「ええと、『私がいる』とは一体どういった意味合いで?」
「……文字通りです。この遺跡には私がいる。……いえ、正確には封印されたままの、邪神としての私がいる……ということになりますか」
「なんと?」
突然の彼女の発言に、その心意を問い掛けることとなる俺。
その結果返ってきたのは、本来いないはずの──かつての彼女がまだここにいる、という内容の言葉だったのであった。
……とはいえ、それが素直に頷ける話かと言われればまた別の話。
周回とTASさんの呼ぶそれは、正確には『強くてニューゲーム』ではなく、そのまま『二周目』であると捉えるべきもの。
そのため、一部の要素以外は元の状態にリセットされている。
具体的には、ダンジョン内の仕掛けなどがそれだ。
例えばである。
ダンジョンクリア後に外へ強制的に放り出されるようなパターンの場合、中の仕掛けは一方通行となっていることも少なくない。
ボスを倒してステージクリアをしなければ街などには戻れない……みたいなパターンだ。
その場合、クリア後のダンジョン内部の状況は二つに別れる。
ギミックが初期状態に戻っているパターンと、戻っていないパターンだ。
戻っているパターンは、再度ダンジョン深部にたどり着くことができる。
その上で、以前倒したボスと再度戦えたり、はたまた二度目はないのでそのまま入り口に戻され、内部状況がリセットされる……みたいな形になるのが主流である。
対し戻っていないパターンの場合、二度とボスの部屋にたどり着くことはできない、みたいなことになっている。
必然、その辺りで取り逃したモノがあったりすると二度と入手できないということになり──場合によっては致命的な事態に発展する、ということもありえる。
今回の『二周目』の場合、そのあり方は戻るパターンと戻らないパターン、その折衷案に近い状態となっている。
具体的には、今回やってきた遺跡の入り口はリセットされていて、仲間になるメンバー達のイベントはともかくその所在そのものはリセットされていない……みたいな感じか。
これはどちらも、『ストーリー進行に支障を来す』か否かでその結果が左右されている、と考えるべきだろう。
わかりやすいのは、特定の場所に向かうために必要となるアイテム達。
これらはストーリー進行上で入手するアイテム・ないし移動手段であり、ストーリー序盤などではたどり着けない道の先に新たなフィールドが待っている……という形で、作品の世界観を大きく広げる役割を持っている。
それゆえ、『二周目』『強くてニューゲーム』のどちらのパターンでも没収されることが多い。
中には『二周目』で没収されず、かつその状態でないと到達できない隠しステージが存在する……というパターンもあるが、それはそれでストーリー進行の方は色々と投げている、というパターンも少なくはない。
本当は既に入手しているが、持っていないものとして話が進む……みたいなやつだ。
今回の場合、ギミック系のものはそれを攻略するTASさん達が主題なこともあり、基本的にはリセットが掛かっている。
TASさん的にも『新しい手法を試す』ためにはリセットされていた方が何かと都合が良いだろう。
対し、メンバーの加入状況はリセットされていない。
内部データ的にはまだ加入していない、という扱いになっていたりもするようだが……特定のタイミング以外で彼女達の行動に制限が掛かるようなこともない。
そして、それが許されるような状態にするためということなのか──再度の加入イベント時、彼女達が増えたりしないようになっている。
言い換えると、イベントフラグはリセットされてもキャラの所在自体はリセットされていない、となるか。
それゆえ、加入イベントをどう攻略しても、同じ人物が二人以上に増えたりする、なんてことはありえない。
それが引き起こすバグやらなにやらを思えばその方が安心だろう、というのは間違いあるまい。
まぁ、TASさんは少々残念そうにしていたわけだが。『能動的に数値をオーバーフローさせられそうなのに。残念』とかなんとか言ってたので本当にそうじゃなくてよかったと思う。
……そう思っていたのだけれど。
さっきのDMさんの話が本当であるのなら、少々不味いことになるかもしれない。
「……なるほど。ここにいる私がどういう状態なのかはわかりませんが……もし仮に、加入フラグに何かしらのバグがあってそれか影響として出ているのであれば……」
「嬉々としてTASさんは検証に掛かる。下手をすると無数に増えたDMさん(※未加入Ver)で異常を引き起こし、裏世界に飛んでデバッグルーム発掘とかやり始めるぞ……!!」
「……おかしいですね、私が当初予想していた危機とまったく違う方向にかっ飛んで行ったんですが???」
「え?……参考までに聞くけど、どうなる予定だったので?」
「いえその、流石のTASさんと言えど邪神・私が増えたら手に負えなくなるのではないかと……」
「はっはっはっ。俺にはみんなして『たすけてー』って言ってるイメージしか湧かないですねぇ」
「……これ、私は下克上を狙うべきなのではないでしょうか?」
「何故に!?」
なお、双方の見解が食い違ったことに、しばらくDMさんが拗ねる事態となったが……色々提案してどうにか機嫌を直して貰ったのだった。
……うん十万のメモリとかねだられたけど、彼女の機嫌と比べたら遥かに安いね。本当だよ。(震え声)