「……ところで。呑気に会話など楽しんでいらっしゃいますが、帰り道の心配をする必要はありませんの?」
『帰り道……?』
「……いえ、そこで首を傾げられても困るのですが」
束の間の談笑タイムを終わらせるように、AUTOさんが声をあげる。
……そういえばすっかり忘れてたけど、スタンドさんが負けたのならこの遺跡、そろそろ崩れてしまうのではないだろうか?
いやまぁ、前回みたくパッドの中に封印されたわけでもなし、遺跡との繋がりも切断されておらずその辺りの心配はない、という可能性もなきにあらずだが。
なお、当の遺跡管理者であるスタンドさんは、あからさまに『わからん』とでも言いたげな様子を見せていた。
そうなると、こちらも困惑してしまうわけで……。
「ええと、遺跡の維持は?」
『いせきのいじ……?……あ、これか』<ポチッ
「ちょっと待って今なにしたの君???」
『え?何ってその……終了処理?』
「……つかぬことを聞くんだけど、その終了処理の内容って?」
『さっきから疑問ばかりだのお主……終了処理と言ったらあれだろう、敗残兵は骸を残さず。綺麗さっぱり木っ端微塵……あ』
「こいつ流れで自爆装置押しやがった!?」
そうして困惑していた彼女は、突然大きな声を出したかと思えば、唐突に何かのスイッチを入れてしまう。
……あからさまに何かを押した音がしたため思わず問い掛ければ、彼女は何を当たり前のことをとばかりに今しがた自分がしたことを語り──その最中に『やらかした』とばかりに呻き声を上げたのだった。
うん、つまりこれはあれだな?
アクションゲーム特有の、ラストダンジョンからの脱出もイベントの一部です、みたいなやつ。
それを裏付けるように、突然遺跡の中に響き渡る謎の言語と地響き。
……内容はわからないが、淡々と語られるそれはなんとなく『当遺跡は痕跡抹消の為隠蔽処理を開始しております』とかなんとか、そんな感じのことを述べているのだろうなぁとこちらに想像させてくるものなのであった。
「……結局この遺跡パァじゃん!?ここまで頑張ってきた意味は!?」
「ま、まぁまぁ。そもそも巨大化ダミ子さん大行進の時点で無為と帰していたようなものですし……」
「そっちはまだ一部、壁の一部とかだったじゃん!?こっちは完全な木っ端微塵で何も残らないんだけどぐえー!!?」
「呑気なこと言ってる場合じゃない。さっさと帰るよ」<ワクワク
「お、思いっきり楽しんでやがりますぅ……」
そんなことになればCHEATちゃんが喚き始めるのは当たり前のこと。
なんとか落ち着くようにAUTOさんが宥めているが、遺跡愛好者である彼女がそんな言葉で止まるわけもなく──結果、TASさんが襟首を捕み首が絞まることでようやく止まったのであった。
……なお、実はCHEATちゃんの見えない位置で、TASさんが謎のダンスをしていたことを俺は認知していたりしたわけだが……これを言うと余計に拗れるので黙っておく俺である。
どう考えてもTASさんが遺跡の自爆を(謎の儀式で)後押ししていたわけだけど、黙ってれば他に気付いている人もいないので問題にならないだろうからね、仕方ないね!
「……いい加減首絞まってるから離せって!!自分で走れる!!」
「そう?ならさっさと走って。このままだとぎりぎり間に合わない」<ワクワク
「間に合わないって言いながらワクワクしてるの何!?」
「崩落した遺跡からの脱出もまた醍醐味」<ワクワク
「……絶対ろくなことにならないから却下!!」
「えー」
可及的速やかに遺跡から脱出するため、慌てて走り出した俺達。
盗掘者達は入り口付近から奥へは進めていなかったため、道中で救助を必要とされることもなく、俺達はとにかく自身が助かることだけを目的に走ることができていた。
まぁ、入り口まで戻ったら寝かされている盗掘者達を抱えて外に飛び出さなきゃいけないんだけど。
……ともかく、天井やら地面やら通り道やらが崩壊しまくっているのをなんとか進みつつ、入り口へ向けて全力疾走する俺達である。
覚えててよかった空中歩行。
これなかったら、途中で橋が落ちてるところで立ち往生する羽目になってたぜ……。
いやまぁ、DMさんに任せて全員抱えて飛んで貰う、ってパターンも考えられなくはないけどね?
でもそれだと途中で燃料切れてたかも、と言われたら選ばなくてよかった、という言葉も漏れてしまうというか。
「…………」<ジーッ
『なぁ、
「エネルギー源として狙われてますね。消費させられたくないのならいい子にしていた方がいいですよ」
『思った以上に物騒なこと考えておるな
……うん、どうにも俺の言葉が癪に触ったのか、無言でスタンドさんを見詰め始めててちょっと申し訳なくなったりもしたんだけども。
これ、どう考えてもスタンドさんを補助エネルギー源として取り込み直そうかなー、とか考えてるやつだよなー?
流石に相手が邪神とはいえ、単なるエネルギーとして消費させられるのはかわいそうなので忠告しておく俺なのであったとさ。