「はぁ、影分身?」
「単に分身、という形でもいいよ。再度繰り返すことになるけど、これもちょっとしたMOD力の応用ってやつだね」
「そのフレーズ気に入ったんです?」
改めて彼女に確認したところ、彼女の行ったことは実に単純明快なものであった。
そう、それは分身。ジャパニーズアサシンこと忍者達の使う技術の一つであり、東洋の神秘であるそれはミステリーなどに登場させると話題を全部かっ浚われるので厳禁とされている……え?話が混ざってる?
……まぁともかく、自分と同じ存在を作り出すともいえるそれは、人手の必要な場面などにおいて人々から渇望される便利技能の一つである、ということは間違いあるまい。
ただ、いつの間にそんな高等技能を覚えたのか、みたいな疑問もなくはないのだが……。
「何、経験値が足りたというやつだよ君ぃ」
「なるほど。
「はっはっはっ、もう既に進化してるから問題な……いや待った何かヤバイことしようとしてないかいTAS君?」
「押していいって言ったよね?」
「ノー!!やっぱりなし!流石にここでそれをされるのは酷いとか言う話ではないよ!?」
うーんこの。
……非常にムカつく煽り顔をこちらに向けてくるモノだから、ついイラッとしてしまった。
いやまぁ、分身とはいえ自分と同じ姿をした存在が蹴り落とされたのだから、その分煽ってやろうみたいなことになるのもわからないではないのだが。
……なお、すぐさまTASさんに反撃を受けていたため、その辺りのヒエラルキーは変わってないのねと思ってしまったり。
はてさて、改めてMODさんに話を聞き直したところ、今まであれこれやってきたお陰で能力の応用に幅ができたとのことであった。
「無機物に私の姿を被せると、扱いが私になるんだよ」
「……何を言ってるんです?(何を言ってるんです、という顔)」
「いや、そんなに不思議そうにするような話じゃないよ。少しややこしいけど、結局のところはキャラ複製MODを導入したようなものだからね」
「だからって身も蓋もない説明をするのもどうかと思うよ?」
今までも自分以外にMODを適用することはできていたが、基本的にはただ被せるだけ……というのが実情。
そこに自身への適用のように材質の特性を与えたり、はたまたなにかしらの強化を発生させることはできていなかった。
が、最近自身への材質特性付与を獲得したことにより、その応用?的な使い方で無機物に限りその物体に『自分と同じものである』という特性を付与できるようになったのだとか。
あれだ、モノを検索する時にラベル付けをしておくようなもの、みたいな?
「なるほど、実態がどうなのかはともかく、単に状態を参照するだけならばMODさん本人なのか・それともその情報を付与されただけの別のモノなのかの判別はできない、と言うことですわね?」
「まぁ、それ自体は以前からできたんだけどね。やっても意味がなかったってだけで」
「意味がない?」
「仮にそこらの銅像が私と同じだと言われても、『だからどうした』って話だろう?」
私と同一である、という属性を付与すると動き出す、とかでもない限り……とMODさんは肩を竦める。
確かに、この場合は単に『MODさんと同じ』という属性を付与しているだけ。
それで見た目が変化したとしても、そこから勝手に動き出すわけでもない。
例えば『MODさんだけをターゲットに攻撃する』みたいなことをされたのならば、囮や身代わりとして使うこともできるだろうが……基本的にその部分を参照できる相手がいない、という意味で使い道がないのだ。
「特定個人を対象にする、という判別方法自体が少ないもんなー」
「ゲームとかなら幾らでもあるんだけどね。特定種族とか属性持ちへの集中攻撃」
こちらが利用できたとしても、相手が利用できないのなら活用手段がない……。
そんなわけで、他人に自身の属性を
「それが最近レベルが上がったのか、私という属性を付与すると遠隔操作できるようになったんだよね」
「なる、ほど?」
ところが最近、その『自己属性付与』に新たな効果が追加されたのだとか。
それが『自己属性付与』した物体の遠隔操作。
思念を通じてその存在を手足のように動かす技能である。
流石に本人そのもののように動かすのはまだ難しいらしいが、それでもMODさん自身ができることは拙いながらにこなすことが可能であるとのことで。
姿をMODさん自身のそれから大きく変化はさせられないものの、さらにその状態からMODを適用することも可能なのだとか。
つまり、さっき遺跡底面に落ちていったMODさんは彼女本人ではなく。
そこらの瓦礫にMODさん属性を付与した上で遠隔操作し、落ちて砕けないように上からさらに他のMODも適用していた……と。
「……利便性上がりすぎでは?」
「まぁ、私もちょっと引いてる。上手く行きすぎたというか」
いや、これ偵察とか隠密とかで役に立ちまくりでは?
MODさん本人のように変幻自在とはいかないみたいだけど、その分材質補正はしっかり働いているみたいだから囮として最適すぎるし。
そんなことを口にすれば、当のMODさん自身も若干引いたような顔をしていたのだった。
そこで自分がドン引くのか……。