うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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本と言えば『大丈夫?』(詠唱略)

「読書の秋。今日は読書の日」

「はいそのノートは読書とは言わないから没収ねー」

「あー」

 

 

 かえしてー、とばかりに飛び掛かってくるTASさんをあしらいつつ、件のノートを彼女の届かない位置にしまい込む俺である。

 ……え?単純に届かない位置だと普通に取られないかって?

 そもそもこのやり取り自体、単なるプロレスみたいなものだから問題ナイナイ。

 

 

「……えーと?」

「そもそもあのノートは語り出しの切っ掛けとして持ち出しただけで、今回の主題ではないということですわ」

「ええ……?」

 

 

 今回の同行者──CHEATちゃんとAUTOさんが何やら話しているが気にしてはいけない。

 

 ともかく、今回は読書の秋……という主題の元、あれこれやっていこうと言う話である。

 いわばちょっとしたブレイクタイム、一休み一休みというやつだ。

 

 

「最近は大量発生ばっかりで疲れが溜まりに溜まってたからね。解消の為には他のことしないと」

「それで図書館にやってきた、と。……他の方々がいらっしゃらないのは?」

「みんな他の用事があるって」

(逃げましたわね……)

 

 

 天を仰ぐAUTOさんが何を考えているのかはわからないが……多分久しぶりにこのメンバーだけなので感極まってるのだろう。そういうことにしておこう。

 

 ……ってわけで、近くの図書館にやってきた俺達である。

 館内の人の入りは疎らであり、物音もほとんど聞こえてこない。

 なので、ここからは小声・もしくは念話推奨である。

 

 

(念話と言うと……確かDMさんの補助が必要だったのでは……?)

(私が中継器の代わり)

(……さらっとそういうことするの止めませんか?)

 

 

 ジトッ、としたAUTOさんの視線を受けたTASさんだが素知らぬ顔。

 そのままピューッと小走りに駆けていった辺り、本人的には読書の気分でいっぱいらしい。

 ……とはいえ、図書館の中で走るのは良くないので、俺達は顔を見合わせて小さく苦笑を浮かべたあと、彼女の背を追って歩きだしたのだった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「…………」<モクモク

(……驚異的な集中力ですわね)<ヒソヒソ

(誰も声をかけられるような状況じゃないよね)<ヒソヒソ

(そもそも読んでるものと読み方がなぁ……)<ヒソヒソ

 

 

 しばらく図書館内を歩き回った俺達は、最終的に机に本を広げて読み耽るTASさんの姿を見付けることとなったわけなのだけれど。

 その姿とか読んでるものとか、色々ツッコミ処が多くてちょっと近寄れずにいたのだった。

 

 いやだって、ねぇ?

 机の上いっぱいに本を広げているうえジャンルはバラバラ、かつそれらを黙々とめくり続けていることから速読中なのは確実。

 端から見ると単に本をめくっている……言い方を変えると遊んでいるようにも思えるが、その実他の客に言われて注意に来たのだろう司書さんは、TASさんに話しかけた結果綺麗に追い返された……もとい言い負かされたみたいだし。

 多分、声を掛けた結果『ちゃんと読んでる』と返ってきたうえ、試しに本の内容を確認したら普通に答えられてしまったのだろう。

 恐らくはページ数と行数を指定したうえでそこに書かれている文章を諳じてみせた、とかやったのだと思われる。

 

 で、件の読んでいるジャンルバラバラの本だが、そのタイトルもそれぞれ『任じられた破滅~かの部隊は何を見たのか~(歴史系)』『意外なことはない数学Ⅲ(数学系)』『コランダム・フリーズ(小説系)』『一から始める()異世界構築()~君にもできる世界構想~(トゥ系)』『ドイツ料理・3(上)(料理系)』……みたいな感じでてんでバラバラである。

 ……何かを察したとしても気にしてはいけない。

 

 ともかく、ひたすら読書を進めるTASさんに声を掛けるのは憚られるため、俺達は顔を見合わせたあとそれぞれ読みたいものを探しに解散することとなったのだった。

 で、数分後。

 

 

「……なにがあったし」

「あ、お兄さん。ちょっとミスっちゃって」

 

 

 てへ、とばかりに舌を出すTASさんである。

 ……珍しいことが多過ぎてこっちの脳がフリーズする姿、というか。

 

 まず失敗した、と臆面もなく言うこともそうだし、なんならテヘペロなんてわかりやすい感情表現を彼女がする、というのも中々に理解不能である。

 ついでに言うなら周辺が白い煙で包まれているのもあれだろう。

 ……何かが燃えた時のモノと言うよりは、水蒸気のような人体に無害なものが視界を塞いでいる、ということになるのだろうが……こんなあからさまに失敗した、とわかる状態を周囲に晒す彼女、というのも珍しいを通り越して奇抜、というか。

 

 つまり……この状況は……。

 

 

「……あー、つかぬことを聞くけど。……もしかして、今の君ってばTASさんじゃなかったり?」

「曖昧な尋ね方だねっ。でもうん……ミスって他所の私と入れ換わった、みたいな感じなのは正解だよっ」

「やっぱりー」

 

 

 はぁ、と額に手をおいて天井を仰ぐ俺である。

 ……まぁうん、つまりはこういうことだ。今のTASさんは()()()()()実行の際にミスって変なことになった状態。

 目の前の彼女の言を借りるのなら、他所の世界の彼女と入れ換わったということになるのだった。

 ……まさかの変化球!

 

 

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