「しかし、二人の話を聞くに……私も頑張ればやれるんじゃないかな、不可視光線回避」
「ほう、どうやって?」
「それは勿論、私自身が光に変化することにより……」
「どこぞの光の戦士ですか貴方」
というか、真面目にそれでどうにかなるんで?光に変身するとか。
確かに、MODさんの変身能力は中々に多彩である。
見た目の変更というシンプルなそれは、シンプルであるがゆえに応用力はとても高い。
……高い代わりに、確かスペック部分には基本何にも寄与しないはずのモノだった気がするんだが?
以前に彼女の技能を応用した時も、見た目はともかくスペックの方には他の面々の協力が欠かせなかった気がするというか……。
そんなことを述べたところ、彼女から返ってきたのは次のような言葉であった。
「当たり判定はその時の姿に準拠するよ」
「意外と重要な話だった!?」
なんでも、体が大きくなれば大きくなっただけ体積・面積共に増えるし、反対に小さくなればその分減るのだそうで。
その流れで、仮に生き物以外のモノに変身した場合は、その変身した物体の法則に従うようになるのだとか。
……まぁ、無機物への変身はその物体の性質やその姿で動くかどうかによって、かなり難易度が変わるらしいが。
具体的には、岩に化けて全く動かないとかなら楽だが、そこからゴーレムっぽく動こうとすると苦しくなる……みたいな?
「適用MODが変わるからだろうね。単にオブジェクトに偽装するならまだしも、そこから違和感なく動こうとすると別のボディが必要になる……みたいな?」
「ああ……木に変身した結果、ホバー移動というかスライド移動というか、そんな感じの明らかに違和感のある動きになることも多いですしね……」
MODに設定されているエフェクトやらが歩行に対応してない……みたいな?
なので、普段ならかくれんぼが異常に上手くなる、くらいの意味合いしかないのが無機物への変身……ということになるのだそうな。
では、それを踏まえた上で光への変身はどうなるのか、というと。
「ほら、魔法少女モノとか変身の最中にピカピカ光るだろう?あれの対象に顔まで含めれば、全身発光体の完成だ」
「なるほど。MODは魔法少女だった?」
「……自分で説明しておいてなんだけど、魔法少女扱いは嫌だなぁ」
そういう歳じゃないというか……と苦笑するMODさんだが……ともかく、光の体になって動き回るということ自体は普通にやれそう、ということで間違いないらしい。
まぁ、今の説明通りだった場合、あくまで演出上光っているだけで肉体が光に変化しているわけではない……ということになり、結局外の有害光線には無力なのでは?……と思わなくもないのだが、そこはあくまでも『説明のために持ち出しただけ』とのことで、実際に光に変身する場合はちゃんと扱いは光のそれ、なのだそうな。
「まぁ、代わりに物理的干渉手段が一つもなくなるから、何処かに移動するのには使えてもそれだけ、なんだけどね」
光が通過できるガラスとかの素材ならそのまま抜けられるけど、壁とか床とかは通り抜けられないし……と肩を竦めながら、MODさんは話を締めくくるのだった。
で、その話を聞いた俺達はというと。
「いやー……MODさんも大概おかしい側だったんだなーって」
「……んん?」
「あ、私は普通ですよぉ、変なところはありません~!」
「存在そのものが不思議の塊な人は黙っててくださーい」
「ぐふぅっ!?」
「……あ、あれ?もしもーし?」
いやー、なんだかんだ言ってもMODさんも不思議ガールズの一員なんだなー、としみじみ頷いていたのだった。
なお、そんな俺達の反応を見たMODさん()。
「いや……なんかこう、求めていた反応と違ったというか……」
「参考までに聞きますけど、どういう反応が返ってくると思ってたので?」
「いやほら……『なんと、MODさんは凄いなー』とか『流石!MODさんがいれば斥候役は完璧だな!』とか……そういう反応が来るものだと……」
「確かに斥候役には便利でしょうけど、そもそもさっき自分で言ってたじゃないですか。無機物変身は制限時間があるって」
「あ」
どうやら、最近微妙に扱いが悪いような気がしていたことから、その辺りの悪い空気を払拭することを期待していた……ということになるらしい。
……いや、正直その辺りはMODさんの気のせいというか、単に初期三人がおかしいだけの話なのだが……ともかく。
確かに、先ほどの彼女の話が本当ならば、斥候として色んな場所を探るのには持ってこい、というのは間違いないだろう。
……ただそれは、安全に隠れられる地帯がそこらに転がっていてこそ。
この世界、大袈裟に言ってしまうと俺達にとっての安全地帯はこのキャンピングカーの中くらいのものであり、それ以外の場所は常に光体化してないとヤバい、くらいの危険度なのである。
TASさんが前回の時ずっと光速移動していたのもそのせいであり、そうでなければ早々にヤバいことになっていただろう。俺が。
「君の方が、かい?」
「ええまぁ。TASさん単体なら最悪発症判定にずっと勝てば問題なしなので……」
「私の前に確率の話を持ってくる方が悪い。ふふん」
TASさんが光速移動を繰り返していたのは、そのほとんどが彼女の背中にすがり付いていた俺へと有害光線を届けさせないため。
……言い換えれば、彼女一人なら普通にサクッとやってサクッと終わっていた、というだけの話。
ついでにいうと、斥候役にしてもTASさんと同じく光線回避をできるようになったAUTOさんに任す方が色々適任であり、そういう意味でもMODさんを優先する必要性は全く感じられないのであった。……って、あ。
「ふふふ……舞い上がっていたのは私ばかり、ということか……」
「お兄さん、言いすぎですよぅ」
「しまった、フォローする前に不貞腐れてしまった」
こっから褒めようと思っていたのだが、思った以上にダメージになってしまったらしい。
一連の話を聞いたMODさんは、座椅子に体育座りをしながらどんよりとした空気を醸し出し始めたのだった。