うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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見た目と中身が乖離する

「やめなければ……いやしかし……」

「……中毒者みたいになってる……」

 

 

 て、手が震える……!

 あの無垢な眼差しを見ていると、お、俺は、豆を、豆を与えなければいけないと……っ!!

 ……と、なんかあぶないおくすり()にでもハマってしまったかのような言動から始まりましたが、皆様お元気でしょうか?お兄さんは色々と限界です()

 

 経過した時間は、都合二時間。十二時間表記に直すのなら十時くらい。

 ……なにが言いたいのかと言うと、「こんな時間に人なんて訪ねて来ねぇよ」である。

 

 

「……そもそもの話、うちって人来ねぇ」

「荷物も宅配ボックスに入れて貰うようにしてるから、余計のこと……だね」

「防犯意識の高さが仇になったか……!」

 

 

 今現在、俺達が住んでいるのはオートロック式のマンション。

 荷物は共用玄関付近の宅配ボックスに入れて貰うようになっているため、印鑑とかサインがいるようなものでもない限りは、一日に一度取りに行く以外で足を運ぶことはない。

 更にはこんな朝っぱらからうちに来るような人もいない!……つまり、必然的に誰かが来るというのであれば……、

 

 

「大家さんかいつものメンバーを待つ、って感じになる。……大家さんは言わずもがな、他二人も今日は平日だから、来るのは最低でも午後に入ってから」

「……詰みじゃん!出直して参れ!」

「出直させたらダメだと思う……」

 

 

 ああダメだ!なんかTASさんのツッコミも切れが悪い!

 なにせ、誰かが来ない限りここに居続けるしかない、というのは軽い軟禁状態のようなもの。

 ……いやまぁ、出ようと思えば出られるんだけども、その場合に待っているのは動作保証外・なにが起きても自己責任……という荒野の如し修羅場。

 イツーモAUTOさん、なんていう不純物まで引き連れていたのでは、そもそもに不審者扱いで御用である。

 ……え?なんで引き連れてるだけで不審者なのかって?

 

 

「……画面の中心判定が俺にあるとは思わないじゃん……普通TASさんの方だと思うじゃん……」

「お兄さんの脱水マラソンの始まり」

 

 

 ちょっとお手洗いに……と立ち上がった時、何故かAUTOさんまで立ち上がった時点で悪い予感はしたのである。

 いやまさかな、なんて思いながら気にしないふりをして、そのままトイレの扉の前にたった時、俺は気付いたのである。

 ほんのり微笑を(たた)えたまま、静かに俺の背後に立っているAUTO(偽)さんがいることを、ぴかぴかに磨かれたトイレの扉越しに……っ!!

 

 背後霊かよ、なんてツッコミすら咄嗟にでないほどの衝撃、わかって貰えるだろうか?……アカン、このままやとトイレに彼女を連れ込む形になるぅ!……という恐怖を、だ。

 ……あとこう、挙動が例のゲームに似ているって前提なら、トイレに入って便座に座ると、まず間違いなくタンクの上に陣取るだろうな、っていう予想も。

 

 どちらにせよ大問題、幸いにして現状の彼女は重さについては無きようなもの、例えタンクの上に乗っても壊したりはしないが……それを幸い扱いしないといけない程度には災いしかないわけで。

 ……なのでこう、そろそろ喉が乾いて来ました。トイレに行けないんだから仕方ないんだけど、別に部屋の中はそこまで暑い訳じゃないんだからいいんだけど。

 

 外は真夏日、しかもこれから更に暑くなる、という午前中。……外に出るのが自殺行為、というのはわかって貰えるのではないだろうか?

 

 

「……せめて判定がTASさん側なら俺が誰か呼んでくる、とかも出来たろうに……」

「今日の私はおみくじを引かせたらくじが定まらず、ガチャを引いたら変な引きをする……みたいな状態。代わりに私が誰かを探しに出ても、多分変なことにしかならない」

 

 

 更に問題なのが、今日のTASさんはぽんこつ状態だ、ということ。

 より正確に言うのであれば、昨日のフラグ処理ミスの辺りからぽんこつ、ということになるわけなのだが……そっちが治るのも午後に入ってから。

 つまり、どう足掻いてもここから更に二時間、もしかしたらさらに待ち続けなければいけない、ということ。……脱水マラソン、なんて言われても仕方のない状況である。

 

 で、その辺りの焦りをごまかすために、さらにAUTOさんに豆を与え続けてしまう……という悪循環が生まれていたわけでして。

 いや、わりとマジでどうしよう……と思いつつ、雛のように口を開けるAUTOさんに豆をあげようとして、

 

 

「──消えたっ!?これは?!」

「珍しい。誰か来たみたい」

 

 

 俺が手を離した豆は、突如行き場を失い地面へと落下する。

 AUTO(偽)さんの突然の消失に、思わず視線をTASさんに向ければ、彼女はすいっ、と顔を玄関の方へと向ける。

 ……要するに、来ないはずの誰かが来た、ということになるわけだが、一体誰が?

 

 可能性として一番高いのは、やはり大家さんということになるわけだが……玄関がガチャガチャ言ってる辺り、その線は薄い。

 鍵を開けようとしている、ということなので必然的に他二人、ということになるのだが、この時間帯にやって来る……?

 

 よもや泥棒ではあるまいな、などという緊張感を孕みつつ、固唾を呑んで扉を見つめる俺。

 そして、開いた扉から現れたのは──、

 

 

「やほー。テストで午前で終わりだから遊びに来てやったぜー」

「ぶふっ!!?」

「うわ汚なっ!?ってかなんだよ、なんで人の顔見て吹き出してるんだよアンタ?」

 

 

 なんかこう、ちょっとガラの悪い感じになったAUTOさん(?)だったのだった。……思わず吹いた俺は悪くない。

 

 

「……あ、言い忘れてた。先に見た目のスロットが埋まってるから、中身はどうあれ彼女(AUTO)の見た目になるよ」

「それを先に言って!?」

 

 

 なお、理由についてはTASさんからあっさりと明かされた。……これ正常動作かよぉ!?

 

 

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