うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

398 / 728
料理をするのに場所の制限はない

 はてさて、MODさんが崩落地底の旅に出てから数分。

 俺達は彼女の帰りを待ちながら、少し遅めの昼食の準備をしていた。

 

 ……え?盗掘者達はいいのかって?

 さっきTASさんが『一度やってみたかった』とかなんとか言いながら、担架にぐるぐる巻きにして固定した盗掘者達を放り投げ、その上に飛び乗って病院に叩き込みに行きましたけどなにか?

 空飛ぶ不思議な盗掘者達は、そのまま病院に直接搬入。

 今頃怪我の程度を確認しつつ、警察達に職務質問を受けていることだろう。

 

 なお、重症レベルの傷とかに関しては、AUTOさんが()()()をして軽症レベルにまで落としていたため、命の心配はなかったりする。

 これもちょっとしたAUTO(ちから)の応用ってやつだ?

 

 

「なんで疑問系なんですの……?」

「いやだって……ねぇ?『手当て』って言葉の語源はその字面通り()()()()()()()()()()だったらしいけど……」

「そこから相手の治療にまで効果が及ぶと、もはや魔法と何が違うんだって話だわな」

「……高度な科学は魔法と区別が付かない、とも言いますわよ?」

(おっと深堀りしない方がいいやつだなこれ???)

 

 

 本来は気休め……もしくは暖めることが患部に効果のあるタイプの傷病に対しての素人ができる対策の一つ……みたいなものが手当てだったのだろう、という話なのだが。

 それを思えば、重症患者が軽症患者になるのはまさに魔法以外の何物でもない……という指摘は、露骨に視線を逸らしたAUTOさんの反応により急遽打ちきりとなったのであった。

 ……うん、この反応だとあれだな。詳細を理解するのは良くないタイプのあれだ。

 

 まぁ、世界の崩壊と人命ならどっちを取るか、というのは永遠の命題みたいなもんだし……と茶を濁しつつ、昼食の準備に戻る俺である。

 

 

『えっ、(わし)が料理してる……えっ』

「……なんでそこまで驚くんですか。記憶は共有したはずですけど」

『いやだって、(わし)って神じゃん。寧ろ捧げ物を受けとる側じゃん。なんで自分から施す側に……?』

「やってみたら意外と楽しかったんですよ。……あとはまぁ、ちょっと癪に触ったから、みたいなところもなくはないですが」

『癪……?』

 

 

 準備に戻ると、何やらスタンドさんと会話するDMさんの姿が。

 機械の身体を持つ彼女は、当初こそ味付けの面であれこれと苦労することもあったが……今となっては味覚機能も完全搭載、なんなら食事も共にできるようになったため料理人としては及第点以上の腕前となっている。

 他人に食べさせるだけというのでも上達はするけど、やっぱり自分が食べて美味しいというのが一番だからね。

 

 そんなわけで、今となっては俺なんか足元にも及ばない存在に成り果てているのだけど……何故かは知らないが、こうして今みたいに挑戦的な視線を向けられることがあるので困っているのです。

 ……まぁ多分、まだ彼女の味覚システムが未熟な頃に彼女を唸らせるに至る出来事があったから、というやつなのだろうが……その辺に関しては偶然とTASさんのせいなので俺に突っ掛かられても困る。とても困る。

 

 

「お兄さんはもう少し自身を持ってもいいと思う。私はお兄さんのご飯大好きだし」<ニュッ

「へいへいどうも。個人的には長年食べさせてる相手だから当たり前だと思うけどね」

(それはお袋の味、ということなのかな……?)

 

 

 TASさんはフォローをしてくれるが、正直長く一緒にいる相手の好みとか把握してない方が問題な気がするというか?

 その隣で『そうかなー?』みたいな顔をしているMODさんには悪いが、そうとしか言えない俺である。

 

 

『……ううむ、眉唾だったが……本当にお主が中心人物だったのか』

「DMさんとの記憶共有の結果、ってやつですか?まぁ初期メンなんでそういうこともあるかもしれないですね」

(初期メン……???)

 

 

 そんな俺達のやり取りを見て、しみじみと呟くスタンドさん。

 どうやらDMさんから共有した記憶から、この集まりの中心人物が俺である、という風に認識していたらしい。

 

 まぁ、元を正せばこの集まり、TASさんがあれこれするうちに集まっていったモノなので、その彼女に最初っから引っ付いているとも言える俺が彼女と共に中心である、と言うのはそう間違った認識ではないのかもしれない。

 ……とはいえ、この不思議ガールズを俺一人が御せるわけもないので、どっちかというと役者不足の類いの話にしかならないわけだが。

 

 そんなことを呟けば、スタンドさんは何かが引っ掛かったのか盛大な虚無顔を晒していたのだった。

 ……再起動に暫く掛かりそうなので放置。

 代わりに、さりげなさ過ぎてスルーしそうだった問題に言及する俺である。

 

 

「……いや、戻ってくるの早くないです??」

「そりゃそうだ。そもそも私、落ちてないからね」

「なぬ?」

 

 

 そう、何故かしれっとTASさんの隣にいて、さらっと昼食の味見に加わっていたMODさんである。

 貴方、さっき地下に突き落とされてたでしょうに。

 ……というこちらの疑問に、彼女はこう答えたのだった。

 

 

「なに、これもちょっとしたMOD力の応用ってやつだよ」

「…………」

「いや止めて。真顔で見詰めてくるの止めて。冗談言ってるわけじゃないんだってば」

 

 

 ……なにいってんだこいつ。

 そんな思いの詰まった視線をぶつければ、MODさんは本気で嫌がり始めたのだった。

 それなら下手にカッコ付けなければいいだけの話なんだよなぁ……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。