うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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諦めたら楽になれますよ、という地獄からの呼び声

「とはいっても、結局はTAS君の行動次第……なんだよねぇ」

「こちらからできることは限られていますものねぇ」

 

 

 このままだとみんな巻き込まれる……。

 みたいな危機感を隠していたことがみんなにバレてしまったわけだが、この危機感を解消することはとても難しい、ということも同時に知れ渡ることとなる。

 何せ、こちら側から事態を動かす余地がほとんどない。

 辛うじて絞り出したのが『TASさんが途中で投げ出さないように、可能な限り他のストレス要因を排除する』というものだったわけだが……これだと、結局彼女の行動に全てが委ねられているという点で然程違いがない。

 

 

「かといって他の方法も、辛うじてやれそうなのがCHEATちゃんによる干渉だろうけど……」

「そもそも目的はTASのやつの成長なんだろ?ってことは、私が下手に干渉しても意味がない……ってことにならないか?」

「そうなんだよなぁ……」

 

 

 では他に何か手があるか?……と問われて真っ先に思い付くのがCHEATちゃんによる干渉だが、これは寧ろ悪手中の悪手である。

 

 単にあのオンラインゲームをクリアする、というのが目的であるのならばそれもまたありかも知れないが、今回の目標はTASさんが成長すること。

 そのための修行場としてオンラインゲームが向いていた……という話でしかないので、それを無理にクリアしたところでトラブルの引き金には指が掛かったまま。

 

 他のゲームにTASさんが移動するきっかけにはなれど、彼女の動きを止める理由には全く足りていない、ということになるのである。

 で、彼女が止まらないのだから危機的状況の発生フラグも立ちっぱなしのまま、と。

 ……こう列挙してみると、なんというか何時ものトラブルにも負けず劣らずの難題、という気がしてくるな?

 

 

「まぁ、実際問題難題なんだけども。……結局どうする?」

「うーん……ROUTEさん、こう……なんか上手い具合に選択肢を連鎖させてTASさんが望むルートに繋げる、とかできない?」

「俺に死ねと言っているんなら、その喧嘩は買うぜ?」

「あれー?!」

 

 

 そうなると残された対策は、TASさんと同系列の能力を持つROUTEさんによるルート固定、くらいしか思い付かなかったわけだが……試しにやれるか聞いてみたら何故か喧嘩を売った判定をされてしまった、何故に。

 ……詳しく聞いたところ、TASさんの能力運用はまともな未来視能力者なら即発狂するレベルの酷使であり、それを他者に強いるのはまさに鉄砲玉として玉砕してこい、と命令するのと同義とのこと。

 

 平たく言うと『アレ(TAS)と俺を一緒にするな、オーケー?』という意味であり、脳天に突き付けられた拳銃の鈍い輝きと共に俺に事の重大さを教えてくるのだった。

 

 

「……ところでそちら、本物ですの?」

「んなわけあるか。ライターだよライター。……見た目だけでもハッタリにはなる。ハッタリになるなら別のルートも見える……ってだけだよ」

「なるほど……」

 

 

 なお、当の拳銃は偽物とのこと。

 引き金を引くのに合わせて銃口から吹き出した青い火に、周囲はほっと胸を撫で下ろしたのだった……。

 

 

 

○=○

 

 

 

 はてさて、結局上手い対策が思い付かなかったその日は、そのままなし崩しに解散となった。

 

 相変わらずパソコンの前でうんうん唸るTASさんを置いて部屋を出た俺は、一先ず夕食の準備をするためにキッチンへと向かう。

 

 

「実際問題、このままでいいと思います?」

「どうでしょう?あのTASさんのことですから、明日にはさらっと問題を解決しているかもしれませんよ?」

「うーん、ないとは言えない……」

 

 

 てきぱきと作業をこなしながら、DMさんとTASさんについて会話をするが……特に上手い案は出てこない。

 寧ろ、こうして俺達が気を揉む方が無意味なのでは?……みたいな結論が出てくる始末だ。

 

 

「というかぁ、実際それでよいのではぁ?結局こっちからできることはなにもないんですしぃ」

「……飛んでくるトラブルが世界崩壊級だったとしても?」

「既に何度も遭遇してますから今さら、ですねぇ」

「しまった、いつの間にか危機感が麻痺してやがる」

 

 

 何故かついてきた(手伝う気のない)ダミ子さんは、出来上がって行く料理に手を伸ばしてはその甲をDMさんにぺしり、と叩かれている。

 懲りるということを知らないのか、もしくはこっちの隙を突く自身があるのか……どちらにせよ邪魔でしかないのでキッチンの外へ放り出してやろうか、と考える俺であったが、その前に彼女が発した言葉に呆れ返ることに。

 

 ……まぁ確かに?俺達ってばいつの間にか世界の危機を幾つも乗り越えていたりするわけだが。

 とはいえそれって、基本的には俺やダミ子さんではなく、他の面々の活躍による功績ってやつなわけで。

 ってことは、その功績を積んだ張本人が(結果的に)敵側に回ってしまうと、必然俺達にできる対処なんてたかが知れてる、ってことになるわけで。

 

 ……その辺りを思えば、楽観視なんてできない……できない……?

 

 

「?どうしたんですかぁお兄さん?……はっ!もしかして私の仕事(味見)ができたんですね!?」

「……ああ、ダミ子さんの()()ができたかも知れないぞ!」

「……んん?ニュアンスが違う気がしますぅ?」

 

 

 もしかして、なんとかなる?

 俺は襟首を掴まれ強制退去寸前となっていたダミ子さんの姿を見て、とある解決策を思い付いていたのだった。

 ……うまく行けば、なんとかなるかもしれんぞ……!

 

 

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