「……まぁ、なんとなーく現状については理解できたわけだけど。……で?ここからどうするの?」
「一番簡単なのは、誰かがここに来ること」
「……え?そんな簡単なことでいいの?」
正直頭が痛いことばかりだが、なんの対処もしない、というわけにもいかず。
仕方がなく、ちゃぶ台を囲んで朝食を摂りつつ、今後の対策についてTASさんと語り合う俺である。
……ちなみにAUTOさんの前に茶碗とか並べてみたところ、普通に食べ始めたためビビったのはここだけの話。
TASさんによれば、イベントフラグとかは残ってるらしいので、そりゃあ『普通はそうする』みたいなものが目の前に転がってくれば普通に反応する、らしい。当たり判定とかがあったのもこの一貫だとか。
「でも、できればご飯とか置くのはやめて上げてほしい」
「そりゃまた、なんで?」
「ガワは反応しないけど、受けた感覚とかは向こうに伝わるから」
「……
なお、食べたものとか触った感触とかは普通にAUTOさんに伝わる、ということを後から聞かされたため、普通に怒る羽目にもなったわけだが。……さっきべたべた触ったの、バレたら死ぬやつぅ!!
「……!なるほど、遠隔で相手を
「ねぇそれ褒めてる?もしかして褒めてるつもりで言ってたりする?」
だとしたら、ちょっと自分のこと省みるべきだと思うよお兄さんは。……まぁこれで省みてくれるのなら、TASさんはTASさんじゃないわけだが。
「そう、引かない・媚びない・省みないはTASに必要な精神の一つ」
「うーん、(恋)愛(フラグ)なんていらない、なんて言ってる人は言うことが違うなぁ」
でもできれば世紀末に傾倒するのはやめて欲しいかなぁ。……ダメ?そっかー。
はてさて、目の前に食べ物を置くと、反射的にとでも言わんばかりに黙々とモノを食べるAUTOさん(偽)。
こうして食べたものは、全て本体であるAUTOさんの胃袋に行く、というのだから、本来ならこんなことしている場合じゃないのだが……。
「こっちからできることはないし、迂闊に外に出ると(画面内を)付いてくるって話だから、ここから出られないってのがねー……」
現状、フラグがぐっちゃぐちゃになっているらしく、この状態で外に出るのは自殺行為・なにが起こるかわかったものではない、らしい。
いや、そういう混沌こそTASさんの独壇場では?などと思っていた訳なのだが……。
「今日は無理」
などと言われてしまえば、こちらとしてはなにも言えなくなるしできなくなる、というわけでして。
幸い、絶対に今日やらないとダメ、みたいな予定はないので、バイト先には休ませて貰えるよう電話し、家で待機していようということになったのだった。
……なったのだが。
そうなってくるとなんというか暇、と言わざるを得ず。
なにせ今日のTASさんは「無理」と言っていたように、いつものTAS的行動のほとんどを行っていない。
今は窓際で静かに本を読んでいるものだから、普段の変なテンションはどこへやら、という始末。
……必然いつもやってるゲームとかも封印状態みたいなものなので、テレビを見るくらいしかすることがないわけだが……。
「……時代劇かテレビショッピングか韓流しかやってねぇ……」
「奥様向け。そういうのが平日は喜ばれる」
「うへー……」
平日の午前中と言えば、奥様達の時間。
ゆえに放送しているのは、そういう層が好みそうなものが中心ということになる。……はっきり言って見るものがねぇ!
結果、この部屋の中で唯一の異物・AUTOさん(偽)の反応を見るのが唯一の楽しみ、なんてことになってしまったわけである。
いやだってさ。ご飯を差し出すと雛みたいにパクパク食べるんだぜ?普段のAUTOさんからは想像できない姿なわけで、なんというかこう癖になる、というか?
「……だから豆なの?」
「これくらいのモノなら腹にもたまらないかなぁって」
なので、誰かがうちに訪問してくるまで、というゴールの見えない状況をどうにか乗り越えるため、こうして与えるご飯の量を極力少なくして、長く彼女の反応を楽しめるようにしている……というわけなのであった。
……ただまぁ、これには一つデメリットがあって。
「……普通のAUTOさん相手にもやりそうな気がして怖い」
「さっきからかれこれ一時間くらいやってるもんね、お兄さん」
言外に「飽きないの?」という呆れの混じったTASさんからの視線に屈することなく続けてきた俺だが、流石にこれだけ続けていると癖になりそう、というか。二重の意味で。
もし仮に本人にこんなことをした日には、普通に引かれるか殴られるかするのは必至。
……まかり間違って普通に同じ反応を返された日には、もう御天道様の下には戻れなくなること請け合いである。
なので、いい加減やめなきゃなー、と思っているのだが……。
「やめられないとまらない……っ!」
「怒られたら?二重の意味で」
これが中々どうして。
人の欲ってなんでこんなに度し難いんだろう、なんてことを思ってしまう結果となるのであったとさ。