はてさて、謎の猪?については一旦脇において、改めて当初の目的であるキノコ狩りに向かう俺達である。
……え?トリュフだってキノコなんだから、ある意味目的は果たしているんじゃないのかって?
確かにあれもキノコだけど、なんというかこう色々とイメージが違うというか。
「毒キノコを前に『これは食べられる』『いや食べられないよ』とやり取りするのが楽しい、ということだね?」
「いや、そんな倒錯的な楽しみ方は求めてないかな……」
「あれー?」
横でMODさんが世迷い言を垂れ流しているがスルー。
流石にトリュフだけ持って帰ってキノコパーティ、みたいなことをするのは無理があるだろう。
そういう意味でも、なるたけ普通のキノコが欲しいわけで。
できればこう、マイタケとか椎茸とかそういう王道をゲットしたいのだが……。
「確かにどっちも秋が旬。でもマイタケはちょっと難しいかも」
「そりゃまた、なんでさ?」
「取れる場所じゃない。天然のマイタケが生えてるのは東北より北の方」
「……なるほど」<ブヒー?
そうして素人丸出しの発言をしていると、横からTASさんの訂正文が飛んできた。
……ふむ、キノコなんて何処にでも生えてるようなイメージがあったが、彼らも生物ではあるのだから適した生息地があるのは当たり前と言えば当たり前か。
それと付いてきている猪?よ、なんかこう『マイタケ?欲しいんなら案内しようかー?』みたいな鳴き声をあげるんじゃない。
そういうの厄介事の種なんだから、あんまり踏みたくはないんだよ俺は。
そう告げると猪?は残念そうな動きで定位置(※俺の後ろ)に戻ったのだった。
「……さっきから思ってたのだけれど、君もしかしてこの子と意志疎通とかしてないかい?」
「ん?……んー、疎通ってほどじゃないというか、なんとなくそんな事言ってそうだなーって感じるだけというか。合ってるかはわからんぞ?何せ野生動物相手だし」<ブヒー
「ほら、こいつも『そうだぞー』って言ってる」
「……ツッコミ処しかないんだけど、どこからツッコめばいいんだいこれは?」
なお、そんな俺と猪?のやり取りを見て、MODさんが心底不思議そうに首を傾げていたが……単なるTASさんの感情把握の応用である、大したことじゃあない。
「おっと発見。TASさん、これはー?」
「ん、それはニガクリタケ。ニガって付いてることから分かる通り、クリタケの近縁種」
「ほほう。ニガって付いてるってことは苦いの?」
「苦いどころか猛毒。普通に死亡例もあるヤバいやつ」
「うへぁ」
「因みにだけど、ニガの付いてない普通のクリタケは食用とされるけど、実は毒を持っていることが判明した」
「え」
「まぁ、キノコには微量ながら毒を持つ種類、ってのは結構あるからね。ナラタケなんかも美味しいとされるけど、微弱ながら毒を持っていることが知られているしね」
「……キノコって怖いんだな」
「ついでに豆知識。ニガクリタケには更に近縁種としてニガクリタケモドキっていうのがいるんだけど、こっちは毒については無いとされていて、味はちょっと落ちるけど苦くもないんだって」
「……なにそのトゲナシトゲアリトゲトゲみたいなややこしい名前」<ブヒー
はてさて、元気にキノコ狩りを続ける俺達だが、これが中々。
派手なキノコより地味なキノコの方が危険度が高い、みたいな話はよく言われることもあって知っていた俺だが、だからと言ってその知識が活かせるかと言われるとそれもまた微妙な話。
まず、日本で見付けられる範囲での派手なキノコ、というものがそう多くない。
食用かつ珍味・なんなら健康にも良いとされるキノコ、ヤマブシタケは見た目が山伏の服に付いている飾りによく似ているからその名前が付いた、形態が派手なタイプのキノコだが……幻のキノコ、などと呼ばれることもあることからわかるように、滅多に見付けられたモノではない。
見付けやすさの点では、見た目がド派手な赤色をしているタマゴタケなんかがおすすめだが……全くの素人だとその語感から、『ド派手で毒がある』タイプのキノコであるベニテングタケと間違えることもありえるだろう。
こっちは慣れれば間違えることは全くなくなるそうだが、ともあれ見た目がド派手なので慣れるまでは忌避感が凄いかもしれない。
共に同じテングタケ科に属するにも関わらず、片や食用片や猛毒……というのも、キノコに詳しくないと不気味に思えるかもしれないし。
そして、反対に地味なキノコは云々の方だが……思い返して貰えばわかると思うのだが、そもそも俺達が普段食べてるキノコは大抵地味である。
見た目が食欲を減衰したりすることもあり、派手なモノは例え食用であっても好まれない……みたいな部分もあるのだろうが、それを踏まえずとも地味なキノコの方が美味しそうに見えるものなのだ。
さっきのニガクリタケなんかも、見た目は地味でかつ近縁種は食用であることもあり、間違って手に取ってしまう可能性は十分にあるだろう。
そんなわけで、基本的には当初の予定通りにTASさんやROUTEさんに聞きながら、食べられるキノコを選り分けて行くことになる俺なのであった。
「おーい、これとかどうかな?」
「……いや、寧ろどこから持ってきたのそれ。近付くだけでもヤバいはずなんだけど」
「おやそうなのかい?確かになんかビビっと来たから、相手に擬態して取りに行く必要性はあったけど」
「いやいつの間にスペック再現するようになったんだテメェ!?全身カエンタケじゃねぇか近寄……危ねぇ!?」
「やだなぁ、前にも言ったじゃないか。特殊な形態の相手なら身体的特徴も同じになるって」
「それ確か無機物相手の話だったろうが!?」
なお、MODさんに関しては連れてくるんじゃなかった、とちょっとだけ後悔しそうになったことをここに記す。
……お供にTASさん居なかったら、ここで全滅してたんだが?(憤怒)