「……ええとつまり?イベント判定の処理順をミスったから、本来なら一時加入──この場合はうちに遊びに来て、そこから帰るまで──の終了判定が正常に進行せず、彼女のガワだけがここに残ってる……と?」
「お兄さん、こういう時説明するの得意だよね」
「いい加減慣れたからね」
慣れいでか。
こちとら一日中TASさんとわちゃわちゃしとるんやぞ。……いや、学校は???
お兄さんは大人()だから別にいいけど、君は普通に学生なんだからちゃんと学校には行かなきゃダメだぞ?
……というような感じのことを以前言ったところ、「判定はちゃんと置いてる」とかなんとか言われて諦めた俺である。
まぁうん、ちゃんと卒業できそうなら別にいいんじゃないかな……。
ともかく。
彼女から聞いた話を纏めると、ここにいるAUTOさんは本人ではなく、中身のないNPCみたいなもの……であるらしい。
いつぞやかの『バグって顔グラが変になった男性』と似たようなもの、とも言えなくもないか。
どっちにせよ、TASさんの行動で生まれたもの、ということは間違いではないのだし。
「一応、本人になにか迷惑が掛かったりするわけではない。……多分」
「珍しく歯切れが悪いね。なにか問題が?」
「その……ずっと画面内に居るはずだから……」
「まずその画面内とやらの定義から聞きたいんだが???」
なお、本人そのものでないとはいえ、見た目がAUTOさんそのものである、ということは間違いなく。
ゆえに、今の彼女の持つ性質というものが、ちょっとばかり問題になってくるのだとか。
それが、画面内に絶対付いてくる、というもの。……なに言ってるかわからん?大丈夫、俺もわからん。
ええと、彼女の説明によると。
ゲーム──ひいてはプログラムを作る際に気を付けるべきことの一つに、処理の回数をなるべく減らす、というものがある。正確には、『必要のない処理』を、だが。
今回の場合は、
こういう特定の時にしか使わない処理というのは、いわゆる終了処理などから省かれている、ということが多い。
何故ならば、毎回処理しなくても短期間の間に処理が終わってしまうから、だ。
例としてあげるのならば──特定の章の時にのみ味方になるキャラクター、だろうか。
こういうタイプのキャラは、その章の中で加入も離脱も済ましてしまう、というものが多い。
そのため、章の切り替わりの際の
……気付いた人もいるかもしれないが、敢えて言うと。
ゲストキャラが一人きりではない場合、また同行キャラのスロットがそもそもそこまで多くない場合など、一人のための処理ルーチンを設ける、というのは中々難しい話だったりする。
そのため、他のゲストキャラ達の処理を纏めて一つにしている、というのは結構あることなのである。
では改めて、これのなにが問題なのかと言うと。
処理の漏れが起きる可能性がある、ということになる。
「この場合だと、通常なら通過する『ゲストキャラの離脱判定』を飛ばしてしまった、という状態」
先ほどから言っている通り、プログラムを組む時の優先事項は、処理をなるべく減らすこと。
やらなければいけないことが多くなると、どれも手に付かずパニックになる人がいるように、コンピューターも処理が重なってしまうとそのパフォーマンスが極端に下がってしまうことがある。
いわゆる処理落ち、というやつだが……これを極力起こさないようにするには、一度に処理するプログラムを極力少なくする、という行程が必要となる。
なので、一時的にしか加入しないキャラの処理は、個別にプログラムを持つのではなく一本化し、加入・離脱処理も仲間になった章の中で納め、かつ終了時の処理には含めない……といったような作り方をされるわけで。
……普通ならば、話の流れで離脱する時に離脱処理も行っておけば、問題なくプログラムは走ってくれる。そう、
「……なるほど。AUTOさんに出会うのが加入処理だって言うなら、そこをミスったことでフラグが変なことになって離脱判定も正常に行われなかった、ってわけか」
「そう。実際には離脱してるんだけど、そこの処理も変になったから、結果として彼女のガワが『ずっとパーティに加入している』状態になってる」
離脱処理が正常に行われなかったうえ、
大雑把に言ってしまえば、現状はそういうこと。すなわち、これが『
「……よーしわかった。寝直すわ」
「夢じゃないから、現実から目を逸らさないで」
……なお、俺は解説しつつ理解を放棄していたので、とりあえず二度寝しようとしたのだが。
TASさんに必死な形相(※当社比)で止められたため、あえなく諦めることとなるのだった。
……いや、ちょっとお兄さんにはキャパオーバーかなって。