「これは由々しき事態。向こうの状況が許すならまずすっ飛んでくるレベル」
『いや待て、色々と目眩がしてきたぞ……』
見るからにわくわく、とした様子で深刻そう()に事の次第を語るTASさんに、額を押さえたスタンドさんがもう片方の手で彼女を制しながらそうぼやく。
……まぁ確かに、冷静にならなくても『なに言ってるんだこいつ』の塊なので、その反応も無理もないわけだが。
まず第一に二百億光年先の、という時点であれである。
それだけ遠くにある星のことを観測する、となれば勿論その星が二百億年前からそこにある、ということが前提になってしまうからだ。
光年とは光が一年に進む距離。……すなわち、それが届いているということはその輝きは二百億年前のもの、ということになるのだ。
「ダミ子星が出来上がったのはほんの数ヶ月前。その時点で観測できてるのはおかしい」
『なるほどなぁ……そのニュース自体、何かしらの影響によるものということか……』
時期的におかしなことが起きている、ということを考えればこのニュースがどれほどおかしいのか、というのも察せられようというもの。
必然、そこにサンタの影を見るのも無理はないのだ。……自分で言っててなんだけど、サンタって言葉がすっかりホラーか何かと化してる件。
「二つ目、サンタカラーというのがもうダメ。あの星は別に恒星とかじゃないから自発的には光らないはず」
「それが赤や緑に見えるってのは、考えられる要因としては大気の組成とそれに反射した光、ってことになるわけだけど……」
「赤いのは大気に炭素を多く含み、緑なのはメタンみたいな赤色光を吸収する大気で構成されている。で、どっちも元のダミ子星とは違う空気」
『必然的に意味がわからん、と?』
「最悪街が赤と緑のイルミネーションに埋め尽くされてるかも」
『なにそのじょうきょう』
おおっと、キャパを越えたのかスタンドさんの喋りが以前の状態に逆戻りを……()。
まぁともかく、今のあの星の状況が未知数である、ということは間違いない。
そうなってくると問題なのが、あの星がああなった理由。
外から窺い知れる限り、あれらの変化はもろにクリスマスによるもの……ということになるのだろうが、それによって周囲にサンタパワー(?)を放出している、などということになれば……。
「サンタがこっちに顔を出す理由になる」
「……まぁ、こっちとしてはサンタパワーとやらがなんなのか、みたいなこともまったくわからんからなんとも言えんのだけど」
それが他所の世界にある──本来別世界由来の概念だから回収に来るのか、はたまた単にこの世界に新たなサンタパワーが現れたことを祝福しに来るのか。
どちらなのかはわからないが、どっちにせよこちらとしてはいい迷惑であることは間違いあるまい。
「多分向こうは『サンタを迷惑がるのなんて貴方達くらいのものだと思うんだけど?』とかなんとか言うと思う」
「確かに。存在そのものが問題なだけで、彼女の性格面はわりと一般人だからなぁ」
隣で一人『わからん……わからねば……』と頭を抱えるスタンドさんを他所に、俺達はサンタさんへと思いを馳せるのだった……。
「え、またあの痴女さんがやって来るんですかぁ?」
「痴女て」
「まぁ、あれが正装という辺りそう呼ばれても仕方がないとは思われますが……」
はてさて、夕食の時にサンタさん出現警戒の報を皆に知らせたところ、ダミ子さんからはそんな反応が返ってきたのだった。
今でこそ持ち直したが、彼女が一時不調に陥っていた時にその理由となったのが例のサンタであることを思えば、その反応もわからないでもないが……。
「……同じ顔の人を痴女呼ばわりするのはどうなん?」
「ぬぐっ」
サンタを痴女と呼ぶのは、同時に同じ顔をしている自身を痴女と呼ぶのにも等しい……と告げれば、ダミ子さんは箸で掴んだ煮物を口に入れた瞬間に固まることとなったのであった。
……まぁ、この辺りは不可逆というか、必然的な話だからねぇ。
「今のダミ子はある意味サンタ。それが必要なことだから仕方ないけど……同時に向こうからすると
「そ、それは私のせいじゃないですぅ!!」
「向こうの服装も彼女のせいじゃない。そういう面ではお相子……寧ろダミ子の方が重め?」
「ぬぐぐぐ……」
ダミ子さんという特殊な存在がサンタさんの姿を借りているからこそ、向こうの無用な侵入を防げているわけだが。
同時に、彼女がダミーであるせいで、ダミーデータを参照する際その姿が適用されてしまう……。
すなわち、無いものは全てサンタになる、という等式が成り立ってしまうわけである。
妖怪やら妖精やら天使やら悪魔やら、そういう本来存在しない相手を参照しようとすると全部サンタさんの顔になるといえば、それが名誉毀損とかで問題になってもおかしくない……と言うことがなんとなく察せられることだろう。
無論、その辺りのことにダミ子さんの責任がある、とは言えない。
だが相手の姿形に文句を付けるのなら、こっちもその辺りのことを言われても仕方がないぞ……というのも確かな話で。
その辺りを悟ったダミ子さんはと言うと、気まずそうな顔で残りの夕食を口にし始めたのだった。