うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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地上の流星、ただいま到着

「家で待ってて、などと言い出すものですから、一体なにがあるのかと思っていれば……」

「まさかベランダから飛んでくるとは思わねーって!!」

「俺だって、こんなことになるとは思わなかったよ……」

 

 

 まさかあの崖が、高度的にはうちの部屋と同じ高さだったとは……。

 

 あらかじめ部屋の鍵を渡してあるために、わりと自由に入り浸ることのできる二人はというと、どうやら居間でお茶を飲んでゆっくりしていたらしく。

 そうして気が緩んでいるところ、突然窓ガラスをぶち破ってベランダから襲来したTASさん(と、俺)の姿に、特にCHEATちゃんが盛大にビビり散らかしていたのであった。……AUTOさん?いい加減TASさんの突拍子のない行動には慣れたのか、遠い目をするだけで済ませてたよ()

 

 まぁともかく。

 いつの間にかどこぞの世界を救った勇者様になっていたらしいTASさんは、先ほどの動きが完璧に成功したことについて、一人でうんうんと頷いていたのだった。

 

 

「……そもそもの話、空中をスライド爆走するというのは、もう色々とごまかしが効かないのでは?」

「言われてみればそうだな。絶対SNSとかで話題になってるだろアレ?」

「寧ろ速度が出過ぎてて、人間が飛んでるなんて風には思われてなかったんだよなぁ……」

「そんな馬鹿な……ってうわ!?動画があるけどなんにもわかんねぇ!?」

 

 

 なお、白昼堂々の犯行だったため、これは話題になってるやろな……的なツッコミを受けたが。

 あくまで『真昼の流星』って感じでニュースになっているだけで、誰もそれが『人が高速で後ろ向きに吹っ飛んでいる図』だとは思わなかった、なんてオチが付くのだった。

 ……挙げられていた動画、コマ送りしてもなーんにもわかんねーんでやんの。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 遂に調子を取り戻したTASさん、水を得た魚の如くはっちゃけるの巻。……まさしく地獄のカーニバルの始まり、である。

 

 

「三面同時対戦。カモーン」

「なんという拙い挑発でしょうか」

「でも乗るんだよなぁ……」

「売られた喧嘩は買わなきゃだよなぁ!?」

「なんでお二人ともキレ気味ですの……?」

 

 

 手始めに、ジャンルの違う三つのゲームを、三人同時に相手をしてやる……みたいなことを言い出したものだから、呆れているAUTOさんはともかく、俺とCHEATちゃんは血管ビキビキさせながら挑発にホイホイ乗っかることになり。

 

 

うーわ、うーわ、うーわうーわ……

「ばたんきゅー……」

「なんだかいつも以上に勝ち筋が見えないのですけれどー!?……あっちょっまっ、甲羅はやめっ、あああああ……」

 

 

 上から順に、格ゲー()パズル(CHEATちゃん)レースゲーム(AUTOさん)で挑んだ俺達は、ものの見事に無様な屍を晒すことになるのだった。……以前より強くなってなーい?

 

 

「研鑽と短縮は当たり前。今宵の私は今までとはひと味違う」

「ひと味どころかかなり違くね……?」

 

 

 確かに、TASさんと言えば常勝不敗・負け知らずの勝負師である。

 だがしかし、以前の彼女にはほんのりと甘さがあった。それは操作の癖であったり、はたまた視点移動の拙さであったり……ともかく、人間らしさとでも言うべきものがあったように思える。

 

 だが、今の彼女はどうか?

 その操作テクニックは洗練され、常に三手先を見据えたかのような試合運びは他の追随を許さず、隙などと言うものは垣間見ることすらできない。

 

 ……そう、端的に言うと追記数が明らかに減っている……!!

 

 

「……いえ、わかりやすい例えだと言えば確かにそうなのですけれど、もっとこう……なかったんですの?」

「いやだって、この感覚を言語化するとまさにこれじゃん。『今までTASさんの固有能力で総当たりごり押ししてたのが、今の彼女はそれを踏まえた上でスマートになっている』……。この文字数多い感想を簡単に纏めるのなら、やっぱり『追記が減った』になるじゃん!」

「私らにしかわからねー例え方……」

 

 

 なお、この発言には他二人から微妙な反応が返ってくるのだった。……でもほら、わかりやすく言うとこうじゃん?

 

 まぁともかく。

 以前の彼女がTAS初心者なら、少なく見積もってもTAS中級者以上になっている、というのは確かな話。

 まさに『男子、三日会わざれば刮目して見よ』ならぬ、『TAS、三日見なければ刮目して見よ』である。

 

 

「更新が盛んなものだったら、三日も経ってたら遅すぎ」

「そもそもその場合、一日経たないうちに更新とかされてたりするからなぁ……」

「お二人とも、なんの話をしていらっしゃるのです……」

 

 

 ええと、一部のTAS界隈で起きた悲しい事件、かな……。

 

 話を戻して。

 一時の不調を越えて、彼女が一つ成長した、ということは間違いない。

 そしてその原因がなにか、と考えた時。──それは、彼女達にあると言ってしまっても、過言ではないだろう。

 

 

「ルールに沿った行動であれば、完璧にこなして見せるAUTOさんと。ルールの中という制約こそあれど、ある程度の無茶を許容するCHEATちゃん。二人の強敵から学び取り、今TASさんはサイボーグ(※比喩です)TASさんに進化したのだ……!」

「いえーい。ぴーすぴーす」

「はい……?」

 

 

 そう、二人の能力を吸収したのだ、TASさんは!

 ……こらそこAUTOさん、なに言ってるのこの人、みたいな顔をしない。

 

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