「にしても……すっかり寒くなったなぁ」
「昼間はまだ暑い時もありますけれどね。……この時間帯がすっかり寒くなったのは間違いないかと」
はぁ、と吐いた息が白く染まることを確認しながら、そろそろ冬も近付いて来たかと改めて体感する今日この頃。
俺とAUTOさんとCHEATちゃんの三名は、夕焼けに染まる帰り道をゆっくり歩いていたのだった。
……なお、何故この三名が揃って歩いていたのか、という理由については買い物に行った帰りであるからと予め説明しておく俺である。
「この時節、安売り人数限定商品は買い逃すわけにはいかないからな……」
「卵は特によく使いますものね……」
両手に抱える袋の中には、お一人様二パックまでの卵が六つほど。
……もっと人数を動員すればさらに買い足せたのでは?と言われそうだが、とはいえ一家族で十近くも買い占めると顔を覚えられる()ので宜しくない……みたいな?
近所付き合いにおいておば様方を敵に回すのはよくないのである。これはTASさんもそう言ってる。
「……マジで?」
「『徒党を組まれても特に問題ないけど、以降ずっと彼女達からの横槍フラグを抱えることになると考えると割に合わない』だってさ」
「普段のTASさんならば、そういうのも面白い……みたいなことを仰りそうですけど」
「『面白いを通り越してうんざりするくらい絡まれるのが見えたから止めた』んだと。まぁ、そういう気分じゃなくても横槍が飛んでくる……となると下手に憎しみを煽るのは宜しくない、って結論になるのもおかしくはないというか」
げに恐ろしきは井戸端
現代の村八分はより陰湿で狡猾であり、かつ他者の気概を折ることに特化している……みたいな?
まぁ、元を正せばいらない恨みをわざわざ買ったから、となるのでどっちが悪いと単純に断定もできないわけだが。
……言い換えれば『恨みを買わなきゃいい』だけの話なので、下手に他所のおば様方に不利益を被らせなきゃそれで終わることでもある。
そんなわけで、こういう特売の際に必要以上に買い占めをするのは止めよう、という結論になるわけなのであった。
「……特売一つ取ってもややこしいんだな」
「特売のフラグに干渉して販売個数を&*個とかにしてた時から比べたら、随分と世間に迎合したものだと俺は思うけどね」
「何か今変なこと仰りませんでした貴方様???」
なお、それとは別方面で問題児だった過去のTASさんに思いを馳せていたら、二人からマジかよ、みたいな反応を頂くこととなったわけだが……。
いや、TASさんなら寧ろそういうことやってる方が普通では?……と返したら「……そういえばそれもそうですわね」という納得が返ってきたのだった。
「よくわからないけどムカついたから殴るね」
「お兄さんそうやってすぐ暴力に訴えるのよくないと思ぐえーっ!!」
「雉も鳴かずば射たれまい、ってやつかな?」
「他人事面してるけどCHEATも対象」
「ほぎゃー!?」
帰ったら熱い歓迎を受けた件について()
……まぁ、居ないところで話してたとしてもTASさんには関係ない、というのはわかっていたのである種予想通りではあるんだけども。
なおCHEATちゃんに関しては多分素である()
「何かストレスになるようなことでも?」
「TASさんがってことならその通り。最近新しいゲームをやってるらしいんだけど、同期がうまく行かずにずれるんだと」
「……ああ、TAS動画ということですわね?」
「そうそう」
で、わざわざこの展開を受け入れたということは、TASさんが何か暴力に訴えたくなるような別の問題があったのでは?
……と気付いたAUTOさんが密かに耳打ちをしてきたため、あっさりとそれを肯定した俺である。
最近新しいジャンルのゲームに手を出しているらしいTASさんだが、どうにも思った通りに進められていないらしい。
具体的には『前半と後半の動きを繋げようとするとどうしても
……なんか久しぶりにTAS用語を聞いたような気がするが、ともあれ彼女にとって致命的な問題であることは間違いなく。
ゆえに、そうして溜まった鬱憤を俺が暴力として受け入れた(上で、それだけじゃ足りずにCHEATちゃんにも飛んでいった)わけである。
「なるほど……それにしても珍しいですわね。確か同期ズレと言うのは、エミュレーターが本来存在している変数の全てを演算しきれていないから起こるもの、みたいなことを聞いたことがありますが……」
「ああうん、それも仕方のない話なんだよ。何せそのゲーム、かなり最近のモノだからね」
「……ああ、確か演算する変数が多くなる近年のゲームは同期ズレを起こしやすいのでしたか。ところで、参考までに何のゲームに挑戦しているのか御伺いしても?」
「ん?……ああ、最近始まったオンラインゲームだよ。『現実なら上手く行くのに、一つ間に世界を挟むだけで動き辛くなる。これほど悲しいこともない』とか言ってたなぁ」
「……かなり無謀なことをしていらっしゃるのですね……(白目)」
なお、そうしてTASさんが苦戦する相手とはどんなものなのか、という問いに対して俺が答えを返したところ、AUTOさんは『それはそうですわ』とでも言いたげな視線をこちらに寄越して来たのだった。
……いやほら、その辺りはTASさんなので……。