「そもそも何故同期ズレが起こるのか?……無論、演算対象が多すぎるから、データ間の同期がスムーズに行われない……というのも間違いじゃないだろう」
「何か演説っぽいのが始まりましたぁ」
茶化すんじゃないよダミ子さん。
おほん。……ともかく、今回TASさんがてこずっている原因は、雑に言うとエミュレーション範囲が広くなりすぎたから、というもの。
細かなスーパープレイ・スピードランを数珠繋ぎにしたのがTASである以上、前提となるデータは全て揃っていないといけない。
……その背景データが膨大であるからこそ、そこで起こる細かな出来事まで操作しきれない、なんて事態が発生してしまうのである。
ならば、だ。
「……はい?」
「無論、単にそれをそのまま実行してもTASさんのためにはならない。難題を乗り越えてこそ成長する、ってわけだからね。だから、ここでは……」
「な、なんと……!」
そうして俺が語った対策に、皆は驚きと納得の表情を浮かべたのだった。
「それでは作戦開始!TASさんに気付かれるなよ!」
「
はてさて、そんなわけで作戦決行である。
タイミングは昨日の作成会議から一夜開けたお昼過ぎ。
昼食を食べたあと、TASさんが再びパソコンの前に向かったタイミング、となる。
彼女が椅子に座ってからタイマースタート。
俺達の短くも長い
まず始めに行うことは、DMさんとダミ子さんを所定の位置に配置すること。
今回の作戦の要はこの二人であり、彼女達の連携なくして成功はありえない。
ゆえに、ここの動きは密かにトレーニングが行われており──珍しく機敏な動きでばばっと動くダミ子さんの姿が見られたりした。
まぁ、付け焼き刃どころではない一夜漬けであるため『終わったあとは筋肉痛確定ですぅ』と嘆くダミ子さんだったりもしたが、些細なことだろう。
ともあれ、二人が配置に付いたら次に動くのはCHEATちゃん。
二人の行動をネトゲ内に反映するための様々な調整を任された彼女は、久々に全力の証であるあのタブレットサイズ黒板を引っ張り出してきていた。
そのまま、ガリガリとチョークで音を立てながら、必要なコードを
そんな三人をさらに外からサポートするのが、ROUTEさんとAUTOさんの二人。
細かい確率のズレを外部から解消するため、
あれだ、某有名女性歌劇団、みたいな?……まぁ、男役もとい指示役がAUTOさんの方であるため、余計に見ちゃいけないものを見せられてる感が増しているわけだが。
そして最後に、そんなものが視界の端に見えたなら気にしないわけがないだろう?
……ってことで、それらの隠蔽を任されたMODさんである。
これ全部を隠すのは無理じゃないかい、みたいな懐疑の眼差しを開始前はこちらに送ってきていた彼女だが、度重なる彼女への強化フラグが功を奏したのか、本人も驚くくらい完璧に隠蔽できている。
これならば、TASさんからは食後の一服……みたいな感じで、みんながババ抜きをして遊んでいるようにしか見えないだろう。
……え?それだと逆にTASさんが注目してこないかって?
今のTASさん他のことに夢中だからこれくらいだと気にしてないよ。
──そう、気にしていない。
いつもなら『私も混ぜてー』とばかりに突っ込んでくる彼女が、そんな余裕もないくらいに一つのことに集中している。
それはある意味で、彼女には珍しいくらい焦っている、という風にも見えてしまうもので──。
(なら、目の前のトラブルはちゃっちゃと片付けて、いつものようにはっちゃけてて欲しいと思うのは、何もおかしくなんかないだろう?)
ゆえに、俺は彼女の背を押すのである。
……まぁ、今回の俺がやれることと言うと、極力TASさんが周囲を気にせずに済むように、あれこれと世話をすることだけなんだけどね。
え?さっきMODさんに隠蔽工作頼んだのはなんだったんだって?
彼女一人の献身で完全に興味が逸らせる……なんて虚勢は張れないからね、仕方ないね。
まぁともかく、ここに全ての準備は整った。
ゆえに、俺は頃合いを見て彼女達に合図を送る。
自分のなすべきことをなせ、というシンプルなそれは、瞬時に彼女達を行動させ──、
「……!これは……!」
(さぁTASさん、受け取るがいい!これが俺達からの最大のエールだ!)
電子の世界に、彼女達の影響は瞬く間に広がっていく。
NPC達はまるで自我を得たように動き始め、PC達も突然キャラの動きが良くなったことに驚きながら、それでもゲームを進めていく。
──そう、端的に言えば今、