うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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いつからここが普通だと勘違いしていた?

「なにも殴ることないじゃないか……」

「何時までも笑い転げてるからだろうが」

「ちぇー」

 

 

 はてさて、頭部に大きなたんこぶを作った二人と一緒に、改めて枯れ木探しである。

 先ほどまでの揺れやら音やらはすっかり収まり、周囲に響くのは野生の鳥や虫達の声ばかり。

 ……食材を現地調達する必要性はない為、これらの音はほぼ騒音みたいなモノということになるわけだが……いやセミうるせぇな?

 

 鳥の方は、山とか田舎とかに行くとよく聞こえるタイプのモノだったが……セミの方はとにかくうるさい。

 ミンミンだのカナカナだのシャワシャワだの、バリエーション豊かな声がところ狭しと響くものだからマジでうるせぇ。……ん?

 

 

「どうかしたかい?」

「……いや、なんでもない」

「?」

 

 

 なにかこう、一瞬違和感のようなモノを察知したような気もしたが……うん、多分気のせいだろう。

 というか、俺だけ気付いて他の面々が気付かない違和感、なんてのも変な話だし。ほら、同行してる面々がどう考えても俺よりそういう技能高い面子だし?

 そういうわけなので、相手から『どうした』なんて言葉が飛んできた以上、これは単なる気のせいなのである、と決まったのであった。

 

 それはともかく、ここの木々はどれもこれも生き生きしているせいか、燃えやすそうな枯れ木が見つからない。

 いっそ適当に折って、CHEATちゃんに乾燥させて貰おうか……などと考えていたところ。

 

 

「……ん?なんだこりゃ?」

「どうしました?」

「いやほら、これ」

「これは……」

 

 

 何かに気付いたのか、草むらを掻き分け進み始めるROUTEさん。

 ……無造作にそういうところに入っていくのはいわゆる『危険が危ない』案件なので、できれば自重して欲しいところだが……よくよく考えたら選択肢見える人にそういう心配は無用だったな、と考え直す俺である。

 いやまぁ、俺はちゃんと肌が草木に触れないように袖とか伸ばして行くけどね?ダニもかぶれも怖いです(真顔)

 

 そうして完全防備で進んだ先。

 ROUTEさんが指差すのは、雷でも落ちたのか煙の燻っている一本の枯れ木……枯れ木?の姿。

 いやまぁ、仮に枯れ木なら普通に燃え尽きるだろうから、正確には単に雷が落ちて無惨な姿になった、というだけなのだろうが……なんというかこう、あまりに都合が良すぎるというか。

 

 

「都合がいい?」

「いや、これ以上長時間薪になりそうな枝を探して回るのは勘弁、って思ってたところに出てきたので……」

「なるほど、こちらの願望に合わせて突然現れたように思えた、ということだね」

 

 

 君は心配性だなぁ、と笑うMODさんにつられたように笑う俺達。

 ……笑ってはいるものの、皆目は笑ってない。

 いやだって、どう考えてもさっきまでとは空気感が違うからね、周囲の。

 

 なんと言えばいいのか……突然切り替わった、みたいな?

 セミの声がちょっと高くなったような気がするとか、日の傾きが想定される速度よりほんのり進んでいるとか、そういう細かな差異がそこらに見える……みたいな感じ?

 まぁ、なんとなくそんな気がするなー、というかなり弱い違和感であり、遠くから変わらず追っかけ回されているTASさん達の声が聞こえることも合わせて、単に過敏になってるだけじゃないかなーという気もするのだが。

 

 ほら、このメンバーの中ではそういう変化に一番敏感そうなMODさんが微妙な顔をしている辺り、あんまり冗談だとも思えないというか。

 

 

「ん?そこで私を基準にするのかい?言っちゃあ悪いけど、私よりROUTE君の方がそういうのに敏感そうな気がするけど」

「常時選択肢が出ているわけではない、って言ってたからねぇ。……それなら、自他問わず『見た目』に一家言あるMODさんの方が、周囲の変化への察知力は信用できるというか」

「む」

「……なにイチャイチャしてんのお前ら」

「いやいや、イチャイチャはしてないよイチャイチャは」

(その割には照れてるじゃねぇか)

 

 

 なんで私が基準なのか?……みたいな疑問が飛んできたので、MODさんそういう変化に目敏いでしょ?……と返したら、微妙に照れられてしまった。

 ……まぁうん、冷静に考えたら普通に褒めてるなこれ。

 どうしよう、未成年を誑かす大人として捕まったりするのかな俺(棒)

 

 え?MODさんの本当の年齢はよく分からないはずだろうって?

 そんなこと本人の前で口が裂けても言うんじゃないぞ、真面目に死ぬから(一敗)

 

 冗談?はともかく。

 MODさんが微妙な顔をしている以上、何かが起こっているのはほぼ確定。

 となれば次の問題は、現在俺達の身に何が起こっているのか、という話になるわけだが……。

 

 

「ひゃっほうお兄さん、待望の合宿の時間だー」<ドゴーン

「腰が!?」

 

 

 突然の衝撃、突然吹き飛ぶ俺、驚く他の面々。

 さっきまで追っかけ回されていたはずのTASさんが俺に飛んできた為、それを受け止めた勢いのまま吹っ飛ばされたわけだが……懐の彼女の言葉に、さっきの作戦がなんか上手く行ってたことを悟る俺なのであった。

 

 ……いや、転移すんの今かいっ。

 

 

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