「おお、お兄さんってばお料理も得意なんだねっ。こっちだと私が全般的に受け持ってるから新鮮かなっ」
「TASさんの料理かー。……素面ではちょっと尻込みするかも」
「それは流石に怒られた方がいいよっ」
「おおっと」
こっちのことに興味があるんだっ、と言いながら俺の後ろを付いてくるTAS´さん。
そうして俺の行動を見る度、彼女は驚いたり笑ったり悲しんだりと、その表情をコロコロと変えていく。
……流石に慣れたものの、こうも表情豊かだと後々TASさんが戻ってきた時暫く違和感に悩まされそうで困るところである。
「んー、そんなにこっちの私って表情動かないの?」
「変わりに君のところに行ってるTASさんがクールビューティーと勘違いされる程度には」
「そ、それはなんとも……」
「なんとも?」
「羨ましいねっ!私はもうこういうキャラだってことが知れ渡ってるから、向こうのお兄さんを驚かせたりするのは難しいからっ」
「なるほど……」
うーむ、話を聞く限り向こうの俺ってちょっとアレなのではないだろうか?
だって料理とか掃除とか洗濯とか、全部TAS´さんに任せてるみたいだからなー。
「勘違いしてるみたいだから訂正しておくけど、向こうのお兄さんは大企業の社長さんだよっ」
「えっ」
「寧ろ私が養われてる感じ?」
「なんでそんなことに……」
「んー、本当はお兄さんを堕落させるために遣わされた存在だから?」
「え゛っ」
「あははっ、うそうそー」
いや、嘘に聞こえないんですがそれは。
唐突に飛んできた問題発言に、思わず腕を組んで唸る羽目になる俺である。
……ツッコミ処は幾つかあるが、一番大きいのは向こうの俺がハイスペック過ぎることだろう。
俺と同一人物だと言われてもうっそだー、と返したくなる程度には互いの状態に差があるというか。
いやまぁ、こうしてTAS´さんが俺を見て『お兄さん』と呼ぶ辺り、見た目とかに大きな違いはないのだろうけども。
「それは私達への対応の差から推測した、ということですの?」
「まぁ、一応は。……いや、身近に居ないって言ってたから微妙ではあるけど」
見たことがない、とは言っていたが存在を知らないわけでは無さそうだったので、恐らく風貌に関する噂くらいは知ってたんじゃないかなーというか。
なので、最初に会った二人に対しての反応と、俺に対しての反応に差が出た……みたいな。
「んー、そんなに違ったかな?」
「真っ先に俺に対して『お兄さん』って声掛けて来ただろ。面識の無い相手よりある相手を優先した、って風に見えたんだよ」
「あーなるほど、それはちょっと迂闊だったかも」
特徴まみれの不思議ガールズ相手ならともかく、俺みたいなモブキャラが視界に止まる、などということはそうそうないだろう。
……そこから逆説的に、パッと見の姿にそう大きな差はないのだろう、と予測できるというわけだ。
というような推理を披露したところ、TAS´さんは驚いたように拍手を続けていたのだった。
「ごちそうさまっ、お兄さんお料理上手だねっ」
「ハイお粗末様。デザートも食べるか?今日は杏仁豆腐だけど」
「中々渋いチョイスだねっ!お言葉に甘えて美味しく頂くよっ」
「はい召し上がれー」
はてさて、夕食は滞りなく進んだ。
TAS´さん自身も料理が得意ということもあり、準備も後片付けもサクッと終わったわけだが……うーむ、ここまで楽だとちょっと名残惜しくもあるかもしれない。
「んー?名残惜しいって言うのは、私とのお別れについてってことでいいのかなっ?」
「まぁ、そうなるな。なんとなくだけど、この後すぐ戻るんだろ?お前さん」
「あら、そうなんですの?」
そんな俺の様子を目敏く察したTAS´さんが声を掛けてくる。
……まぁ、こっちも彼女の様子を理解していたのでおあいこさま、みたいなものだが。
確かに調理等スムーズに進んだものの、そうしててきぱき動く中で時々何かを思うようにちょっとだけ動作が緩慢だったタイミングがあったし。
「んーよく気付くねっ。……なんというか、一緒にお料理してたらちょっとホームシックになっちゃったのさっ」
「あーうん、わかるわかる。俺もTASさんのことを考えたりしてたし」
(……のろけ話、というわけではないのですよね。この方の場合)
隣でてきぱき動く彼女を見ていると、普段こっちが家事をしている際は居間にいることの多いTASさんのことを思い出してしまった、というか。
多分、向こうも似たようなことを考えていたのだと思われる。
なので、なんとなく寂しいという今の彼女の気持ちもなんとなく理解できてしまうのだ。
なので、俺は杏仁豆腐を食べる彼女の頭を一撫でし。
「まっ、向こうでのお土産話にでもしてくれよ、こっちのことはさ」
「お兄さんも、戻ってきた
そんな、他愛の無い会話を別れの挨拶としたのだった。
そのまま、彼女はニカッと笑いながら目蓋を閉じ───、
「……大変お兄さん」
「おう、何が大変なんだ?」
「…………表情筋の動かしすぎで顔が痛い……」
「お、おぅ」
再びそれを開いた時、何時もの彼女に戻っていることを確認して、ちょっとだけ寂しく思ったのだった。
まぁ、すぐに涙目(※当社比)になったTASさんの対応に追われることになったのだけれども。
○CHEATちゃん
…初期三人娘最後の一人にして最年少、かつ実は一番常識人。
使用能力がチートの癖して妙に常識的なのは、下手に自身が弾けてしまうとそれこそ誰にも止められないと悟っているがゆえか。
……多分CHEATちゃんそこまで考えてないよ。
見た目は
そうでない小声モードの時には前髪で表情を隠した典型的陰キャ系の見た目になる。
セ○ハードは好きでも嫌いでもない。レトロハードはわりと好き。