さてどうしよう。
座椅子の上で体育座りをしながら前後に揺れるどんよりMODさんを前に、思わず唸るのを抑えられない俺である。
……いやまぁ、
とはいえ、彼女が自身の方向性を勘違いしていた、というのも間違いではなく。
そこら辺を訂正するためにもさっきの話が必要……というのも間違ってはいないため、そのこと自体を謝罪するつもりはないのだが。
「……方向性を勘違いしている?」
「ええまぁ。……MODさんって自分の職業がスパイだからそこを基準に考えちゃうんでしょうけど、それはあくまでも個人プレーだからこその使い方だってことを理解するべき……というか?」
「ふむ……?」
おっと、こっちの言葉に興味を持って貰えたらしい。
未だに空気感はどんよりしているものの、こっちに視線が向いたのはいいことだろう。
……というわけで、さっきの話の続きとして喋る予定だったことを、そのまま話し始める俺である。
確かに、MODさんの持つ技能は有用である。
……だがしかし、その有用性は状況によって方向性が全く異なるものである、というのも確かな話。
具体的には、彼女一人が敵地に潜入しているのであれば、その能力は擬態技能として活用するべきであり。
反対に、今のような団体で動いている場合、その技能を単に擬態として使うのは勿体ない……みたいな感じか。
「……それって、前回のメスティラノサウルス、みたいなことかい?」
「おっと流石MODさん察しがいい。大型のモノにもMODを被せられるんですから、そっち方面で活かす方がいい……って、MODさん?」
「やーだー!!たまにはちゃんとメインで活躍したいー!!もしくはもっと私に頼って欲しいー!!」
「ええ……(困惑)」
ええと……何これ?
思わず目が点になった俺の目の前で繰り広げられているのは、まるで駄々っ子のように両手を振り回し癇癪を起こすMODさんの姿。
……え?普段の冷静沈着?な姿は一体どこに……?
そうして、そんなMODさんの姿に困惑していた俺に対し、横合いから顔を出したDMさんから告げられたのは、まさか過ぎる言葉なのであった。
「……あー、既に有害光線の影響を受けてしまってますね、くわばらくわばら」
「──は?」
「ええとつまり……今のMODさんはほんのり入り込んでいた有害光線──『ルナ・ニネザ』の影響によりちょっとアレなことになっている……と?」
「正確には、少々精神が退行している……という感じでしょうか。具体的には……妹さんがまだいらっしゃった辺りくらいかと」
「やべぇ、ギャグかと思ったけど地味にお労しい」
月の光が心を狂わせる……みたいな話があるが、それに準じる効果を持つ……というか、この世界においてはその逸話の原理となっているものが『ルナ・ニネザ』なのだそうで。
これを微量ながら浴びてしまったMODさんは、ほんのり残念な状態になってしまっている……というのがDMさんの見立てである。
で、その可視外光線によって変になったMODさんは、現在精神が退行中とのこと。……その内戻るらしいが、それまではこのままということになるらしい。
「いや……ひっでぇなこの世界」
「単純に肉体面に宜しくないモノもあれば、このように精神面にも宜しくないものが蔓延っていますのね……」
「早急にここから離脱したくて仕方ないんだけど……」
真顔で呟くCHEATちゃんに、思わず総員で頷いてしまう事態である。
……っていうか、このキャンピングカーの中は安全だったんじゃないんですか!?
そう叫べば、TASさんからは無慈悲な『肉体的には安全』との言葉が返ってくるのだった。
……ああなるほど、対象外……。
「対象外、と言いますと……」
「放射線みたいなあからさまにヤバいモノにはちゃんと防除を行ってるけど、こっち由来のモノは完全じゃない……特に、精神に作用するようなものは原理からしてわからんから対処のしようがない、みたいな?」
「一応、現在は私がジャミングしてますので多少はマシだと思いますよ?」
「流石DMさん、でかした!」
異世界特有の病気とか、予め対処するのは無理があるよね?……みたいな話というか。
まぁ、今はその辺り得意かつ影響を受け辛いDMさんが、周囲に電波遮断的なことをしているらしく、一応安全地帯としての上書きは終了したみたいだけど。
ただまぁ、今回の異世界攻略にMODさんの力が必要、というのは間違いないため、彼女が復帰するまで何もできないのも確かだったりするのだが。
「そういえば、先ほど何かを仰ろうとしていらっしゃいましたわね……」
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
「そりゃ勿論、俺達で作るのさ……世界最強の機体を、な!」
「……は?」
そんな俺の言葉に、興味津々に問い掛けてくる他の面々。
そこで俺は、この世界で何をするのかを、簡潔に告げるのだった。
──そう、俺達はこの混沌の世界で最強を目指すんだっ!!
……あ、冗談とかじゃないんであしからず。