うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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作戦会議は踊るよどこまでも

「じゃあ、どうするのさ?」

「囮役に用意するのは、あくまで急加速と急停止ができる速度維持装置になる……ってことかな。TAS君のやり方を踏襲するなら、ということになるけど」

 

 

 想定される状況に、思わず顔面蒼白となるCHEAT君だったが……すぐさま気を取り直し、こちらへと問い掛けてくる。

 それに対して私は、敢えて含みのある言葉を投げ返していた。

 無論、CHEAT君は馬鹿ではないのでその含みに気が付き……、

 

 

「……別のやり方があるってこと?」

「さてね。その辺りを探るためにも、ちょっと見に行ってみないかい?私達の敵とやらを」

 

 

 その察しの良さに笑みを溢した私は、みんなに一つの提案を投げ掛けるのだった。

 

 

 

・∀・

 

 

 

「……災害か何かですかぁ?」

「いやはや、想定以上だねぇ。参った参った、あっはっはっ」

「いや笑ってる場合?!アレと戦うの私達!?」

 

 

 はてさて、MODさんの誘いに乗って私達が向かったのは、予めTASさんから聞いておいた敵──ティラノサウルスの居住地域。

 広範な縄張りを持つため、その外側から様子を窺うことになったのですが……その迫力の恐ろしいこと恐ろしいこと。

 

 いえ、予め聞いていた通りではあったのですが……体高七メートルにも達する巨体が、まるで自動車の如き速度で獲物に迫り、その五体をバラバラにするのを見れば、正直『これはムリゲーというやつなのでは?』と疑ってしまうのも無理なきこと、と申しましょうか?

 正直、あの速度を咄嗟に避けろと言われても無理、としか言いようがない気がするのですが。

 

 

「いやー、AUTO君が無理だと私達全滅ってことになるから、できればそこは『やれる』と言って欲しいところだけどね?」

「む。……いえまぁ、予めあの速度であると知れたことで、ある程度対応はできると思いますけれど……その場合私以外の皆さんも一切のミスが許されない、ということになると思いますが?」

「うーん、防御に関してはダミ子君を上手く活用すればなんとかなる気もするけど……攻撃役が難しいねぇ」<エッアノチョットォ,アレニタエロトカムチャクチャオッシャッテマスヨォ!?

「ふむ……」

 

 

 そんなことを呟けば、返ってくるのはMODさんの言葉。

 ……生憎、私の掴める範囲にある参考になりそうな動きは、大型生物との対峙方法くらいのもの。

 人間とティラノサウルスの生存タイミングが重なることがほぼ無い以上、もっとも役に立つはずの『ティラノサウルスとの戦闘経験』は掴めないモノであるため、そこまで期待されても困るところがあるのは否めないでしょう。

 

 一応、一つだけ手段がないことも無いのですが……裏技と言うか、いわゆる禁じ手に相当するものに当たると思われますので、手を伸ばしたくないのが実情、となるのでしょうか?

 まぁ、そこに関しては今回触れるつもりはありませんので、こうして黙っているのですけれど。

 

 ともあれ、現状のままだとどうにもならない、というのは確かな話。

 個人的に言わせて貰いますと、あの突撃をダミ子さんを使ってどう止めるのか?……という部分が非常に気になるところですが、それを踏まえてもなお攻撃役への負担が尋常ではないと言いましょうか?

 ……と、暫定攻撃役であるROUTEさんに視線を向ける私、だったのですが。

 

 

「………………」<チーン

「ROUTEさんっ!?」

「不味い!急性ティラノショックだ!?一時撤退、一時撤退~!!」

「急性ティラノショックっ!?」

 

 

 振り返り見た彼女は真っ白に燃え尽きており、私達は慌てて彼女を抱え、その場から退避することになったのでした。

 

 

 

;・A・

 

 

 

「地獄を見た、無惨に散り行く 命の終わりを見た……」<チーン

「お、おう……」<ピィー?

 

 

 俺達がピー蔵(&俺)の鍛練を一時中断して戻ってきた時、そこで目にしたのは真っ白に燃え尽きたROUTEさんと、その周囲であれこれと動き回る他の面々の姿なのであった。

 ……ええと、これは一体どういうことなのでして……?

 

 

「なるほど、それは無謀」

「おっと、TASさんにはわかった感じ?」

「なんとなく。多分ROUTEはTASろうとした」

「…………ええと、TASさんを真似しようとした、と?」

「そういうこと」

 

 

 そうして首を捻る俺に答えてくれたのは、俺と一緒にこの場に戻ってきたTASさん。

 ……なんで彼女が答えるのか、というのは置いとくとして、その口から放たれた答えは確かに無謀としか言いようのない話であった。

 いや、確かに彼女はその能力的にTASさんに近い、とは言ったけど……流石に彼女みたいなことをしようとするのは無謀としか……。

 

 だがどうやら、その無理をする必要性を感じてしまった、というのが一番の問題らしい。

 

 

「あのティラノを打倒し、かつこちらへの被害を抑えるのであれば、最低限動きくらいはTASさんの模倣ができないと……と感じたとかなんとか……」

「そういう趣旨のことをぶつぶつ呟いてるねぇ」

「あー……」

 

 

 なるほど、任されたポジションと彼女の能力が噛み合った結果、と。

 ……確かに、生半可な攻撃は普通に跳ね返してくるほどに硬い皮膚である、あれを突破するのなら同じ箇所に間髪いれず攻撃を叩き込み続ける、くらいは必要だろう。

 それだけしても、人間でいうなら表面の鎧を剥いだ程度。

 そこからぶちギレモードのティラノの猛攻を躱しつつ、更なる決定打を叩き込むとなれば……まぁ、脳がパンクするのも仕方ないというか?

 その一撃で済めばいいけど、多分間違いなく一撃じゃあ終わらないだろうからなー。

 

 ……そこまで理解したからか、周囲のみんなはROUTEさんを気遣いはしても、責めたり情けないと詰ったりはしていないのであった。

 うむうむ、無意味な諍いは避けるべきだよね。

 

 

「しかしそうなると……やはりTAS君のやり方を踏襲するのは無理、ということになるだろうね」

「じゃあどうするのさ?」

「勿論、私達にしかできないことをやる……というだけの話だよ、ねぇ?」

「はいぃ?」

 

 

 だがしかし、ROUTEさんがこの様子では、クリアできるものもクリアできまい。

 そうしてほんのり(自分を棚上げして)心配した俺は、次にMODさんが見せた笑みに、その必要はないことを悟るのであった。

 

 

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