うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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鏡よ鏡、そこにいるのはだぁれ?

「──というわけでお食べよ!」

「はふはふ、がつがつ、もぐもぐ!」

「わぁ、いい食べっぷり」

 

 

 困惑するMODさんを放置して城を飛び出した俺は、キャンピングカーの音声認識の範囲まで入ったことを確認し、大声で叫ぶ。

 途端、収納空間から取り出された後にひっそり隠れていたキャンピングカーは唸りを上げて大地を駆け──そのまま俺を乗せ、元の扉の前まで戻ってきていたのだった。

 城の内部に車なんて入れていいのか?……と突っ込まれそうだが、その辺りは気にしない。気にしてはいけない。

 ……え?余計に王様にキレられるんじゃないかって?もうあれだけキレてたらあとは誤差みたいなもんでしょ、誤差。

 

 ってなわけで、ストレス爆発状態のダミ子さんに提供するのは美味しい食事。

 ダミ子さんと言えばよく食べる人だからね、暴飲暴食はよくないけど今このタイミングでは仕方ないって話さ。

 なお当のダミ子さんだが、よっぽどイライラしていたのかはたまたお腹空いてたのか、出される料理をまるで吸い込むかの如く食べ尽くしていたのだった。

 

 

「え?王様倒したあと踊り始めるダミ子?」

「畜生か何か?煽りでしょそれはどう考えても」

 

 

 あとはナチュラルに増えることを想定するんじゃない……いや、よく考えたらもう増えてるのか……(周囲を見渡しながら)。

 

 ……真面目に考えると色々あれになりそうなので流しつつ、改めてダミ子さんの様子を確認する俺。

 ちょうど三段プリンを平らげた彼女はというと、さっきと比べれば格段に顔色が良くなっていたのだった。……一時的な対処ではあるが、元気になって良かったと頷いておく。

 

 さて、これで彼女を中に連れていく用意ができたわけだし、意気揚々とボス部屋に特攻したいところなのだが……。

 

 

「どうしたのお兄さん?」

「……ダミ子さんに食べさせる前にセーブしておいたら、今食べた物とか復活したりしてたのかな?」

「!?」

「今は復活場所として利用してるだけで、本当にセーブ&リロードしてるわけじゃないから関係ないよ?」

「そっかー」

「!?!?」

 

 

 いやほら、思ったより暴飲暴食されたものだから、結構食糧減ってるもんでね……。

 思わずTASさんに問い掛けてしまった俺を、驚愕の視線で見つめてくるダミ子さん。

 俺はその視線を受けながら、小さく苦笑を返したのだった。

 

 

 

;・A・

 

 

 

「じゃあみんな、用意はいいかー!?」

「「「おー」」」

 

 

 憤慨するダミ子さんを再び落ち着かせたのち、改めて扉の前に向き直った俺達。

 周囲の面々の様子を確認したところ、みんな気合いは十分のようである。

 

 となれば、あとはこの勢いを保ったままボス戦もとい王様戦をクリアするだけなのだが……はてさて、どうなることやら。

 そう思いながら、扉に手を掛け押し開ける。軋みをあげながら扉は開いていき、そこにいる王様の姿を俺達に見せ付けて──、

 

 

「……あれ?」

「いませんわね、王様」

 

 

 ──来るかと思われたのだが。

 部屋の中に入った俺達の視界に入ってきたのは、誰もいない玉座の間。

 今まで通りなら、このタイミングで王様の演説?的なものが挟まり、その後弾幕がばら蒔かれるのだが……その様子は一切ない。

 

 がらんとしたその部屋は誰の気配もなく、勇み足で突入してきた俺達を寧ろ嘲笑っているようにも思えたのだった。

 

 

「……あれー?」

「ふぅむ、何処かに隠れているのかと思ったのだけれど……その様子も無さそうだね?」

「MODさんがそう言うなら、ここには誰もいないんだろうなぁ……」

 

 

 暫く部屋の中を探し回ってみたものの、誰かが隠れている様子もなければ飛び出してくることもない。

 隠れることに関してはエキスパートであるMODさんからも、この部屋の中には俺達以外に誰もいない……という言葉が返ってきたため、本当にここには誰もいないのだろう。

 

 だがそうなると、どうにも肩透かし感が出てしまうのも事実。

 いやまぁ、戦闘がないのならそれはそれでありがたいことなのだが、急に梯子を外されたようにも思えるので微妙な気分になるのも仕方がないというか?

 実際、ダミ子さんは特にここで色々とやきもきさせられていたので、不満たらたらでもおかしくないのだけれど……。

 

 

「……ダミ子さん?」

ふぁいっ!?わわわ、私に何かようですかぁ!?」

「いや、特になにもないですけど……」

「ならいきなり話し掛けないで下さいよぅ!!」

 

 

 俺が目にした彼女の様子は、何やら悼むような・はたまた羨ましがるような微妙な表情。

 先ほどまでの烈火の如き表情とは似ても似つかず、思わず声を掛けるのを躊躇してしまうくらいであった。

 まぁ、実際に声を掛けたらいつものダミ子さんに戻ったのだが。

 

 どうにも釈然としないが、当初の目的──この場所から元の時空にアクセスする、という作業は問題なく行えそうであるため、そのまま帰る準備を始める俺達。

 

 長老さんはそれを見ながら名残惜しそうな顔をしていたが……このまま俺達がここに残るとみんなダミ子さんと同じ顔になる、という爆弾発言を落としてくれたため、俺達は一切後ろ髪を引かれずにこの場を後にすることに成功したのであった。

 

 ……いやはや、なんだったんだろうね、ここ最近の展開。

 

 

「サブミッション的な?」

「参考までに聞くけど、これをこなすと何が起こるの?」

「お兄さんの生存確率がちょっと上がる」

「結構重要な話だった!?」

 

 

 いや全然そうとは思えなかったんだけど……えー?

 

 

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