──はてさて、これは何度目の繰り返しだろう。
それが一体何回前の決意だったのか、ということまでは思い出せずにいる俺である。
……いやまぁ、TASさんからの忠告を覚えていられてるってだけでわりと儲けものなんだけどね、今回。
話をする余裕も聞く余裕もないので確認は取ってないが、恐らくこれは一種のタイムパラドックスによるもの、だと思われる。
何時だったかのタイミングでTASさん自身も口にしてたしね。
タイムパラドックス。
それは過去へ移動できる、と仮定する際に現れる一つの難題。
時間が過去から未来へと流れるモノであり、かつその流れは変わらない……と考えた時に現れる矛盾、みたいなものである。
簡単に言えば、過去に行って自分の親が結婚しないようにすることはできない……みたいな感じか。
仮に其が出来てしまうと、
そんな感じで、結果が原因を弄ることはできない、仮にできてしまったら結果が変わってしまう……というのが、この矛盾の言うところである。
では今回の俺達がどういう状態に巻き込まれているのかというと、過去の自分と未来の自分が遭遇してしまう……という矛盾だと思われる。
これの何が問題なのかと言うと、過去側の俺達が未来の俺達を発見することにより、
そもそも今回の異世界移動は偶然である必要があったが、結果である俺達を見てしまうと逆説的に偶然が必然になってしまうのだ。そういう未来を観測した、という扱いになるために。
これが逆──俺達
何せ俺達の出現位置は、ほぼ異世界移動を行う前に居た位置と一致する。……言い換えれば、過去の俺達が必ず顔を見せる位置に居る、ということになる。
ただ、本来であればそれでも問題は無かったのだ。
普通に考えれば過去の俺達が異世界に行った後に俺達は元の場所に戻ってくるため、互いが顔を合わせる可能性なんてものは万に一つもないのだから。
……つまり、俺達は現在致命的なループに陥っている、ということになるわけで。
「具体的に言うと速度超過。速度を出しすぎてタイムマシンになってる」
「うへぇ……」
そう、マスドライバーによる加速で世界の壁をぶち抜く、というそのやり方に間違いはなかった。
……なかったのだが、少々やり過ぎていたのである。
で、やり過ぎた結果速度が一定値を越した上、世界と世界の間という特殊な環境下によって変な反応を引き起こし……。
結果、こっちの世界に戻ってきた際、俺達は
……え?それだと周囲に置いてあった焚き火用の枯れ枝とかがおかしくなる?
それがおかしくないんだよなぁ……。
「まさか俺達がタイムパラドックスを起こす度、その影響だけ残り続けているとはな……」
「つまりあの枝は、前回・もしくはそれよりも前の私達が残したもの……ってことかい?」
「そうなる」
タイムパラドックスが起こる度、俺達は
言い方を変えるとTASさんに巻き戻して貰っていた、ということになるのだが、これがどうやら地味にバグっているらしく。
具体的に言うと『巻き戻しに制限が掛かっている』とのこと。……彼女的に言うと『世界の壁を越した辺りで
世界の壁を越える前後の時間軸が上手く繋ぎ辛いらしく、結果として前のループの影響が微妙に残ってしまうのだそうな。
結果、俺達はその残された影響を『過去の俺達が世界移動する前に残したもの』と誤認していた……と。
これの何が問題かと言うと、この痕跡自体もパラドックスの原因になる、という部分。
つまり、直接過去の自分と遭遇しなくても、この痕跡を相手に──特に過去のTASさんに見付かってしまうと、その時点でタイムパラドックスが発生した扱いとなり、致命的なエラーを起こす前にTASさんの安全装置が働いて同期エラーを起こした辺りに飛ばされる……と。
で、この同期エラーのタイミングがなんと、過去の俺達がここに来るおよそ一分前、という鬼畜具合。
その一分の間に、俺達の痕跡を丸ごと片付け、かつ過去の俺達に見付かることなくこの場から離れない限り、このループを打破することはできない……と。
「……いや無理じゃね!?」
「無理でもやらないとダメ。無理矢理パラドックス回避してるから、一瞬記憶が混濁するけどそれでもやらないとダメ」
「そのせいで使える時間が半減してるんだが!?」
無理矢理再起動するのはハードに悪いって言ってるでしょうが!
……とかなんとか言ってるうちに過去の俺達に見付かってしまい、再びの強制リセットに突入する俺達なのでありましたとさ。
帰って来て早々無理ゲーを強いてくるんじゃねー!!