うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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思い出はいっぱい、後悔もいっぱい

 海は大きく荒れた様子もなく、されど静かに凪いでいるという様子もなく。

 至って平穏、至って普通。……そう言いたげなその海原を悠々と船は進む。

 

 その上で進行方向を見つめているのは二人の少女。

 黒と金の髪持つ二人は、対称的な姿をしていた。

 

 黒の少女の方は、いっそ幼女と呼んでしまっても通るような見た目をしている。

 後ろで揺れる三つ編みは大きく、また掛けているメガネもまたそれなりに大きいが……それは彼女が小さいからこそ、余計に大きく見えているという向きもないではないだろう。

 

 対して金の少女、彼女の方はもう立派な淑女と呼んで差し支えない見た目をしている。

 緩くウェーブの掛かった金糸の髪は海風を受けて棚引いているが、ゆえにこそ西洋の美の女神を彷彿とさせる雰囲気を醸し出している。

 

 そんな対称的な二人であるが、今の状況は見た目から想像されるそれとは反対なのであった。

 

 

「……酔いましたわ……」

「流石に船の上でダンスは無謀」

ねー!?何やってるのこの人!?何やってるのこの人!?!?

 

 

 ……金の少女の方はちょっとバカなのかもしれない。

 傍らの男はそんなことを思ったとか思わなかったとか。

 

 

 

눈_눈

 

 

 

「それで、なんであんなことを?」

「こう、昔取った杵柄が、ですね?」

「なるほど。前提条件マシマシ状態に興奮した、と」

「……表現はあれですが、概ね合っています」

 

 

 はてさて、船上で慣れないことをしたために酔ったAUTOさんを介抱する俺達は、その中で彼女に『何故あんなことをしたのか』と問い掛けていたのだった。

 

 ……うん、この人何を思ったのか、突然船の上でフラメンコ踊り始めたからね。

 俺達もギョッとしたけど、バックミラー的なもので確認したらしい船長さんなんかは、思わず振り返るくらいビックリしてたからね。

 いやまぁ、見た目綺麗な姉ちゃんがなんか意味不明なことをやり始めた、となれば驚かない方がおかしい気もするけども。

 

 ともかく、そんな奇抜以外の何物でもない行動を彼女がしてしまった理由は、『色々条件が重なっているのが目に見えてしまったから』……という、なんとも言えないモノなのであった。

 分かりやすく言い換えると、出会った当時のアレ(太鼓しながらダンス)である。

 ……基本的には真面目な質のAUTOさんだけど、時々こうして羽目を外すので油断ならない。

 

 

「面目ありませんわ……」

「なんでそこで謝るのAUTO。もっと自分の欲に正直になろう。それこそ私が求めるAUTOの形ふべっ」

「TASさんは自重しようね?」

「……お兄さんが最近暴力的過ぎる……」

 

 

 そう思うんなら、俺にそういうことさせないで下さい。君を言葉で止めるのほぼ無理なんだからさ。

 ……とぐちぐち文句を言うTASさんに再度注意を投げつつ、その流れでAUTOさんにもTASさんの言葉を真に受けないように、と釘を刺す。

 それを聞いたAUTOさんは始めキョトンとしていたが、やがてクスクスと忍び笑いをし始めたのだった。……何かが琴線に触れたらしい。

 

 

「いえ、お気になさらず。……もうだいぶ気分も良くなりましたし、当初の予定に戻りましょう」

「お、おう?……で、当初の予定って言うけど何するのさTASさん?」

「……私、出る前に説明したと思うんだけど」

「ん?……あー、サンマだっけ?」

 

 

 なんで笑われたのかはよく分からないが、まぁ元気になったのならよしである。

 

 そんなわけで、当初の予定に戻ることにしたわけなのだけれど……今回って何のために海に出たんだっけ?

 と首を傾げれば、信じられないモノを見るような目(※当社比)がTASさんから飛んできたのだった。

 え?説明したじゃんって?……出発前の更に前、いきなり部屋にやってきたTASさんが喋ってたことなんて、大体適当なこと言ってるなーとしか思ってないってば。

 

 酷い、とでも言いたげなTASさんだが、そもそも君が当初の目的から端を発し、最終的に微塵も関係ないような場所に着陸することを繰り返しているからこうなるんだ……と返した俺であった。

 ……泳ぐよって言ったのに、何故か山で鉄鉱石掘ってたこともあるんだからさもありなん。

 

 

「何故そのようなことに……?」

「泳ぐには水辺に行く必要がある。水辺に行くには水辺がないといけない。水辺は近くにないから作る必要がある。だから鉄鉱石が必要だった」

「…………???(何言ってるんですかこの人、という顔)」

「雑に言うと近場にプール作ろうとしてたんだよ、この子」

「大掛かり過ぎではありませんこと!?」

 

 

 なお、なんでそんなことになったのかというと。

 その時は近場に水辺に──海や池、川のようなモノがなく、またそれらが自然に湧いてくるような確率もなかったため、結果としてプールを近場に作ろうという発想に至った結果の行動だった。

 ……鉄鉱石はプールサイドの手摺用、というわけである。

 

 まぁ、その時は「話が気長すぎるわ!!」と言って止めさせ、そのまま近くのプールに向かったのだが。

 ……今にして思えば、あそこで鉄鉱石を掘るのは別のフラグを回収するついででもあったことはわかるのだが……何にせよ、突拍子もない話だったことは間違いあるまい。

 

 なお、別のフラグ云々の話を口にしたため、暫くの間話題が脱線して今回の本題が進まなかった、ということをここに記しておく。

 

 

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