「サンマ釣りなんてしたことないから、どうやるんだろうなーってちょっとわくわくしてた俺がいた、ということは間違いない。そこについては断言する」
はてさて、話が横道に逸れまくったのをなんとか軌道修正し、本題に戻した俺達。
今回は秋の味覚の王様(?)であるサンマ漁、ということでどうやって釣るんだろうなー、とちょっとわくわくしていた俺なのだが……そのわくわくは、開始前から既に暗雲に呑まれ、漁開始現在ではそのまま暗礁に乗り上げる形となっていたのだった。
なんでかって?そりゃもちろん、俺達の目的であるサンマとやらが、いわゆる普通のサンマでは無かったからだよ!!!
「確か、サンマの漢字表記の一つである『
「マジで刀みたいな切れ味してるやつがあるかぁ!!」
「つまりフィッシング厄介者。糸も網もスパスパするから専用の道具が必須。似たようなのに
「亜種的なのまでいんのかよぉっ!?」
海面からぴょんぴょん跳び跳ねるサンマ達は、急に住み処にやって来た人間達に驚いている……
何せ彼らのその身体、まるで研ぎに研いだ日本刀の如く白銀を放ち、事実その見た目のままに糸や網程度の柔な素材であれば両断せしめる鋭さを持つのだから。
……いや、どこのファンタジー作品の危険生物じゃい!?
あれだよ、出立前の『物騒なことになりませんように』ってお祈りが、完全に裏目に出た感じだよ!!
「お兄さん自意識過剰。お兄さんが祈ろうが祈るまいが、彼等はここで私達を待ち受けていたよ」
「そこツッコまれても困るんだよなぁ!?」
そこより気にすべきことがあるんだよなぁ!?
……と、船上まで跳び跳ね、ともすればこちらを切り裂こうとするサンマ達の群れに戦々恐々とする俺なのであった。
普通に命の危険が危ねぇ!!?
「サンマを獲るのにハンマーで撃ち落とすことになるとは思いませんでしたわ……」
「咄嗟の判断で船に積まれていたハンマーを手に取るAUTOさんもわりと大概だよね……」
あれだ、まるでトビウオの如くこちらに向かって飛んでくるサンマ達を、叩いて落としまた叩いて落とし……と縦横無尽の活躍を見せるその姿は、なんというか色々ツッコミ処満載なのを忘れてしまうような勇姿であったというか。
え?サンマ相手に死闘が繰り広げられている今の状況自体をツッコめ?ごもっとも。
まぁともかく、TASさんがどこぞの仕事人みたく鋼線を自在に操りサンマを釣り上げる(?)のとは対称的に、AUTOさんは弾丸を叩き落とすような勢いでサンマを捕獲していることは間違いない。
なお、俺に関してはそこらに落ちていた盾?扉?……の影に隠れて精々しなないように立ち回っている最中です。
「おい兄ちゃんよぉ、こいつら基本的に鉄には無力なんだから、んなにへっぴり腰じゃあ余計な怪我をするばかりだぜぇ?」
「
「……なんでぃ、勘はいいんじゃねぇか」
大雑把に言うと『女の背に隠れてるのはカッコ悪いんじゃねぇの?』的な罵倒が船長から飛んでくるが、冗談じゃない。
自分でヤバイ時はある、と白状しているようなその台詞を聞いて、何故前線に向かおうだなんて気力が湧くと思ってるんだと返したところ、何故か見直したような視線が返ってきたのだった。……いやなんでや!!
「単にビビって後ろにいるんじゃなく、ちゃんと状況を見て下がってるってわかったからだよ!……ほれ、兄ちゃんお待ちかねの一群の登場だ!!」
「待ってないよー!!?俺全然待ってないよー!!?」
そうこう言ってるうちに、船長の指差す先に何やら光るモノが見えてくる。
……いや、これは何かが光っているわけでなく、そこらのサンマ達と同じように陽光を反射した何者かが向かってくる姿。
そしてそれは、周囲に屯するサンマ達とは比べ物にならないほどに研ぎ澄まされた、まさしくエースとでも呼ぶべき存在達。
今しがた『基本的に』と前置きされた一団から外れた存在。
──斬鉄をなすほどに研ぎ上げられた、自然の猛威。
大サンマ達の群れが、縄張りに侵入した不届き者達を海の藻屑にせんと襲い掛かってきたのだった。
……うん。
「予想通り過ぎて最早ため息すら出てこないんですがー!!?」
「言ってる場合じゃないよお兄さん。とりあえず頭は下げてね」
「それ暗に頭上げてたら酷いことになるって言ってるようなもんだよね!?」
その見た目で船の外装切り裂いてくるとか詐欺もいいとこじゃないですかヤダー!!
……などと喚く暇もなく、俺達は混沌とした戦場へと叩き込まれて行くのであった……。
これ、生きて帰れるかなぁ……???