「こ、ここがあの子のハウスね……」
「お兄さん、幾らなんでもボロボロになりすぎ。それから、ここはハウスじゃなくて別荘、みたいなものだと思う」
「そういう細かいことは置いといて、とりあえず休ませてつかーさい……」
「……お兄さん、幾らなんでも」
「ここぞとばかりにループしようとするの止めようね!?」
「ちぇー。折角のコマンド入力チャンスだったのに」
「油断も隙もあったもんじゃねぇ!?」
そうして、地獄の珍道中を抜けた俺達はというと、ようやく一つ目の目的地であるCHEATちゃんの仕事場へ、到着することに成功していたのだった。
遠目から彼女が中に入っていくのも確認したし、更にここから着替えて移動する、なんてことでもない限りここが目的地ということで間違いあるまい。
……まぁ、ここに至るまでのあれこれで、俺はもうリタイア寸前なんですけどね!
というか、真面目に今までのあの動きって必要だったんですかね……?
「単に付いていくってだけなら、必要ない」
「おい」
「話は最後まで聞く。……あの動きをしていなかったら、次の分岐で詰む」
「次の分岐?……ってああ、そこまでに乱数を回す箇所がない、みたいな?」
「そう。調整の余地がないから、ここまでに合わせておかないと酷いことになる」
「……参考までに、調整しなかったらどんなことになるので……?」
「お兄さんが……これ以上は私の口からは言えない」
「TASさんが言い淀むとか、恐ろしすぎるんですけどぉー!!?」
……なお、ご覧の通り理由についてはこんな感じだったので、文句は言うだけ無駄だったということをここに記しておきます(一敗)
「お邪魔するわよー」
「邪魔するんなら帰っ……なんで居んの!?」
「わぁ声おっきい。いつもそのくらいで喋ってくれればいいのにね♡」
「音量弄る?」
「君にやらすと余計なとこまで弄りそうだからダメ」
『えっ なになに誰?』
『家凸キター!』
『まさかのカチコミ』
『住所割れとるやんけぇ!個人情報保護早くしてホラホラ』
カチコミの時間じゃあ!
な!?
……みたいな感じで、家の中にあった録音スタジオっぽいところに突入した俺達。
扉に背を向けて、パソコンの画面と向かい合っていたCHEATちゃんはというと、こちらの台詞に思わずとばかりに反応しようとし……その途中で何故か俺達がいるということに気が付き、とても大きな声で驚愕していたのだった。
その音量を、地味モードにもわけてあげてください(耳から血を流しながら)
冗談はともかく。
彼女の背後に見えるパソコンは、こちらの予想通り配信画面になっており、そこを流れるコメント達は、突然の闖入者に騒然となっている。
──まぁ俺達にはなんにも関係ないので、やるべきことやるだけなんだよね!
「りべんじはまかせろーばりばりー」
「わぁちょっと!?勝手に準備す……なにこれ!?」
「○ーチャルボーイ。Vだから合わせてみた」
「上手いこと言ったつもりか!?そもそも私Vじゃねーから、大して上手くもねーし!……いやちょっと待って、なんで二台あんの?!」
「実は通信対戦できる。有志の作った非公式ソフトとケーブルがいるけど」
「こんなところで、ちょっとしたニュースになりそうな対戦させようとするのやめなさいよ!?」
そういうわけで、スタッフと化した俺が搬入するのは、知る人ぞ知る赤いゴーグルの憎いやつ、である。
……任○堂さんって3D好きだよね。結局これのあとも都合二回くらいやってるし。
そもそもこれの現品とかどっから持ってきたんだろうかとか、通信対戦対応ソフトは公式には存在しないのにとか、真っ赤な画面って目に悪そうだけどこやつ自体はわりと目に良いらしいとか、色々ツッコミはあるが……全部投げる!
さぁ、画面の向こうの視聴者達をポカン、とさせてやろうではないか!
そんな思いを込めながら、俺は機械のスイッチを入れるのであった。
「……それで、意外とバズったと」
「今の子には見たことのない謎のゲーム機だし、『画面真っ赤とかwww』みたいな感じでウケたし。……最終的にTASさんが勝ったけど、なんか勝負に勝って試合に負けた感があるというか……」
「大丈夫。ゲーム中に密かに契約書を書かせたから、収益の三割くらいはお兄さんのもの」
「いやなんで俺の懐に入るようになってるの???」
「ふざけるなー!やめろー!!おうぼうだー!!!」
「そもそもの話、我が家で暴れないで頂きたいのですが?」
場所はCHEATちゃんの別荘から変わって、AUTOさんの家。
あれこれやった結果、最終的な視聴者数は対戦開始前から大きく膨れ上がり、スパチャも結構飛んだのであった。
……なんで俺達、邪魔しに入ったはずの動画を盛り上げちゃってるんでしょうね???
まぁ、なんでか知らんけど()いつの間にか俺の口座にCHEATちゃんの収益の三割が振り込まれるようになっていたりもしたのだが。
お陰さまで、現在俺は彼女からぽかぽか殴られる羽目になっていたりする。……いやほんとになんで???
理由をTASさんに尋ねても、はぐらかされるばかり。マジ意味不明。
なお、こんな感じで三人纏めて転がり込んで来たため、AUTOさんは大層呆れたような視線を向けてきたのだった。