うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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もはや自分を隠さない

「学ぶべきことは多い。今日も今日とてトレーニング」

「……だからって、俺まで輪っか(リング)で結果にフィットする必要性なくない……?」

「仕様上どう足掻いてもTASにはならないから、お兄さんも巻き込もうかと」

「別に俺細マッチョも※津玄師も目指してねーんですけどー!!?」

 

 

 いやまさか、展開の都合上飛ばされたキャラが、そこで回収されるとは思わんじゃんね?

 ……というわけで、輪っかを持ったまま色々ポージングしたりしている俺達である。

 

 アップデートした彼女が、早速その足で買ってきた例のゲーム機。

 そもそもあのスライド空中移動自体がそのための予行練習、みたいなものであったこともあり、早速彼女はこのゲームでのRTA記録に挑み始めていたのであった。

 ……いやまぁ、余りにも物理こそパワー、って感じで正直付いていけない感凄いんですけどね!寧ろ背丈的にも筋力的にも中学生女子なはずのTASさんが、よくもまぁこんなエグいトレーニングをできるなぁというか。

 

 

「負荷の逃がし方とか、使い方とか。色々覚えたから」

「わーひきょーくせー」

 

 

 なお、彼女自身は彼女の持つ能力(未来視)で、その辺りのノウハウを学んだ、もとい追記したとのこと。

 ……直接的に身体能力を上げることは叶わずとも、人々が連面と伝えてきた技術に関しては普通に会得できる、というのだからチート臭いことこの上ない。

 

 

「実は伝えてなかったけど。範囲を絞れば、結構先まで()える」

「範囲?……ってああ、普段の()()は全部視てるんだっけ」

 

 

 そうして話題は、彼女の能力──未来視についての話に。

 

 視ている間は時間が経過せず、かつ視ることが未来にもたらす変化まで含めて視ることができる……とかいう、数ある未来視系技能の中でもわりと意味不明な能力である彼女のそれは、どうやら使い方にバリエーションがあるらしい。

 普段のそれが全検索しているのだとすれば、実は条件付け検索もできる……みたいな?

 

 

()()()()()()()だけに絞るなら、大体一月。更に特定の事象にだけ使うのなら、大体一年くらい先まで視える」

「……えー」

 

 

 そうして彼女が説明したところによれば、範囲を極限まで絞れば、実は十年くらい先までのことも視える、らしい。

 まぁ、そこまで行くと絞りすぎで、視たことによる変動とかまでは観測できなくなる──要するに起こり得る未来の一つとして観測できる、くらいに留まるらしいのだが。

 そもそもその場合、その未来に至るまでの十年間、完全に視たものと同じ動きをしなければならなくなるので、負担が大きいらしいし。

 

 ともあれ、視える長さについては、ここではあまり重要ではない。

 ここで重要なのは、()()()()()()()()()()()()()()ということ。つまり……、

 

 

「海外旅行に行こうと思った、という時点でもう旅行は終わっている……ッ!」

「なんでジョ○ョ?」

 

 

 やけに凄みのある台詞だったが、つまりはこう。

 追記という形にはなるが、行こうと思い立った時点で行ったという経験が得られる、ということ。

 ──つまり、なにかを学ぼうと思い立った時点で、既に知識を身に付けることができる、ということである。

 無論、あくまでも未来視が届く範囲に限る、ということになるが。

 

 ……うん、制限があるから万能、って訳じゃないのかもしれないけれど。

 

 

「……仮に習得に十年掛かるような技術でも、成功確率がゼロでないのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのは、色んな人にキレられても仕方ないんじゃないかなー」

「ぶい」

「いやぶいじゃなく」

 

 

 そもそもの話、普通の人には彼女の追記、というものは理解できない。

 同じ未来視能力者であっても、同じ視座には立てるかわからないのだから、真実彼女をチート、と呼んでも別におかしな話ではないだろう。

 ……まぁ、そう呼ぶと『パラメーターを直接弄ることはできない』と否定されるわけなのだが。

 

 

「そういう意味では、彼女は驚異的」

「彼女?」

「お兄さんがCHEATと呼ぶ人。あの子は本来なら、『これが私の第二形態……!!』みたいなことができる、はず」

「……あ、あー。そういえばそうか。チートって大体そういうのだもんなぁ」

 

 

 特に、すぐ近くにそれができるはずの人間がいるのだから、なおのこと。

 ……そう、皆さんご存知CHEATちゃん。

 彼女はその名の通り、現実世界でチートを使える人間である。

 あくまで最初から用意されている要素を弄る、ということしかできないが──逆を言えば、彼女は単なるパラメーター……速度とか筋力とかに関しては、幾らでも自由に変更できるはずなのである。

 それこそ、技量のパラメーターを弄ればAUTOさんに迫るテクニックを得ることも、本来不可能ではないはずなのである。

 

 ……まぁ哀しいかな、普通の話ならチート主人公として名を馳せそうな彼女も、TASさんの前では霞んでしまうのだが。

 

 

「『チートを使えるのでイキっていたら、そんなの全然効かない相手にぼこぼこにされました』?」

「……それ、CHEATちゃんの前で言わないように」

 

 

 なにその逆な○う系みたいなの。

 唐突に思い付いたかのように口走るTASさんに、思わず俺は口止めをすることになるのだった。

 

 

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