さて、半日の間に歩兵戦力のおよそ半数を壊滅(※死んでません)させた俺達率いる鋼の巨人。
軍隊的にはいわゆる『全滅』というやつだが、そこまですれば流石に向こうも諦めが付いたのか、こちらに攻撃しようという気概のある歩兵の姿はもう見えなくなっていた。
……まぁ、だからといって地上に降りるのはノー、なんだけどね。
一部の人員を除き、地上を飛び交う有害光線への備えが一切ないわけだし。
で、その備えのある一部を地上に投下するのもそれはそれでどうなの、というか。
……対象になるのがTASさんとAUTOさんだからね、単純に過剰戦力なんだよね。
あとするべきことと言えば戦後交渉くらいのもので、それにしたって俺達は部外者──つまりこれから居なくなる人間。
つまり、向こうから何を貰ってもその一切が無駄になるわけで。
……そうなると、下手に姿を見せるのは得策ではない、ということになるのである。こっちの姿が相手に知られる、的な意味で。
寧ろ、徹底的に姿を見せずに、戦場を闊歩するおとぎ話……もとい恐怖の大王的なものと思って貰う方が都合がいい、というか。
迂闊に戦争してると介入してくる滅茶苦茶強いヤツ、くらいのポジションがいいというか。
それだとほら、俺達が居なくなったあとも色々と維持しやすいだろうし。
そういうわけなので、交渉に関してはこのままキャンピングカーの上で行うつもりなのであった。
……え?それだと向こうからの言葉を聞く手段がないって?
「ふっふっふっ、流石はTASさん抜かりなし」
「……?これに関しては貴方の策。私のやったことにされても困る」
「普通に返されても困るんだが?」
折角したっぱ・Aくらいのノリで発言したのに、普通にボケ殺しされては立つ瀬がないんだが???
……そんな俺の言葉に、TASさんは困惑顔。うーむ、さっきのがネタだと通じてない感……。
まぁいいや。
過ぎたネタには拘らないのが楽しく生きるポイント。
……というわけで、今回DMさんに頼んで用意しておいたものがこちら。
「てってれてー、通信用ドローンー」
「そっちの方がよっぽどネタなのでは?」
うっせーやい。
ともあれ、懐から取り出す……のではなく、既にこの場から発進し現地の映像をこちらに届けているドローン達を改めて紹介する俺である。
まぁ、何の変哲もない普通のドローンなのだが、こいつには幾つか機能があって。
「自分達のバリアは割られるのに、相手のバリアが割れないってのは中々に恐怖だろうねー」
その内の一つが、CHEATちゃん謹製『絶対に割れないバリア』なのであった。
これはCHEATちゃんのパワーを存分に活かした逸品であり、効果範囲はドローンの周りおよそ一メートルほどと短く狭いながら、その分その領域内には何者も寄せ付けない……という、絶対防御とでも言うべき性能を誇っている。
そんなドローン達が十数機、一糸乱れぬ統制で飛んでくるのは向こうからすれば恐怖以外の何物でもなかっただろう。
……一応、護身用にすら武装を持たせていないため、単に堅くて飛び回るだけの羽虫でしかないんだけどね。
無論、どうにかしてドローン本体に攻撃を届けられるのなら、の話ではあるが。
……あと、緊急事態時にはバリアの強度を上げて相手に突撃する……なんて芸当もできなくはないため、本当の意味で無害かと言われると微妙に首を捻るモノである、ということにも異論はない。
そんなドローン達だが、基本的な役目は戦場の死角を無くすため、というものであった。
こちらは常に上を取り続けるため、代わりに視点が見下ろし状態で固定される。
レーダーなどで補助はしていたものの、一部の歩兵はそれらを掻い潜るステルス能力を持っていたため、何度かヒヤリとすることがあったのだ。
……いやまぁ、ヒヤリと言ってもTASさんが『パーフェクトゲーム以外罰ゲームね』と言ったせいで生まれたモノであり、向こうの攻撃は早々届くものでは無かった、ということに変わりはないわけなのだが。
ともあれ、二点観測だけでは足りないのであれば、もう一つ観測点を増やそうと考えるのは道理。
そのために急遽投入されたのが件のドローンだった、というわけなのだが……最後の方はドローンの方が危険視されてたような気がする辺り、寧ろ方向性的にこの世界の歩兵達に近い彼らの方が恐怖の対象、だったりするのかもしれない。
仮にそうだとすると──その認識を利用しない手はない。
ドローンを見ただけで萎縮するほどに恐怖しているというのなら、それにより交渉を有利に運べる可能性が高まるからだ。
あと、俺達が帰ったあとも半永久的にドローンが動くようにして放っておけば、戦争抑止としても活躍できるかもしれない。
……まぁ、いつかはこの世界の人類があのバリアを突破し、再び戦乱の世に逆戻りするかもしれないが……流石にそこまで責任は取れん。
そこまでして争いたいのであれば、どうぞこの世界の中で存分にやってください……という感じだ。
そしてできれば、その争いはこの世界の中だけで完結して欲しい。
もし仮に他所の世界にまで手を伸ばすとなれば──今度こそ、TASさんを止められる自信がない。
「ぼっこぼこにしてあげる」<˙꒳˙)꜆꜄꜆
「oh……」
寧ろそれを楽しみにしている、とばかりにシャドーボクシングを行うTASさんの姿に、俺は『頼むから早まってくれるなよこの世界のお偉いさん……!』とらしくもなく神頼みしていたのであった。