「……きて、お兄さん起きて」
「……んん……交代の時間かな……?」
「ううん、TASのお時間」
「なんて?」
なんか今変なこと言われなかった?
……などと思いながら重い目蓋を開けば、そこには鼻先が触れ合いそうな位置でこちらを覗き込むTASさんの姿が。いや近いな?
傍らでこちらを覗くTASさんを横に退かしながら立ち上がれば、そこは昨日と変わらず森の中。
……んん?なんか違和感があるような?
とはいえそれがなんなのかは、ちょっと思い付かないのだが。
そんな風に寝ぼけている俺に構わず、傍らのTASさんはこちらの腕を引っ張ってくる。
なにやら主張したいことがあるようだが……?
「お兄さんに悲報と朗報。どっちから聞きたい?」
「いきなり嫌な二択。お兄さん最後に嫌な思いするの嫌だから悲報からどうぞ」
「なるほど、では悲報から。私達は迷子になりました」
「わー、いきなり絶望的な話~()」
彼女に連れられながら聞き返せば、彼女が真っ先に提示したのは俺達の置かれた状況について。
……どうやら今の俺達、一体何処にいるのか判別不明なのだとか。
周囲はそれなりに明るいものの、見渡す限りが森・森・森。
何処を見ても木々以外のものが視界に入ることはなく、こんなところで放置されたらそりゃ迷って当たり前、という気分になってきたというか。
じゃあ、この絶望的な状況下で、悲報にならず朗報になることとは一体なんなのだろう?
そう思いながら彼女に続きを促すと……。
「朗報の方?それは勿論、これからの旅に同行してくれる連れ合いを獲得した」
「お、なるほど?つまりこの森を抜けるために協力してくれる人、ってことか。……で、その人は何処に?」
返ってきたのは、俺達以外に連れ合いが居るという話。
恐らくは地元の人、ということになるのだろうが……それならば、この森を抜けることもそう難しくはないかもしれない。
そう思いながら、その連れ合いとやらの姿を探して周囲を見渡す俺である。……ただ、付近に人の気配は見当たらないような……?
「あの、TASさん?その連れ合いとやらはどちらに……」
「今は近くの川に水を飲みに行ってる。そろそろ戻ってくると思……噂をすれば」
「うん?」
首を傾げる俺に対し、TASさんが発した答えは『当人は今ここに居ない』というもの。
どうやらこの付近に川が流れており、その水を飲みに行っているようだ。
……それなら俺達もそっちに向かった方がいいような気がしたのだが、TASさんの言うところによれば相手はもうこちらに戻って来ているとのこと。
うーむ、俺の意識がはっきりしたタイミングが宜しくなかった、ということになるのだろうか?
そうして唸る俺だったが、突然の揺れにすぐさま思考を打ち切ることとなった。
──そう、揺れ。
あからさまに地面が揺れたことに、すわ地震かと身構える俺。
よく見れば周囲の木々も揺れており、そこに集まっていた小鳥達が空へと飛び……飛び?
……
それも正確には単に消えたわけではなく、影の中に吸い込まれるようにして消えたような。
いや、吸い込まれたというのは比喩であり、正確には
──いや、そうではない。
迂遠な物言いをしても意味はあるまい。ここでは見たままを、正確に──そして簡潔に述べるべきだ。
ならばこう言い代えよう。──小鳥達は、
変わらず揺れる周囲と、それに合わせて響いてくる重い接地音。
ずしんずしん、というそれは周囲の揺れと連動しており、事ここに至ってはそれが同一の場所から響いているものである、という事実をこちらに訴え掛けてくる。
──そう、それは
そしてその生物は、明確にこちらへと歩を進めており……。
すぅ、と俺達の頭上に影が指す。
天頂に輝く太陽を、俺達より大きな生き物が隠したことを知らせるそれは、俺に視線を上に向ける、という当たり前の行動を躊躇わせ。
「紹介するね、お兄さん」
そんな俺の動揺など知らぬとばかりに、傍らのTASさんは上を見ながら声をあげる。
その言葉は、至極当たり前の色を持って、俺に困惑と恐怖を叩き付けてくるのであった。
「彼はティラノサウルスのティラ君。
「オレサマオマエマルカジリ」
「嘘付けーっ!!!?」
俺の叫びは、周囲に大きく木霊したのであった──。
「うーんうーん……ティラ君、俺は食べても美味しくない……」
「……こいつは何を魘されてるんだ?」
「さぁ?でも起こすのは可哀想だから、このまま寝かせてあげるのが吉」
「本当にそうか……?」
なお、俺が以前の転移を夢で見ながら魘されている時、TASさんは新たな仲間を