うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

38 / 728
自身を十全に使えるのなら、そこに届き得る

「ええと、要約致しますと……私達の操作の癖や動きなどを学習し、自身に反映なさった、と?」

「そう。お陰さまでちょっとの間不調だった」

「あ、不調の理由それだったんだ」

「ん。アップデートパッチ適用」

「……サイボーグネタ、気に入ったの?」

「ん」

 

 

 どうやら気に入ったらしい。よくわからん。

 

 ……まぁともかく。

 今のTASさんの強さは、今までにあった無駄をAUTOさんを真似ることで削ぎ落とし、バグを利用するのではなくCHEATさんの原理で引き寄せる、みたいなことをできるようになったから、ということになるらしい。

 そのやり方は確かに、アップデートパッチを入れたようなもの……なんて風に形容できなくもなく。

 

 結果として、彼女自身に『サイボーグTASさん』なんて新たな呼び名が生まれるきっかけとなったのだった。

 ……なんでも、とある動画でTASみたいなことを(当たり前に)する、とある人物に感銘を受けたのだとかなんだとか。

 

 

「本来コンピューターの補助を得て、初めてできるような技を当たり前のように使う人だった。──でもあれは、本質的には職人のそれ。私達にはわからない感覚を持っている、というだけのこと」

「なるほど?だから自分にもできるはずだ、と?」

「お陰さまで追記数(見るべき未来の数)も減った」

「その辺りの感覚は私達には共有できないので、よくわかりませんけど……」

「なんかすごいことになってんだろうなー、ってことはわかるぜー」

「CHEATちゃんのIQが突然低く……!?」

 

 

 指先で触れただけで、ナノレベルの違いを把握する職人……というものが、世の中には存在する。

 

 つまりはそういうこと。

 勘や長年の経験、感覚などの六感をフルに活用できるのであれば、人は決して機械に負けることのない力を発揮できる。

 ……先日の勇者めいた技も、元々はRTA──実際の人が開拓した分野である以上、極まった人達の性能というのは、中々馬鹿にできたものではない。

 

 そしてTASさんは、その粋に手を掛けたのだ──。

 ……まぁ雑に言ってしまうと、心技体のうち『技』と『体』が揃った、みたいな感じか。

 

 なお、それらの事実を前に正気度(SAN)チェックに失敗したらしいCHEATちゃんは、まるで株とか為替とかで失敗した人のような表情を晒していたのだった。……溶けてる?!

 

 

 

・∀・

 

 

 

「つまりこれからはレトロゲー以外にも手を出す、ということ」

「散々色々語っておいて、最後の結論が適当すぎやしませんこと???」

 

 

 TASさんのアップデートがどういう意味を持つのか。

 それは、『リアルにTASさんが居るのなら、それはRTAと変わらない』である。……え?最初の方に同じようなこと聞いた?

 まぁ要するに、CHEATちゃんの方にもあった問題点を、どうにか解決する目処が立った……という風に考えて貰えばいい。

 

 TASというのはその名の通り、ツール(tool)による補助を受けることを前提とするモノである。

 そしてその補助を受けるには、本来パソコンなどによって該当のゲームが、外部でエミュレーションできなければいけない。

 それが何故かと言えば、ちゃんとした公式の機械には、『ゲームをする機能』しか付いていないためである。

 あるものをあるままに楽しむための機能しか付いていない、という風にも言えるか。

 

 出されたものを出されたままに楽しんで貰う、というのが大体のゲームメーカーのスタンスであり、例えばMOD──いわゆる改造パッチのようなものは、サポートの面などから否定的にならざるを得ない、なんて会社も(特に日本では)多いわけで。

 ……まぁ、その辺りは色々ややこしいのでここでの言及は避けるが、ともあれその辺りの制約が薄い・もしくは制約を無視しやすいPCプラットホームでのゲームというのは、改造にしろチートにしろTASにしろ、色々やりたい放題な面がある、というのは間違いない。

 

 で、以前も言ったように、ゲーム機は新しくなればなるほど、エミュレーションやチートというものが難しくなっていく。

 パソコンと据え置きの両者で出るようなゲームも、内部的には違うプログラムだったりするため、パソコン版があるからと言って据え置き版も色々できる、というわけではなかったりする。

 

 ……そこら辺を総合すると、CHEATちゃんが手を出せない場所と、TASさんが手を出せない場所というのはほぼほぼ重なるのである。

 どちらも、公式の機械以外のモノを使う、という共通点があるがゆえに。

 

 

「だからこそRTAさんなんだよね。人力チート、とでも呼ぶべき?」

「確か……実在の人間なのにも関わらず、まるで機械のような正確性を持っていたため、誤ってチートによるアカウントの凍結処理を受けた、なんて人が居たという話がありましたわね……」

「結局は物理(パワー)。物理こそが全てを解決する」

「ちからわざすぎるぅー」

「CHEATちゃんはいつまで溶けてるの……?」

 

 

 だからこその、RTA。

 それは本来機械を必要とするようなテクニックを、人力で再現しようとする剛の者達の集まり。

 そのパワーを手に入れた彼女は、向かうところ敵なし、みたいな状態へと突入したというわけなのだった。

 

 ……なお、能力的な補助は変わらず得ているため、TASであるということは譲らない、とのことであった。欺瞞では?

 あとCHEATちゃんが溶けているのは、競う相手が途端にレベル違いになったことへの絶望から、とのこと。

 

 こうなったら新ジャンル、『チーRTA』を目指すしかないな!

 ……と声を掛けたところ、か細い声で「むぅーりぃー……」と返されたのだった。……いやそこは頑張ろうよ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。