はてさて、唐突にTASさんが他所の世界の自分と入れ替わる……などという事件が起きてから早三日。
当時の喧騒は最早影も形もなく、再びの安寧に俺達は微睡んでいた……もとい、実際に
「でーかーけーるーよー」
「ぐえー!?」
「おお、見事な潰れた蛙のような声」
居間で寝転んでいたダミ子さんにフライングボディプレスを敢行したTASさんにより、その静寂は簡単に破られてしまうこととなったのであった。
まぁ、こういう場所では平穏は破られるためにあるからね、仕方ないね。
「なんでもいいですけどぉ、なんで私の方に飛び込んでくるんですかぁ……別にお兄さんの方に飛び込んでも良かったんじゃないんですかぁ……」
「ダミ子は甘い。お兄さんにそんなことしたら向こう三日は寝込む」
「自慢じゃないが体は華奢だぜ」
「本当に自慢じゃないですねぇ!?」
寧ろダミ子さんが頑丈過ぎるという。なんだ、なんで体を変形させられてけろっとしてるのさ君?
……なんて風にツッコミを返せば、自身のことを棚に置いていたことに気が付いた彼女は下手くそな口笛でごまかし始めたのだった。
「はぁ、まぁなんでもいいですぅ。それでぇ?出掛けると言いますとぉ、どこにぃ?」
「もちろん、冬物を買いに行く」
「……?すいません、ちょっと耳にモノでも詰まったみたいですぅ。聞こえてくるはずのない相手からぁ、予想外過ぎる言葉が飛んできた気が
「流石に失礼。そもそも毎日同じ服装だったことも無いのに」
「いやまぁ、確かにそのダミ子さんの台詞は大分デリカシーないけど……だからって両耳に鉛筆ぶち込むのはやり過ぎでは……?」
主に命が危ない的な意味で。
……いやまぁ、今までのダミ子さんのあれこれを思えば、これくらいの攻撃ならわりとノーダメもしくは小ダメだろう、ってのもわからんでもないけども。
そんなわけで、失礼な暴言に対し大袈裟な報復が返ってきて絶叫しているダミ子さんは一先ず脇に置きつつ、改めてTASさんに確認し直す俺である。
「ええとつまり、今日のお出掛けは服屋に……ってことであってる?」
「そう。実に三百話くらいぶりの登場」<フンスフンス
「……君が何を言ってるのかはわからないけど、唐突に白球を追い掛けた記憶が蘇ってきたのは確かだよ」
「お兄さんは何を言ってるんですぅ?頭がおかしくなったんですかぁ?」
全てが野球で決まる世界……三者凡退……うっ、頭が!
……とまぁ、記憶の中に焼き付く一番鮮烈な服屋での思い出(?)に遠い目をしながら、唐突に人の頭がおかしくなったと疑い始める
「そういえばあの時はまだ四人だった……」<ホギャー!?ヤメテクダサイヤメテクダサイアヤマリマスカラァ!?
「そうだねぇ、あの時はみんなまだ大人しかったねぇ。……大人しかったかな?」<ソコハソンナフウニハマガラナッ,アイデデデデッ!?
「自分で言って自分を疑うの良くないと思う」<フギギギギ,マママケルモンデスカァ!!ワタシハマチガッテナイデスゥ……!!
「仕方ないだろ、君らどのタイミングでも規模が違うだけでほとんど変わってないんだし」<フギギギ……フギャッ!?
「むぅ、昔の私とは違うもん。今の私の方が速いもん」<ア,オチタ
しぶといダミ子だった……。
いや違う、君の速さについては疑ってないよ、だこの場合の返答は。
「んじゃま、出掛ける準備するからダミ子さんはよろしく」
「まかされたー」
流石にこの格好(家の中なのでかなりラフな格好)で外に出るわけにはいかないからね。
……というわけで、自室に着替えに向かうのでしたとさ。
「……気が付いたらおもちゃにされてた件についてぇ」
「なんと人聞きの悪い。さっきの俺以上に服に無頓着なダミ子さんに似合う服を探してるだけだと言うのに」
「だからって、TASさんが私を操り人形みたいにしながら服を交換してるのはおかしいと思うんですよぅ!?」
「……?ダミ子が気絶したのが悪い」
「気絶した理由貴方達なんですけどぉ!?」
はてさて、服屋にやってきた俺達がまず始めにやったことというと、それは飾り気の無さすぎるダミ子さんをコーディネートすること……なのであった。
TASさんにあれこれ言ってた彼女だが、実のところ外に出ることがほとんど無いためか他人を笑っていられるような状態ではまっったく無かったり。
一応、
まぁ、流石にその状態が不健全であるのは猿でもわかる。
……ってわけで、真っ先にダミ子さんの服のコーディネートに話が向かうのは当たり前の話だったのだ。
間違ってもTASさんが『最近はコーディネートを競うモノも多い』……的なことを言い出したわけではない。無いったら無い。
「それもうほとんど答えを言ってるようなものじゃないですかぁ!?つまりあれですねぇ!?奇抜な格好でも審査員……この場合視聴者?フォロワー?からの評価が高ければ問題ない……みたいなことになるやつですよねぇ!?」
「はっはっはっ。……その辺はTASさん本人から聞いてもろて」
「そこで目を逸らさないでくださいよぅ!?」
いやまぁ、確かに点数最優先な思考だと、評価点の稼ぎ方の法則如何によっては世にも恐ろしいものが降臨する可能性もなくはないが……ほら、そこは多分上手いこと調整してくれるよ、多分。
流石に素っ裸に剥いたあと適切なコマンドを入力すると点数が高くなる、みたいなことにはならないはず(※コンプライアンス的に)だから安心しろって。
……と宥めたところ、「TASさん相手に倫理云々とか一番ストッパーにならないやつじゃないですかぁ!?」と悲鳴混じりのツッコミが返ってきたのでした。
──うん、一理どころか百理ある。