うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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うにー!くりー!いのししー!なべー!!

「それにしてもトリュフかー。……日本でも取れる、みたいな話は聞いたことあるけど、実際にこうしてお目にかかるのは初めてだな……」

「実際のところは、普通に都会でもそこが攪乱地(かくらんち)であり、かつブナ科やマツ科の植物が生える場所なら取れるらしい、んだけどね」

 

 

 真っ二つに割られたトリュフを見ながら、ほへーと間抜けな声をあげる俺である。

 ……いや確かに、トリュフは日本でも取れる……みたいな話を俺も聞いたことはあるが、本当に取れるとは思っていなかったというか。

 ここまで連れてきてくれた猪も、どこか誇らしげである。

 

 

「……まぁ、それはそれでおかしいんだけどな」

「おっとROUTEさん、と言いますと?」

「確かに、豚がトリュフを探すのが得意ってのは間違いじゃねぇが、豚の場合見付けたらそのまま食べちまうことも多いらしい。況んや猪、余計に食い散らかす可能性の方が高いだろう、っつーか」

「なるほど……」

 

 

 ただ、この状況がおかしいと思う人もいるわけで。

 その代表とも言えるROUTEさんは、近くで御褒美代わりに渡された栗(イガ脱衣ver)を貪り食っている猪を、怪訝そうな目付きで眺めていた。

 

 なるほど、確かに豚がトリュフを見付けるのが得意、というのは間違いではないらしい。

 だが、単にトリュフを見付けて収穫する……ということを目的とするのならば、豚を使うより訓練された犬を使う方が確実であるのも確かな話。

 その理由は、基本的に豚を訓練するのが不可能──あくまで豚がトリュフを見付けられるのはその生態ゆえのものであり、だからこそ人に都合の良いように利用するのはそれなりの苦労がいる……言い換えると食べられる前に横から奪い取るしかないから、というところが大きいらしい。

 

 その事を念頭に置いて改めてこの猪?を確認してみよう。

 ……うん、トリュフには目もくれず、イガを取って貰った栗を貪ってますね……。

 

 いやまぁ、それそのものはそこまでおかしい話ではないのだ。

 さっきちょっと触れたように、トリュフを豚から確保するには横から奪い取るしかないわけだが、よもやいきなり豚の横から手を突っ込むわけにもいかない。

 そういう時には別のエサを用意し、豚がそれに夢中になっている間に取るのが基本なのだそうだ。

 

 また、豚がトリュフを食べる……と言っても、探している最中はエサだとは思っていないし、実際に食べるまでラグはある。

 仮に口にしてしまった豚達は、もうトリュフの味を覚えているので次からはトリュフ探しには使えないだろうが……逆を言うと、まだ食べてない豚達には他のエサによる誘引が効く、ということでもある。

 結局のところ、この辺りの話は豚がなんでも食べる雑食性であり、そんな生き物に食べ物を探させるという行為自体に無理がある……というところから生じる問題だ、というわけなのだ。

 

 そこら辺を思うと、この猪?もトリュフの味を知らないから栗の方を優先している……という風に考えるのが自然だろう。

 ……自然だが、同時になんとも言えない違和感がある。

 野生動物であれば、基本的に食事にありつくためには相応の苦労が必要となるだろう。

 雑食性ならば食うものにはそう困らないだろうが、それでも本当になんでも食べられるというわけではない以上、食べられるモノを探すために相応の移動や負担を強いられることは容易に想像できる。

 

 であるならば、食糧調達には一種の()()()が伴うはずなのだ。

 それを逃せば次に何時食べられるかはわからないとか、多少の傷を負ってでもここで立ち向かわなければ、最終的に自身の死に繋がる……とか。

 

 いわば野生としての気迫、野生生物が人にとって脅威であることの理由……みたいなモノになるわけだが。

 

 

「うん、失われてるねぇ、野生」<ブヒー

「人間に気持ち良さそうに撫でられる野生なんているもんか……」

 

 

 ご覧の通り、件の猪?はこちらに腹を見せながら寝転んでいる始末。

 一応、飼育下にあり・かつ命の危機を感じたことがない生き物だったりすると、無防備に腹を見せることもあるらしいが……普通腹というのは重要器官が多くあり、攻撃されると普通に致命傷になるため余程安全な状況・相手でなければ見せることの一切ない部分。

 そうでなくとも『寝転がる』というのが咄嗟に移動するのに向かない体勢であることもあり、この猪?が野生で生きている生き物だとはどうにも思えない始末なのである。

 というか、見た目こそ猪?だがその生態はどっちかというと猫に近いというか。

 

 

「あーうん、いわゆる地域猫というやつだね。外に住んでいるからといって野生とは限らない……というか」

「その辺りはわりとややこしいから踏み込むのは止めようね」

 

 

 地域(のら)猫とノネコの違い、とか言われても普通の人にはわからんしね、仕方ないね。

 ここで重要なのは、この猪?が人馴れした姿が外で会う猫達を思わせる、という部分。

 

 いっそ何かのバグで猫が猪になった、と言われた方が納得できるような存在だということである。

 

 

「なるほど。君、麦粥でも食べた?」<ブヒ?

「いきなりギリシャ神話に話が飛ぶのはおかしくねぇかなぁ……」

 

 

 いやまぁ、豚にすると言われると頭を過るのは確かだけど。

 ……どっかのゲームで話題になったけど、別に麦粥だけが理由じゃないからねと微妙にツッコミを入れる俺に対し、当の猪?は興味無さげにあくびをしていたのだった。

 

 

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