うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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何匹いても足りないのが秋の味覚

「死ぬかと思った……」<ボロッ

「でも死んでいませんわ。……今はそれで宜しいのではなくって?」

「なんかこういいこと言った風の顔してるけど、正直サンマに襲われて沈没しかけるとか笑い話にすらならないからね???」

 

 

 もしくは突然の状況に対応しきれなかったやつが二人、みたいな。

 

 ……船長は何やら唐突に発狂したかの如く船を巧みに操り、サンマ達の隙間を抜けながら高笑いしてたし。

 それを横目にしたTASさんは、全く動揺することなく飛んできたサンマ達をぐるぐる巻きにしていたし。

 

 代わりに向こうの本隊が来るまでは善戦していたAUTOさんは、流石に片手のハンマー一つでは対応しきれないと見たのか俺の横で防衛に専念していたし。

 俺に関しては言わずもがな、だし。……AUTOさんが隣に居てくれなかったら普通に死んでた気がするぜ……。

 

 

「何故でしょう、その場合貴方様が真っ二つになったあと、何事もなく地面から生えてくる光景が脳裏に過ったのですが……」

「俺のことなんだと思ってるのそれ???」

 

 

 いやまぁ、なんか最近俺自体も変な耐久性を発揮してる気はするけども。

 流石に真っ二つになったらそのまま死ぬよ?……死ぬよね?

 ……我がことながら、最近のあれこれゆえにちょっと自身がなくなってきた俺なのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「さて、それじゃあいい加減釣果を確認するよ」

「釣果とは言いますが……それ、迂闊に離して大丈夫なのですか?」

「大丈夫、もう活け〆してある」

「いつの間に……」

 

 

 はてさて、サンマの集団を退け陸地に戻ってきた俺達。

 これからお待ちかねの釣果確認タイムである。……いや別に俺達は待ちかねてないが。

 

 とはいえTASさんは大層満足なご様子で、こうしてケースに入ったサンマ達を嬉々として掲げていたりする。

 あんな危険生物、そのまま持って大丈夫なのか?……と思わないでもなかったが、どうやら陸地に着くまでの間に確りと〆られていた模様。

 彼女の手の内でぐったりと沈み込むその姿に、先ほどまでの彼らの勢いは少しも感じられなかったのであった。

 

 ……まぁうん、さっきまでの切れ味が刀とか包丁とかのそれと同じなら、単に握るだけでは危なくない……かな?

 迂闊に握りすぎるとそりゃ切れるだろうが、そうでなく単に持つだけなら危険はないというか。……既に〆られているのなら、突然暴れだして切れるみたいなこともないだろうし。

 

 そうと決まれば、こうしてぐるぐる巻きになっている糸を外すのも吝かではない。

 っていうか、外さないと食べられないだろう、普通に鋼糸だしこれ。

 

 ってわけで、乗員みんなでの糸外し作業(&釣果確認)のお時間である。

 

 

「……さっきまでのドタバタと比べると、絵面的に地味だなこれ」

「無駄話する暇があるなら手を動かしてお兄さん。あんまり遅いとお裾分け貰えないよ?」

「それはなんというかこっちに負担だけ投げ付け過ぎでは???」

 

 

 ……いや、後半役に立ってないとはいえ、それなりの数のサンマ達を叩き落としたのはうちの二人なんだが?

 つまり実働班がこっち負担なわけで、その状況下で報酬なしとかぼったくりどころの話ではないんだが??

 

 というような意味を込めた視線を船長に送ってみたところ、返ってきたのは「俺が船出さねぇとそもそも相対の機会もなかっただろう?」と、微妙に返答に詰まる発言なのであった。

 ……そこ突かれるとなんとも言えん。確かにTASさんは獅子奮迅の働きぶりだったが、それでも船体そのものに直接攻撃してきた奴らを華麗に避けてたのは船長の腕によるものだったし。

 

 

「申し訳ありません貴方様、私がもう少し活躍出来ていれば……くっ!」

「いや、申し訳なくないよ?AUTOさんいないと酷いことになってたからね?サンマ漁としてはあれかもだけど、俺にとっては救世主だからね?」

「……お世辞でもありがたいですわ」

 

 

 いやお世辞じゃないんだけどね???

 っていうか後半がダメだっただけで、前半ならAUTOさんも結構獲れてた……え?ハンマーで頭かち割ってたから売り物になんない?……あー。

 なるほど、防衛的にはAUTOさんも活躍していたが、純粋に漁としてみるとあれだったと。

 そう言われるとこっち側の仕事ぶりが足りてない、というのも頷けなくはないわ……。

 

 うーむ、もしかして俺が付いてこなかった方が仕事的には上手く行っていたのでは……?

 そんなことを思いながら、サンマに巻き付いた糸をほどいていると。

 

 

「お兄さんは変なことを言う。お兄さんが来ないなら私も来てないよ?」

「お、おう。……おう?」

「なるほど、何のための兄ちゃんかと思っていたが……嬢ちゃんの気持ちの問題だったか。確かに、以前より動きが良かったしなぁ」

「いや待ってツッコミが追い付かないんだけど???」

 

 

 こりゃ、報酬に色を付けるべきかぁ、と笑う船長。

 どっこい、こちらとしてはそれどころではない。

 ……いや、モチベーション維持のための道連れ扱いについてはどうでもいい。

 問題なのは、このサンマみたいなのに以前から挑んでいたっぽい部分の方だ。

 

 

「……そういえば、前にサンタさんの影響云々とか言ってたっけか……」

「よく覚えてたね。そう、このサンマもその類い」

 

 

 ……マジに異世界生物だったんかいこいつ。

 キラリと光るサンマを眺めながら、そういえば他所の世界の生き物が云々……みたいな話をしていたこともあったなぁ、と思い出した俺なのであった。

 ……最近は他所の世界にお邪魔することが多かったけど、他所から来てるやつもいたんだったな……ははは……。

 

 

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