はてさて、新たなメンバー(?)が加わって早一週間。
その間は特に問題らしき問題が起きることもなく、至って平和に時間が過ぎて行ったわけなのだけれど……。
「きっかり一週間、それこそがモラトリアムであったと言わんばかりの状況だなぁ」
「現実逃避してる場合か、さっさと腕を動かせ」
「へーい……」
まぁ、TASさんが居るのに一週間も平和だったのが寧ろおかしかった、みたいな?
……そういうわけで、これまた突然に問題が俺達を襲ったというわけなのである。
では今回、一体どんな問題に襲われたのかというと……まぁうん、実際に見る方が早いというか?
「お兄さんお兄さん、芋は何本食べる?」
「片付け終わった後の事を今から話すんじゃありません。……っていうか、こんなに落ち葉だらけだとそこらに延焼しそうだから焚き火は禁止です」
「えー」
「そもそもこの辺りでは、許可なく焚き火をするのは違法では……?」
楽しそうにさつまいもを抱えたTASさんには悪いのだが、そういうのは今回厳禁である。……いや、芋の種類が悪いとかって話ではなくてね?ジャガイモならええやろって話でもないからそのバターと醤油はしまいなさい。
……うん、今の会話でわかったと思うが、今回の異変は大量の落ち葉の山、である。
紅葉を迎えた葉っぱが辺り一面見渡す限りを埋め尽くしている……というか。
真っ白な雪の代わりに色とりどりの葉っぱがそこらに散乱している……というか。
まぁともかく、葉っぱがいっぱい落ちていることに間違いはない。
とはいえ、それだけならばそこまで……そこまで?問題ではない。
確かに進行方向が葉っぱに埋め尽くされていて進むのに難儀はするものの、言い換えれば難儀するだけ。
この前のサンマみたいにこっちをスパスパ切り裂いてくることとも、はたまた赤トンボ達みたいに小動物が危険な目に遭っているというわけでもない。
単純に交通の邪魔、というだけの話にしか見えない、ある意味では小規模な問題のように思えてくるはずだ。
……まぁ勿論、そんなわけはないのだが。
「実際、これで焚き火なんかした日には完全に大火事だな」
「いやホント。まさか街一面に降り積もるとはねぇ」
「というか何の木の葉っぱなんだこれ、どっから持ってきたし」
「この木何の木?」
「葉の様子からすると桜でしょうかね」
「……なるほど」
はい。……いやはいじゃないが?
ともあれご静聴の通り、この葉っぱの山はうちの近所だけの話ではなく、なんとこの街全域の話なのである。
いつぞやかの街一つ雪に沈んだあの時に近い感じというか。
そりゃまぁ、こんな状況で焚き火などできようはずもない。
例え周囲から離して始めたとしても、たまたま散った火花が大惨事を引き起こす可能性は否定できない。
……いやまぁ、自然の落ち葉ならそう簡単に燃え広がらない気もするのだが、これに関しては異常発生の一環だろうからなぁ……。
っていうか、街一つ埋まるほどの桜の葉っぱとか、どっから持ってきたんだこれ、というか。
あれか?ワープゲートでも通ってやって来たのか?
「ワープゲート……?」
「あ、その顔は信じてないなROUTEさん。残念ながらワープゲートに関しては既にTASさんが実用化済みなんだよっ」
「だとするとそいつが今回の犯人、ってことにならねぇか……?」
「ノー。お兄さんノー。私は何もやってない。私は悪くない」
胡散臭そうにこちらに問い返してくるROUTEさんだが、発見者がTASさんであると告げると豹変(?)。
じゃあ犯人はTASさんでは?……という至極単純な式をこちらに披露してくれたのだった。
……まぁ確かに、彼女が一番怪しいのは間違いない。
なので、一応念押しも踏まえてTASさんに詰め寄ったところ、彼女からは「私はやってない」といういまいち信憑性に欠ける言葉が返ってきたのだった。
「しまった、最近お兄さんの好感度稼ぎをサボったツケが回ってきた」
「寧ろそんなことしてたんですの貴方……」
「正確には好感度稼ぎと言うよりは、お兄さんと遊ばなかったツケ」
「そんなことしてましたの貴方様」
「おっとおかしい、なんで俺が不審者を見るような視線を向けられているのだろう?」
ええい、これだから歳下の女子は理不尽なのだ!
……仕方なくすごすごと引き下がる俺である。少女は(色んな意味で)無敵だからね、仕方ないね。
気を取り直して話を戻すと。
確かに、被害規模的にTASさんの関与が疑われるものの、疑わしきは罰せずが法の基本。
となれば証拠不十分な彼女は不起訴になるのが当たり前、これに関しては『待った』を掛けても無意味という寸法である。
「……え、なんでそこで私を見てくるのさ?」
「いや、CHEATちゃんなら証拠を捏造するのも簡単なんじゃないかなーって」
「そもそも法廷バトルから離れろよ」
しかしそれで引き下がっては騎士の名折れ(?)、ならば盤外戦術で勝ちをもぎ取るしかないが……伸ばした手にROUTEさんが手渡してくるのは竹箒。
……冒頭で『口を動かす暇があるなら手を動かせ』って言ってましたね、はい。
そんなわけで、背中に鬼が幻視されるような表情のROUTEさんを背に、俺達は黙々と掃き掃除を続けたのでしたとさ。