うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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運任せは人任せ、命の保証はない()

 さて、開始早々ボドゲしてる場合じゃねぇ、みたいなテンションになったものの、そこからは特にトラブルらしいトラブルが起きることもなくゲームは進んでいる。

 途中蜂に追いかけ回されたり自動車に撥ね飛ばされたりしたが、それはあくまでボドゲにおけるイベントマス……想定の範疇でしかないのでトラブルには含まれない。ないったらない。

 

 

「欺瞞にもほどがあるのでは……?」

「言ってくれるな、こうでも思わなきゃやってられんのだ……」

「なるほど……?」

 

 

 どんな大怪我を負ったとしても、次の瞬間にはゲーム内通貨と引き換えに治っているのだから、深刻に捉えすぎるのはよくないのだ。

 例え俺の止まるマスが悉くマイナスであれ、だ。

 ……言っててなんだけど俺の運悪すぎじゃね?

 もしかしてTASさんの操作とかCHEATちゃんの動きとかで俺の不運が固定されてるとか……?

 

 

「ソウカーオニイサンキヅイテシマッタカー(棒)」

「や、やっぱりな!道理でなんかやけに酷い目にあうと思ったよ!」

「オニイサンハホウチスルトイツノマニカニイトカニイタリスルカラネー(棒)」

「くっ、いつぞやかのレースゲーでの行動が根に持たれている……っ!!」

(……ええとCHEATさん?)

(なにー?)

(操作……してますの?)

(してないよーお兄さんはこれが素だよー)

(ですわよねぇ……)

 

 

 そんな俺のぼやきを耳聡く聞き付けていたのか、TASさんが悪そうな笑み(※当社比)でこちらを煽ってくる。

 ……確かに、以前のゲームでは漁夫の利を狙っていたが……だからってここまで対策をしてくるとは、許せん!

 

 まぁ、許せないと思ったからと言って勝てるわけないんですけどね、初見さん。

 ほら見ろよ、俺の資産はよく燃える……。

 

 心なしか優しげな眼差しを向けてくる他の面々に『同情するなら順位寄越せー!』と噛みつきつつ、俺は再びサイコロを放り投げるのだった。……あ、またマイナスマス……。

 

 

 

;-A-

 

 

 

ぐわーっ!!?

「お兄さんがまた事故った!!」

「これでまたゼロ円生活だ!!」

「何度目ですの振り出しに戻るの……」

 

 

 はてさて、TASさんからの干渉を彼女が認めたあと。

 およそ一時間ほど経過したわけなのだが、彼女からの干渉は留まることを知らず、俺は同じところをぐるぐる回り続けていたのだった。

 ……他のみんなもうゴールしてるんだけど、俺だけいつまでスタート地点の付近でぐるぐるしてればいいんです……?

 

 

「ソレハモチロンワタシノキガスムマデ、モシクハオニイサンガギブアップスルマデダヨー」

「ぐぬぬぬ……つまり必然的に俺が折れるしかない、ってことじゃないか……!」(※TASさんが干渉を止めるわけがない、的な意味で)

「ソウダネーオニイサンガオレルシカナイネー」(※そもそも私は何もしてないので端からお兄さんが折れるしかない的な意味で)

(……とんだ茶番じゃねぇか、これ?)

(しーっ、お兄さんってば自分の運が悪いってこと頑なに認めないから、こうしてTASがどうにかするしかないんだよ!)

(……()てる限り、そのルートに突入するの滅茶苦茶難しそうだが?)

(…………)

 

 

 流石にこうも長々とプレイを阻害され続けると、他の面々も飽きが来ているような感じになっている。

 

 視界の端ではCHEATちゃんとROUTEさんが何やら視線を向けあっているが……多分『これいつまで続くんだよ?』的なやり取りを行っているのだろう。

 非常に心苦しい話ではあるのだが……俺としてもこの邪知暴虐の(ともがら)を前にしては、一歩も引くことはできんのだ……!!

 

 つまりこの根比べ、文字通りどちらかが音を上げるまで終わらない我慢比べの意味も含まれているということで……、

 

 

「……なんだこのアラーム?」

「おおっとーこれはよくないですねー今日のゲームタイムは終了でーすえーい」

「ぬぉわー!?」

 

 

 緊張感溢れる空気の中、突如それを破壊するように響いたアラームの音。

 思わずなにこれ、と困惑を滲ませながら周囲を見渡していると、唐突に何かを思い出したように手を叩いたDMさんが声を上げる。

 それを合図にしたかのように、突然身体を引っ張られるような感覚に襲われた俺は、いつの間にかゲーム機の前に放り出されていたのだった。

 

 ……ええと、これは一体?

 

 

「体験型ゲームはいわゆるフルダイブ型のゲームと同じく長時間の連続使用は身体への悪影響が懸念されますのでこうして制限時間を設定していたのですそもそもそろそろ夕食の準備を始める時間ですので貴方は早々に準備をお願いします宜しいですね?!」

「え、あ、はい」

 

 

 首を捻る俺に対し、この状況を引き起こしたDMさんが矢継ぎ早に説明を投げ掛けてくる。

 ……ええと、雑に纏めると『さっさと夕食の準備しようぜ!』ってことでオーケー?……おかんですか貴方?

 

 なるほど、『ファ○コンばっかしてないで勉強しなさい』とか言ってくる母親と同じノリだったか。

 そこに健康被害への懸念まで重なれば、そりゃまぁ止められるのも宜なるかなである。

 

 ……ふっ、命拾いしたなTASさん、勝負はお預けだ!

 

 

「別に今日の夕食が美味しかったら私の負けでもいいよ」

「言ったな貴様!今日の夕食はハンバーグじゃー!」

「わーい。手伝うー」

 

 

 なお、TASさん本人は過ぎ去った勝負に興味は無いとばかりに、今日の夕食に夢中である。

 ……彼女の移り気はいつものことなので横に置くとして、ともあれ美味しい料理を作ることに異論はない。

 

 そんなわけで、手伝うなら手を洗ってからと言い含めてから、俺はDMさんとTASさんを引き連れてキッチンへと向かったのだった。

 

 

(……DM、ぐっじょぶ)

(あのまま放置すると夕食に遅れが出ていたでしょうから、ある意味必然的な対処だったと言っておきます)

(それでも、ぐっじょぶ)

(……ありがたく受け取っておきますね)

 

 

 ところで、なんでこの二人はサムズアップを交わしてるんだろうね?

 なんだろう、ハンバーグなのがそんなに嬉しいとか?

 ……うーむ、よくわからん。

 

 

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