うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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秋の火遊び()火事のもと()

「うーん……」

「おや、TASさんが唸り声を上げるとは珍しい。今日は何やってるんで?」

「カブが育たなくて困ってる」

「カブ?野菜かな……って()やないかーい」

「?そっちもやってる」

「わぁ無人島生活」

 

 

 いや、なんでデュアルカブ育生システムに手を出してるんですか貴方。

 

 ……なんてツッコミはほどほどに、改めて現在のTASさんの状況を説明すると。

 パソコンの前に陣取り、その膝の上には携帯ゲーム機がセットされている状態で、かつパソコンの画面にはなにがしかのグラフが、ゲーム機の画面にはデフォルメ体型のキャラクターが畑を耕している姿が写し出されていた。

 それぞれ、パソコンの方は株式の・ゲーム機の方は野菜のカブの方について、あれこれやっている最中ということになるらしい。

 

 

「にしても株式かぁ……TASさんならグラフを見てるだけで風を吹かせたりもできるはずだけど、何を手こずってるんで?」

十種纏めて上げようとしてる

流石にそれは無茶では?

 

 

 ただ、いつものTASさんなら株の操作()くらい手を出さずとも容易に行うはず。

 何を一体手こずっているのだろう……と疑問を口に出せば、流石のTASさんでも一筋縄ではいかなさそうなレギュに挑んでいた、というだけの話であることが明らかになったのだった。

 ……一種でも大概なのに、それを十種纏めて上げようとするのは無謀以外の何物でもないのではないだろうか?

 

 

「一応業種は全部別。同系統ばっかりだと談合とか疑われるから面倒」

「その場合の『面倒』って、どっちかというとTASさんに降り掛かるものじゃなくて、画面の向こうの会社側とかに降り掛かるやつだよね???」

「?当たり前のことを確認してどうしたの?」

「うーんTAS的開き直り……」

 

 

 いや、正確にはTAS的無知みたいな感じか。

 ……ともかく、同系統の銘柄が全部上がる、となれば業界全体で何かがあったと疑われるのも仕方のない話。

 その結果としてそれらの会社が酷いことになるのはこちらとしても望むモノではないため、一応業種の被らない株を選んで操作している……ということになるらしい。

 

 いやまぁ、そもそも操作してる・もしくはされているって時点で大事件なんだけどね?

 でも流石にTASさんが裏で糸を引いている……なんてことを気付ける人間の方が珍しいので問題はないというか。

 

 

「ぐわぁぁあっ、損益がぁーっ!?」

「……なんか今、ROUTEさんの悲鳴が聞こえたような?」

「気のせい。気のせいじゃなくても彼女が負けたのは私のせいではない」

「そっぽを向きながら言われても説得力がないんだが?」

 

 

 なお、タイミングよく遠くの部屋から悲鳴が聞こえた気がしたが……TASさん曰く偶然とのこと。

 君の言う偶然は必然の別名でしょ、とツッコミを入れようかと思ったが、その結果不機嫌になられても困るので細かい追求は避ける俺であった。

 

 

「とにかく、十種全部高水準に持ってくるのは中々に骨が折れる」

「だからその操作中の暇潰しにカブの方も育て始めた、と?」

「こっちは挙動が素直だからやりやすい。実入りもいいから片手間にやる分には満足度が高い」

「はぁ、なるほど」

 

 

 で、改めて今現在のTASさんの挙動についての話に戻ると。

 十種纏めて価値を上げるのは中々に時間が掛かるため、その間の暇潰しにゲームの方も起動した……というのが彼女の口から出た説明。

 株式よりは楽、と本人が述べた通り、ゲーム機内のカブはポンポン増えていき、そちらを売ったことで得られるゲーム内通貨もちゃりちゃりと音を立てながら増え続けているのだった。

 

 

「ぬわぁーっ!?市場崩壊と不作が合わさって借金ががががぁーっ!!?」

「……遠くからダミ子さんの悲鳴が聞こえた気がしたけど?」

「市場の流れを見切れない人間に明日はない……じゃなかった、私は無関係。知らない」

語るに落ちたり、というやつでは?

 

 

 なお、再びタイミングよくダミ子さんの悲鳴が遠くから聞こえてきたりしたが……所詮はゲームの中のこと、そこまで取り繕う気もないのか、単に気が抜けていたのかは不明だが、TASさんは微妙にボロを出していたのだった。

 無論、追求しすぎると拗ねるのでほどほどに触れるだけに留める俺なのだけれども。

 

 ……ともかく、カブ周りの話は危険がいっぱい。

 軽い気持ちで触れるとそれがなんであれ酷い火傷になる……みたいな教訓めいた言葉を心に刻み、件の二人には夕食のおかずを多めにしてあげよう、と決めた俺なのであった。

 

 

「お兄さん、私は?」

「今日のおかずの一つは()()()()()()だけど、それでもいいなら増やすよ?」

「……優しさだと思ったら傷口に塩を塗り込む行為だった件について」

 

 

 いやだなぁTASさん、物事ってのは痛い目を見ないと覚えない……みたいなこともあるから、その手伝いをしてあげてるだけだよ?

 寧ろ俺の優しさに咽び泣いて欲しいくらいだね、と言葉を返したところ、TASさんは珍しく微妙な顔をこちらに向けていたのだった。

 

 なお、夕食時に暴れる鬼が二人現れたが、早々に鎮圧されたのは言うまでもない。()

 

 

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