一歩手前、というか?

 この状態で一度異世界のことは忘れましょう、などと言われても無理でしょうとしか返せないわけで……。

 

 だが、その話を聞いてもなお、AUTOさんの様子に変化は無かった。……いや寧ろ、不敵な笑みを浮かべてさえいるような……?

 

 

「その辺りについてはお任せくださいまし。すぐにそんなことを考えるような余裕を消し去って差し上げますので

「なになになんなの怖いよぉ!?一体何する気なのこの人ぉ!?」

 

 

 いやAUTOちゃん笑顔怖っ!?

 アレだよ、黒幕がこれから自分が起こす惨劇を思い浮かべて、うっすらとほくそ笑んでいるかのような顔だったよ今!?

 見てみなよ、その笑みを正面から見てしまった人達の反応を!

 

 

「お、AUTOがついに壊れた……もうこの世のおしまい、私達は彼女に管理される……」

「かかか管理!?おはようからおやすみまで全部徹底的に管理!?」

「お、おしまいですぅ!!もう私達に自由はないんですぅ!!」

(……この方々、AUTO様をなんだと思ってらっしゃるのでしょう?)

 

 

 TAS・CHEAT・ダミ子の三人(さんばか)は身を寄せあい、この世の終わりの前触れとばかりに戦きあっている。

 ……横でそれを見つめるDMさんの視線が少しばかり冷たいが、しかしてそれは彼女がAUTOさんに余り怒られないタイプの人物だからこそ。

 いやまぁ、彼女も怒られる時は烈火の如く怒られてるんだけどね。

 でも彼女の場合はあからさまに『DMさんが悪い』ってパターンがほとんどだから、相手の怖さより自身に向けた反省の方が記憶に残りやすいというか。

 

 でもそこの三人は違う。

 例え自分が悪かろうが、怒ってきた相手には反射的に反発してしまう。

 そしてそれが火に油を注ぎ、更なるAUTOさんの怒りを呼ぶのだが……彼女達は自分が悪いことをしたなどと反省することはほぼなく、ゆえにそれは『怒るAUTOが悪い』くらいにしか認識されていない。

 

 まさに悪循環、まさに悪童感。

 説教が右耳から左耳に抜けているとしか思えない彼女達は、正しく『三バカ』としか言いようがないのであった。……少なくともこのタイミングでは。

 

 されどAUTOさんは諦めない。

 何故なら彼女は信じている、彼女達がいつか真面目になって、今までの行動を省みて深く反省することを。

 

 言われるうちが花、という言葉がある。

 好きの反対は嫌いではなく無関心であり、相手からのコミュニケーションが絶えてしまったのならば。

 そこから再度、相手とコミュニケーションを取れるまでに持っていこうとした場合、掛かる労力は最初の比ではない。

 なにせ既に見捨てられている。一度見捨てられたモノが、再度価値あるものにのしあがるのはとても難しい。

 

 そういう意味で、相手の行動に失望せず・いつか必ずこれまでの言葉には意味があったのだと理解してくれる、と信じ続けるAUTOさんは、まるで聖女のような存在だと言えるだろう。

 まぁ、言われてる方からすれば悪魔以外の何者でもないのだが。

 

 ……そういうわけで、AUTOさん対三バカの戦闘が勃発したわけなのだが。

 うん、こうやって動き回ってるうちに異世界云々のことを忘れるだろう、ってことも計算に入れた状態で動き回ってるんだろうなー、AUTOさん凄いなーと思考を放棄する俺なのでありましたとさ。

 

 え?無人島内の木々やらなにやらが吹っ飛ばされてる?

 俺に彼女達を止めるパワーはないので静観する以外ないですね、マジで。

 

 

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