うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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何が飛び出すかわからないので意外と有用

「……なるほど、確かにそれなら何とかなりそう」

「でもよろしいのですか?流石にそれは色々とアレだと思うのですが……」

「このままここで、無限の煉獄に囚われ続けるよりはマシですぅ」

 

 

 はてさて、ダミ子さんの突拍子もない提案に、最初は驚いた俺達だったが……彼女の持つ()()()()()について思い起こした結果、これ以上お誂え向きな話もない……とみんなが判断し、彼女の案は無事実行に移されることとなった。

 まぁ勿論、実行に移す前に「本当にそれでいいのか?」と尋ねて見たが……ここでずっと立ち止まる羽目になるよりはマシ、とのこと。……目が据わってて怖かった、とだけ付け加えておく。

 

 でもまぁ、それも仕方のないこと。

 だって彼女が提案した『この状況からの脱出方法』というのは、

 

 

「まさかダミ子さんの下着ネタ(ソシャゲハレンチサンタ袋)再び、とはね……」

「その呼び名は一体誰の命名なんです?」

 

 

 遠い世界の親愛なる視聴者様、かな?

 まぁ、そんな第四の壁の向こうの話はともかくとして、ダミ子さんが自身から告げた提案と言うのは、彼女の下着に附随する機能──二百億光年先の宇宙空間との接続を活用し、一時的に俺達がそっち側に避難する……というものであった。

 

 これならば、僅か一分に満たぬ制限時間であっても、過去の俺達の有効反応範囲から逃れることができる。

 いやまぁ、正確にはTASさんが気付くことは避けられないんだけども、そこから芋づる式に発生する他の面々への波及については抑えられるため、結果としてリセットボタンは回避されるとかなんとか。

 

 つまり、現状俺達が取れる手段としては最良・かつ最適であり、これ以外の方法は論ずるに値しない……というくらいの話になるわけなのだけれど。

 

 

「どうしたの、お兄さん?」

「なんというかこう、思考を操作されてるような違和感が……」

「TASさんのようにこちらの感知範囲外から行動を操作している者がいる……ということですの?」

「うーん……」

 

 

 なんだろうね、この微妙にこっちの動きを操作されているような感覚。

 いやまぁ、TASさんやROUTEさんがこの提案に否を唱えず、普通に賛同している時点で単に俺の勘違いだとは思うんだけど。

 ……それにしては、なんとも違和感が拭えないというか。

 

 ただ、仮にこの違和感が正解だとすると、TASさんやROUTEさんに気付かれずにこちらの行動に干渉できる何者かがいる──という、なんとも恐ろしい話に繋がってしまうわけで。

 流石にそれが正解とも思えず、俺はAUTOさんの言葉に唸り返すだけになってしまったのだった。

 

 

「……一応、お兄さんの懸念が間違ってないってパターンもあるにはある」

「あるの?!」

「ROUTEより長いけど、私にも見えない範囲というモノはある。具体的には今から一年以上先のことは、流石に私にもあやふや」

 

 

 そうして唸る俺を見たTASさんは、しかしてその懸念を解消するためではなく、寧ろ深めるための言葉を告げてくる。

 

 それは、何度か触れられている彼女の未来視の限界点。

 彼女のそれは『現在選べる選択肢の全確認』という、言葉にすると「何言ってるのお前?」と首を捻ってしまうようなもの。

 そんなものを認識して動けるのか?……みたいなツッコミもそうだが、それ以上にそれを何時まで見続けるのか?……みたいなツッコミも必要とするそれは、しかしてだからこそ彼女の動きがTAS染みたモノになる根拠にもなっている。

 何せ、実際に動く前に自身の行動が正解か否か・ないしその動きが可能か否かを確認できるわけなのだから。

 

 ……とはいえ、予測を予言に変えられるほどの精度を持つ未来視を──それも例外の無いように全ての選択肢において確認する、という作業が人の脳に与える負担というのは未知数。

 普段の彼女の感情表現が控えめなのも、その辺りの負担が理由なのではないか?……と疑うくらいなのだから、そりゃまぁ無際限に未来を視ている、なんて風には思えまい。

 

 故に、限界。

 彼女がそのスタイルを保つために見続けていられる範囲は、今から一年先までのこと。

 それ以降の未来に関しては、範囲を絞れば視れなくも無いとのことだが、それをすると彼女のTASとしての性質を犠牲にする──言い方を変えれば()()()()()()()()()()()()()となり、結局のところあまり役に立たなくなる……とのことであった。

 

 

「……ええと、何が問題なのかよく分からないんだが?」

「彼女の未来視は例外を許さないからこそ絶対。──裏を返すと、例外が許されると途端に脆くなるんですよ」

 

 

 起こりうる全てを知っているからこそ、その中から自分の望む未来を選択できる……というのが彼女がTASである理由。

 つまり、その絶対性を失うというのは言い換えると、常に本番一発勝負──RTAし続けなければ行けなくなる、ということに近いのだ。

 

 

「出来なくもないかもしれないけど、それからずっと失敗できない……というのは意外と重い」

「ああなるほど……TASの場合は表に出ないだけで失敗自体はしているけれど、RTAとなれば見えない部分ですら失敗できないのか……」

 

 

 無論、今までのTASとしての活動実績的に、RTAに転向しても彼女は上手くやるだろうが──それは何もかも全部、という意味ではない。

 限られた一部門に関してはその実力を発揮できるだろうが、それ以外に関しては素人と同じ……みたいなことになってしまう可能性がとても高い。

 今のTASさんが武芸百般に明るいことを思えば、その弱体化加減はとんでもないことになるだろう。

 

 つまり、一年以上先のことを気にして動こうとしても、彼女はTASとしては動けないということ。

 そして、今回の誘導が一年以上先に起こりうる何かによって引き起こされたモノなら、彼女にそれを感知することは不可能……ということになる。

 

 

「これの面倒なところは、この場合の一年以上先というのは()()()()と実質同じ、ってこと」

「あー……大体一年でループしてるんだから、その先のことはわからない……みたいな?」

「そういうこと。クリア後の裏ボスがあれこれしてるんならちょっと今の私には重い」<フンス

(重いと言いつつ、ちょっと楽しそうなのはなんなんでしょうかぁ……?)

 

 

 今の俺達が置かれている環境──今のループではなく、もっと根源的なループの仕様的にも、俺の違和感が一年以上先に起因するのであればこちらに対処の手段はない……。

 そんなことを告げるTASさんは、しかしその発言の内容とは裏腹に、とても楽しそうな空気を醸し出していたのであった。

 

 ……ああうん、TASさん的には隠しボスとか裏ボスとか寧ろばっちこい、って感じだもんね……。

 

 

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