うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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一夏の冒険なら生き物は必須

「えー、俺が焚き火番をすっぽかしたのは、明確に俺が悪いので謝ります、すいませんでした」

「お兄さんよく謝れました。偉い偉い」

「俺は子供かなんかか?」

 

 

 はてさて、呑気に眠りこけていたのは明確に俺のミス。

 故にその事を謝ることには微塵の疑問もない。ないのだが……。

 すぃ、と視線を横に座っているTASさんに移す俺。……現在は朝食の時間であり、昨日の残りのシチューとパンを温めて食べている人がほとんどである。

 

 いやまぁ、一部の朝に弱い面々──CHEATちゃんとかは微妙な感じだが。

 正確には、CHEATちゃんは寝惚け眼でパンに噛り付いているし、AUTOさんは食欲が無いのか顔を手で覆い、俯いて何やら呟いている。

 ……え?AUTOさんの様子はおかしくないかって?そりゃねぇ……。

 

 再度、視線を横のTASさんに移す。

 彼女は朝が苦手、ということも無いため普通に朝食に手を付けているが……その膝の上。

 彼女の食べているパンを()()()()()()()()()()()()、奇妙な生き物こそが問題であった。

 ……うん、ぶっちゃけるとあからさまに幼体の恐竜が、彼女の膝の上に陣取ってるっていうね。

 

 

「イヤなんでだよ!!」

「お兄さん煩い、ピー蔵の教育に悪い」<ピー!

「しかもなんだよその名前ぇ!!訴えられる寸前だよその名前ぇ!!!」

 

 

 いやまぁ、見た目は小さなティラノサウルス……みたいな感じなので、例のアレとは全く何の関係もないわけだが。……何の話だ?

 ともあれ、TASさんが恐竜の幼体を抱えている、というのは紛れもない事実。

 どこで見付けてきたのよそれ、さっさと親元に返して来なさい……と言えたのなら楽なのだが、問題なのはこれがTASさんがしたことである、という点。

 

 単にスーパープレイのノリで拾ってきた、とかなら迷わず返してこいと言えるのだが、これがもしスピードランの方なら手放すとややこしいことになりかねない。

 そして、TASさんの方もその辺りのことを突っ込まれることは最初から折り込み済みなのか、こちらからの疑問の籠った眼差しは華麗にスルーされる始末。

 

 ……え?そんな反応してるのならスーパプレイ扱いでごまかしてるだけだろうって?

 そんな単純に判別できるのならCHEATちゃんは要らないんだよなぁ……。

 

 突然の飛び火に「え?なに?なんで私今ディスられたの?」みたいな顔をしているCHEATちゃんだが、何も単に彼女を苛めたくて話題に出したわけではない。

 どういうことかと言えば、その答えはTASさんの動きにあった。

 

 ……そう、彼女は今()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これはつまり、彼女がCHEATちゃんへの警戒を全くしていない、ということである。

 

 

「……いや、いつものことじゃねぇのそれ?」

「え、CHEATちゃんってば自分の事なのにわかってなかったの……?」

「うわぁ、可哀想ですぅ……」

「なにその反応!?」

 

 

 こっちの言葉に間抜けな反応を返してくるCHEATちゃんだが……君ってば、なんというかこうこういう時自己評価が低いの、良くないんじゃないかなぁ……。

 ダミ子さんに同情されるレベルって、わりとアレだぜ?

 

 ……微妙にいじけ出したダミ子さんは後でフォローするとして、前にも触れたが不思議ガールズの中で唯一TASさんを止められる可能性があるのがCHEATちゃんである。

 他の面々は精神的に優位に立つAUTOさん、みたいな例もあるが……それはあくまでも速度に関係のない状況においてのみの話。

 

 裏を返せば、TASさんがスピードランに徹し始めたら誰にも止められない、ということである。

 それこそ、別の方法で同じ舞台に立てるCHEATちゃん以外には。

 

 

「ほへー」

「なにその反応、もっとしっかりしようぜ大将」

「大将?!私が!?マジで!?やった!!」

「……調子に乗らせ過ぎるといいことないよ?」

「おおっとそうだった。小将くらいにしておこう。……あ、中国語的な意味じゃなくて単に大に対しての小、って意味ね」

「なんかすっごい遠回しにバカにされてないこれ!?」

 

 

 いやいや、褒めてるのは褒めてるよ。中国語的な意味になると褒めすぎになるなぁってだけで。

 

 ……まぁともかく、CHEATちゃんが意外とポジション的に重要、ということを念頭に置いた上で、さっきのTASさんの動きを思い出してみよう。

 そう、唯一自分を止められる可能性を持つ相手が動くかも、という状況でも彼女は微動だにせずピー蔵を可愛がっていた。

 それがどういうことになるのか。……彼女は止められても構わないと思っているか、はたまた()()()()()()()()()()と思っている、ということになるのである。

 

 

「前者もあれだけど、どっちかと言うと後者のパターンが厄介だ。これはCHEATちゃんを舐めてるのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っていることになるからね」

「あーなるほど、これはスピードランのための急がば回れです、だと遠回しに主張してることになるんだね?」

「そういうことですねー」

 

 

 言い換えれば、止めてはいけない状況である、ということになるか。

 ……どっちが正解なのかはわからないが、少なくとも妨害が飛んでこない辺り後者のパターンの可能性が高いように思える。 

 だがあくまでも高いだけであり、それが確実とまでは言えない感じでもある……と。

 

 そういうわけで、そこまでの状況全てを引っくるめて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という話になるのであった。

 

 なお、その結論を告げた後、またCHEATちゃんが天狗になったためTASさんの精神分析(こぶし)が飛ぶことになったのは言うまでもない。

 ……謙虚さはちゃんと持っておこうね!配信で炎上しないためにも!

 

 

「うるせー!!余計なお世話だー!!」

「そもそも最近配信してるとこ見なくない?」

「…………」

(図星、みたいな顔をしていらっしゃいますわね……)

 

 

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