うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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平和なんて大抵薄氷のもの

 はてさて、時間はあっという間に経過して三日目の朝である。

 今回は寝坊せずに焚き火の見張り番を交代できた俺は、みんなが起きてくる前に朝食の準備を行っていた。

 

 二日目は前日の夕食であるシチューとパンが主な朝食であったが、今回の場合同じ手は使えない。

 何故なら、昨日の夕食は焼き肉であり、流石に朝から食べるには重すぎるからだ。

 

 じゃあ代わりに何を用意するのかというと……。

 

 

「オーソドックスにおにぎりです」

「おにぎり?うっ、頭が……!」

「TASさんはいきなり頭を抱えてどうしたんですの……?」<モグモグ

「多分、とあるゲームでおにぎり食べると強制死亡フラグが立つ……ってバグがあったから、その時のことを思い出して呻いてる」

「ええ……?なんですのその個性的なバグ……?」

 

 

 ほかほかの白米、それに中身の具と海苔を合わせたおにぎり!

 日本人と言えばこれでしょ、という定番のラインナップである。麦茶も付ければ暑い夏もなんのその、だ。

 まぁ、炎天下の中に置いとくとあっという間に痛むので、塩分補給におにぎりを使うのなら細心の注意を払う必要があるわけだけど。

 ……え?TASさんがそういうのとは別の理由で呻いてる?トラウマが蘇ってるだけだからスルーしてもろて。

 

 ともあれ、起きてきた面々におにぎりとお茶(と、希望者には味噌汁)を渡しながら、俺は登りくる朝日を眺めていたのであったとさ。

 

 

 

・A・

 

 

 

「さて、前日の続きやっていくどー」

「おー」

 

 

 さっくり朝食を終え、改めて前日の続きである。

 TASさん的には今日中に終わらせたい・それもできれば夕方になるまでに……とのことであったが、個人的には微妙・もしくはギリギリなんじゃないかなー、と思っていたり。

 その理由はピー蔵の様子にあった。……俺には問題はないのであしからず。寧ろ俺の訓練はついで以外の何物でもないので、重要度は高くないのだし。

 背後でTASさんが「関係あるよ、重要だよ」みたいな顔をしているとCHEATちゃんが告げてくるけど無視だ無視。

 

 ……ともかく、問題が大きいのはピー蔵の方である。

 彼はまぁ、なんというか完全に行き詰まっていた。そう、強化の方向とか進化の先とか、諸々の面で。

 

 何せ、彼はまだ子供。

 ……具体的に何時生まれたのかは不明だが、とりあえず一月経過していないことだけは確かだろう。

 ということはだ、人間換算すると精々中学生くらいが関の山で、ともすれば小学生・幼稚園児なんてパターンもありうるわけだ。

 そんな相手に『強くなれ』と告げたところで、早々強くなれるモノだろうか?……え?ホビーアニメとかゲームのキャラとかだったら普通?現実の話して貰っていいかな?

 

 

「貴方様、そのツッコミは私達にも跳ね返ってきますわ……」

「おおっと」

 

 

 ……そうだった、CHEATちゃんとか普通に中学生だった。

 なお、俺やDMさんを除くと最高齢になるROUTEさんは、関係ないなとばかりにそっぽを向いていたりする。

 まぁそうは言っても、この人も多分行ってて二十歳くらいだとは思うのだが。

 

 閑話休題(はなしをもどして)

 確かにCHEATちゃんを筆頭に、中学生でも戦うことを決意する人はいるだろう。

 だがしかし、それは彼女達が特別なだけであって、普通の中学生が鉄火場に連れてこられても、基本的に何もできずに立ち尽くすのが関の山……え?ピー蔵はそもそも人間じゃないだろうって?そりゃごもっとも。

 

 とはいえ、出会ってすぐの人間と仲良くなれるくらいに気性が穏やかなピー蔵が、やれ『戦え』と言われてすぐに戦えるかと言われればノーだろう。

 そういう意味で、やはりこの話は長くなるのが目に見えているのであった。

 

 

「なるほど、つまりお兄さんは『戦うことを自ずから望まざるを得ない』状況を作るべき、と考えているんだね」

「今すっごい曲解したね君?」

 

 

 ……うん、もうちょっと長い目で見てあげるべきでは、という親切心というか憐憫というか、ともかくそんな感じの意味合いで発した言葉のはずだったのだが、TASさんには別の意味で聞こえてしまったらしい。

 その結果、俺の親切心は相手をいたぶる嗜虐心みたいなものにねじ曲げられてしまったのであった。……いや、真面目に物語の途中でヤられる中ボスみたいな主張になってないそれ?

 

 

「……!流石はお兄さん。自分の修行の成果を見せる機会と、ピー蔵の成長機会を一度に揃えようとするとは中々やる」

「しまったやぶ蛇だった!?」

 

 

 ……今日の俺は口が滑りまくる日のようだ。

 うっかりツッコミを入れてしまった結果、TASさんはさらに俺の発言を曲解。

 結果、何故か俺とピー蔵のドリームマッチが急遽開催決定してしまったのであった。

 

 いや、前にも言ったけど例えピー蔵が子供だとは言え、それでも相手は恐竜なのだから一般人が対決なんかしたら普通に死ぬからね?

 

 ……という俺の抗議の言葉は、TASさんの「お兄さんが一般人?寝言は寝て言ったら?」の言葉に叩き落とされてしまうのであった。

 いや、俺は本当に一般人だからね?君らと一緒に……一般人は死ぬようなダメージを受けた次の瞬間に全快したりしない?あ、はい……。

 

 

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