はてさて、無事にマスドライバーを使わせて貰い、速度の限界を越えて元の世界に戻ってきた俺達。
出てきた場所はあの無人島であり、かつそこに残されていた物の具合からしてさほど時間が経過していないことを察したのであった。
「用意していたものがほとんど残ってるからなぁ、少なくとも一月も経ってないのは確か……みたいな?」
「しまった、これは良くない」
「……?良くないとは、どういうことですの?」
と、ここでTASさんがしまった、とでも言いたげな顔をする。(※当社比)
……いや、わざわざ(※当社比)って言わなくてもわかるくらいにビックリしてるなこれ?
そんな彼女の様子に、他の面々がぞろぞろと彼女の近くにやって来る。
そうして集まったみんなを前にTASさんが告げたのは、
「今すぐこの場を離れないと不味い」
「……はい?」
あまりに突拍子もない、そんな台詞だったのd
──はてさて、交渉の結果マスドライバーを使わせて貰った俺達は無事に世界の壁を越え、元の世界への帰還を果たし……果たし?
「……んん?」
「どう致しましたの?頭痛が痛い、みたいな顔をしていますけど」
「何そのほんのりバカっぽい顔」
誰がバカじゃいっ。……とは言わないものの、AUTOさんが不思議そうな顔でこちらを見てくるのに対し、俺は何とも言えない違和感を覚えていたのだった。
いや、なんというかこう……なんか抜けてるというか、何かあったような気がするというか。
あまりにあやふやな俺の言葉に、AUTOさんは不思議そうな顔から怪訝そうな顔に変わって行ったのだが……それを確認し終わる前に、TASさんのらしくない大声に意識を奪われたのだった。
「しまった、これはとても良くない」
「良くないって……戻ってきたばかりでもう面倒事かい?」
「そう、もう残り数秒もない」
「早っ!?」
誰が見てもわかるくらいに慌てているTASさん、という珍しい姿にMODさんが声をあげるが、それに対して返ってきたTASさんの言葉はあまりに性急にすぎるもので。
「──タイムパラドックス。解消しない限り私たちは何度でも繰り返す羽目になる」
「はい?」
その発言が意図するところを尋ねようとして、俺達はh
「……二日酔いにでもなったかのように気持ちが悪い……」
「何?今さら車にでも酔った感じ?」
マスドライバーによる加速が余程堪えたのか、はたまた別の要因か。
キャンピングカーから外に出た途端に襲ってきた軽めの吐き気に、思わずグロッキーになる俺である。
隣のCHEATちゃんはそんな俺を見て声を掛けてくるが……そこまで重いわけでもないので返事代わりに頭をぐしゃぐしゃと撫でるに留める。
ナンダヤンノカコラー、と奇声をあげる彼女をあしらいつつ、改めて周囲を観察。
俺達が到着した先はどうやら異世界移動を体験する前、夜営の準備をしていたタイミングの少し後くらいのようで、焚き火をしようとして粗雑に集められた枯れ枝達が、もの寂しげにこちらへと主張していた。
それ以外は特に周囲に動くものもなく、至って普通の無人島……という様相である。
……あるのだが、何処と無く違和感を感じるような?
具体的に何処に違和感を感じているのか、と聞かれると困るのだが、なんとなく宜しくない空気……的なものが漂っているような、違うような。
「流石はお兄さん。危機察知能力は高い」
「TASさん?」
そうして首を捻る俺に背後から声を掛けてくるのは、他のみんなと同じようにキャンピングカーから出てきたTASさん。
……なのだが、その様子は普段と違い、焦っていることが誰にもわかるようなもので。
「ジャンプタイミングをずらしてるけど、それでも余裕はない。だから次回の貴方に期待して忠告を一つ。『気付いたのなら、脇目も振らずにここから離れて』」
「……ん、んん?いきなり何言ってるのTASさん?というか、次回?また異世界移動でもするの?」
「事態はそれよりもっと深刻。でも今回の仕様上、覚えていられることはそう多くない。だから一つだけ」
「????」
そんなTASさんが告げた内容も、どうにも要領を得ないもので。
……余裕がないのに次回が云々とか、それでいて忠告することが『ここから離れろ』だとか、なんというかちんぷんかんぷんである。
ただ、それを告げるTASさんの様子だけは真剣そのものだったため、一応覚えて置こうかと内心で考えて──、
「え?」
「ん、どうしたんでAUTOさん?まるで何か見ちゃいけないモノでも見てしまったみたいな声を……」
出して、とまで声は続かない。
彼女の視線の先、道路の向こうの方に見えるのはヘッドライトの明かり。
……そのヘッドライトに既視感を覚えた俺が、その明るさに慣れたがゆえに見出だしたものは、その明かりを発している車が
それを確認した瞬間、俺達の意識はまるで白く染められていくかのように、散り散りになっていったのだった。