「ええと、要約致しますと……私達の操作の癖や動きなどを学習し、自身に反映なさった、と?」
「そう。お陰さまでちょっとの間不調だった」
「あ、不調の理由それだったんだ」
「ん。アップデートパッチ適用」
「……サイボーグネタ、気に入ったの?」
「ん」
どうやら気に入ったらしい。よくわからん。
……まぁともかく。
今のTASさんの強さは、今までにあった無駄をAUTOさんを真似ることで削ぎ落とし、バグを利用するのではなくCHEATさんの原理で引き寄せる、みたいなことをできるようになったから、ということになるらしい。
そのやり方は確かに、アップデートパッチを入れたようなもの……なんて風に形容できなくもなく。
結果として、彼女自身に『サイボーグTASさん』なんて新たな呼び名が生まれるきっかけとなったのだった。
……なんでも、とある動画でTASみたいなことを(当たり前に)する、とある人物に感銘を受けたのだとかなんだとか。
「本来コンピューターの補助を得て、初めてできるような技を当たり前のように使う人だった。──でもあれは、本質的には職人のそれ。私達にはわからない感覚を持っている、というだけのこと」
「なるほど?だから自分にもできるはずだ、と?」
「お陰さまで
「その辺りの感覚は私達には共有できないので、よくわかりませんけど……」
「なんかすごいことになってんだろうなー、ってことはわかるぜー」
「CHEATちゃんのIQが突然低く……!?」
指先で触れただけで、ナノレベルの違いを把握する職人……というものが、世の中には存在する。
つまりはそういうこと。
勘や長年の経験、感覚などの六感をフルに活用できるのであれば、人は決して機械に負けることのない力を発揮できる。
……先日の勇者めいた技も、元々はRTA──実際の人が開拓した分野である以上、極まった人達の性能というのは、中々馬鹿にできたものではない。
そしてTASさんは、その粋に手を掛けたのだ──。
……まぁ雑に言ってしまうと、心技体のうち『技』と『体』が揃った、みたいな感じか。
なお、それらの事実を前に
「つまりこれからはレトロゲー以外にも手を出す、ということ」
「散々色々語っておいて、最後の結論が適当すぎやしませんこと???」
TASさんのアップデートがどういう意味を持つのか。
それは、『リアルにTASさんが居るのなら、それはRTAと変わらない』である。……え?最初の方に同じようなこと聞いた?
まぁ要するに、CHEATちゃんの方にもあった問題点を、どうにか解決する目処が立った……という風に考えて貰えばいい。
TASというのはその名の通り、
そしてその補助を受けるには、本来パソコンなどによって該当のゲームが、外部でエミュレーションできなければいけない。
それが何故かと言えば、ちゃんとした公式の機械には、『ゲームをする機能』しか付いていないためである。
あるものをあるままに楽しむための機能しか付いていない、という風にも言えるか。
出されたものを出されたままに楽しんで貰う、というのが大体のゲームメーカーのスタンスであり、例えばMOD──いわゆる改造パッチのようなものは、サポートの面などから否定的にならざるを得ない、なんて会社も(特に日本では)多いわけで。
……まぁ、その辺りは色々ややこしいのでここでの言及は避けるが、ともあれその辺りの制約が薄い・もしくは制約を無視しやすいPCプラットホームでのゲームというのは、改造にしろチートにしろTASにしろ、色々やりたい放題な面がある、というのは間違いない。
で、以前も言ったように、ゲーム機は新しくなればなるほど、エミュレーションやチートというものが難しくなっていく。
パソコンと据え置きの両者で出るようなゲームも、内部的には違うプログラムだったりするため、パソコン版があるからと言って据え置き版も色々できる、というわけではなかったりする。
……そこら辺を総合すると、CHEATちゃんが手を出せない場所と、TASさんが手を出せない場所というのはほぼほぼ重なるのである。
どちらも、公式の機械以外のモノを使う、という共通点があるがゆえに。
「だからこそRTAさんなんだよね。人力チート、とでも呼ぶべき?」
「確か……実在の人間なのにも関わらず、まるで機械のような正確性を持っていたため、誤ってチートによるアカウントの凍結処理を受けた、なんて人が居たという話がありましたわね……」
「結局は
「ちからわざすぎるぅー」
「CHEATちゃんはいつまで溶けてるの……?」
だからこその、RTA。
それは本来機械を必要とするようなテクニックを、人力で再現しようとする剛の者達の集まり。
そのパワーを手に入れた彼女は、向かうところ敵なし、みたいな状態へと突入したというわけなのだった。
……なお、能力的な補助は変わらず得ているため、TASであるということは譲らない、とのことであった。欺瞞では?
あとCHEATちゃんが溶けているのは、競う相手が途端にレベル違いになったことへの絶望から、とのこと。
こうなったら新ジャンル、『チーRTA』を目指すしかないな!
……と声を掛けたところ、か細い声で「むぅーりぃー……」と返されたのだった。……いやそこは頑張ろうよ。