異世界であるこの場所では、パワードスーツを装備した人間達による戦争が巻き起こっていた。
企業達の暴走により発生したそれは、勃発当初より様々な技術革新が行われ、当初のそれとは様相を異にしている。
具体的には、特殊なエネルギーである『ギルネィゴス』の軍事利用。
不安定なこのエネルギーを安定利用できるようになったことにより、歩兵の携行戦力が飛躍的に上昇。
その上昇幅は既存の兵器群がただの豆鉄砲に成り下がるほどのモノであり、戦争は一瞬にして群れの力から個の力を競うものへと変化していった。
そうした中で、方針の転換に付いていけなかった国は後方支援に回り、代わりに企業が有する傭兵達が戦場を闊歩することとなる。
──個別戦用武装一体型デバイス『ヨツ・ヤーチメ』。
それを纏うモノ達は『ヤチメ』と呼ばれ、この世界の空を舞う戦機として
「──ええい、なんだこのうっせぇのは!おちおち回想もしてられねぇ!!」
空を舞うヤチメの一人、■■はヘッドセットを取り外しながら大声をあげた。
何故ならば、彼女の思考を遮るように、甲高い何かの音が周囲に響いていたからである。
それはあまりに煩く、大きく、それでいて耳障りな音。
耳のいい奴が聞いていたのなら、下手すると気絶でもしそうなその大きな音は、されどそれが大きすぎるがゆえにどこから聞こえているのかがわからない。
これでは、基本有視界による確認及び可聴域の音による攻撃位置の判断などを求められる対ヤチメ戦において、真っ当に動き回ることは不可能に近くなってしまうだろう。
それだけならばまだ、向こうのヤチメが新兵器でも投入して来たのでは?……という考えになりそうなモノだが、この轟音だと向こうもまともに動けないのは目に見えている。
つまり、作戦としても兵器としても無意味すぎて、正直邪魔だとしか言いようがないのであった。
だから彼女は大声で文句を述べているし、この轟音で聞こえていないにしても、その姿を見た味方側のヤチメ達も呆れたような顔を見せつつも、その聞こえない罵倒に同調していたのである。
「ええぃくそっ、真面目にどうなってやがる!どっからだ、このバカみたいな爆音は!!」
「───、───、────」
「あぁ!?なんだ聞こえねぇよ!!ジェスチャーで返しやがれ!!」
飛行高度を調整しながら、音の発生源を探す■■。
されど、視界の範囲に入るものの中に、これだけの音を発しそうなモノは見当たらない。
それが彼女の苛立ちを助長するわけだが──そんな彼女に何かを知らせようとする味方の姿が視界に入り、■■はそちらを向いた。
無論、そいつが何を言っているのかは全くわからない。
わからないので、こちら側から『言いたいことがあるなら身振り手振りで伝えろ』とボディランゲージで返答。
そうして返ってきたのは──、
「───上?」
頭上を指差す、とても簡単なジェスチャー。
それを受けた彼女は、そのまま排ガスなどで汚染され切っているはずの空を見上げ、
「─────は?」
「いやはや、醜態を見せたはずが今度はこんな役割を任されるとは、ねぇ」
「いやいや、そもそもこれってMODさんがいないとできないことですので。まぁあの愚痴が無かったら操縦は他の人に任せてた気はするけど」
「何か言ったかい?」
「いいえ?何も?」
はてさて、この世界において俺達がすべきことは何か。
それはつまり、この闘争に彩られた混沌の世界に覇を唱えること。……もっと具体的に言うと、傭兵達の中で最強になればよい。
そうすれば、この世界にも存在するマスドライバーなどを利用する道も開かれる、というわけである。
……え?マスドライバーなんて使って何をするのかって?
そりゃ勿論、俺達の乗ってるキャンピングカーを限界まで加速して次元の壁を越え云々かんぬん。
……やっぱり加速かよ、という文句は聞かないです、はい。
「速いことはとても良いこと。うんうん」
「TASさんの機嫌がいいうちはこれでいいんだよ、ということですねわかります」
まぁともかく、現状だと埃を被っているだろうマスドライバーの整備とかを考えると、こうして傭兵達がドンパチしているのは非常に宜しくない。
なので、一度俺達がこの世界最強の座に立ち、そこから転移方法を整える……という手順が必要となるわけなのだ。
ではどうやってこの世界の最強の座を掴むのか、ということになるのだけれど。
それには俺達全員の協力が必要不可欠となる。
「外装の仮想展開・及び操縦はMODさん!」
「ああ、大船に乗ったつもりで任せてくれたまえ」
「仮想展開された外装の固着・及び
「なんか最近の私そういう役割ばっかりじゃない?」
「モーションの作成・及び整備班AUTOさん!」
「(操作面に不安の残る)MODさん向けのデフォルトモーションの作成はお任せ、ですわ!」
「データ周り・動力源をDMさん!」
「必然的に私がOS周りを担当することになるんですよね……」
「賑やかしと見せかけて精神系武器の担当ダミ子さん!」
「妖怪変化が役に立つとは思いませんでしたぁ」
「同じく武器、こっちは因果律兵器とかその類いのROUTEさん!」
「なぁ?これこの世界に持ち込んでいい技術か?本当に大丈夫なやつか?」
「そして賑やかし、俺とTASさん!」
「ふれー、ふれー、み・ん・な、いえー」<ピョーン
これらの協力により、現れたるは鋼の巨人!
見よ、その威容は灰色の空を裂き、
「すなわち!傭兵巨神・データイラント!!」<ピシャーン
「絶妙にダサいですぅ」
言うんじゃねぇ、何も思い付かなかったんだよマジで。
そんなわけで、俺達はどっからどう見ても英雄的なロボットにしか見えない機体を駆り、戦場を闊歩し始めたのだった。
※作中の設定部分は全て適当です。