「ところで、一応聞いておきたいんですけど……サンタパスポートって何か特別な形だったりします?」
「見た目は普通のパスポートよ。クリスマスらしく赤と緑のカラーが多かったりはするけど」
「なるほど。例の会社は他所の世界にもあった」
「は?例の会社???」
「あー……」
なんだっけ、サンタが赤い服を着るようになったのは、どこかの飲料品会社の活動の結果なんだっけ?
元々はとある聖人の逸話から派生したものだから、そこから考えると本来は彼の服の色──白こそがサンタの色であるはず、みたいな。
「他所の世界のサンタの元が、同じような経緯かもわからんがな」
「それはまぁ、確かに」
サンタという名前をしているが、その実俺達の思うそれとは別物である可能性も十分にあるというか。
……確か収斂進化、とか言うのだったか。
全く違う系統樹の存在が、どことなく似通った見た目や機能を持ち合わせているという。
「こっちでのそれはとある聖者の行いが発展したもんだが、こいつのとこのそれが同じとは限らない。同じように、カラーリングがこっちのサンタと同じなのも、その実飲料品会社とは関係ないかもしれないってこったな」
「はぁ、なるほど?よくわからないけど……こっちのサンタはそんな感じなのね」
まぁそもそも、サンタさんのところのサンタ達は他所の世界に赴いてサンタをしている……とのことなので、こっちの聖者さんがそれを真似した、もしくは例の飲料品会社が彼等彼女等の姿を見てそれを参考にした、なんてパターンもあり得るわけだが。
……言うなればサンタ起源説というわけだ。
無論、言うだけはタダの類いであって、本当にそれが正解である必要は特にないわけだが。
ともかく、サンタさんの探しているパスポートが見た目上特におかしな部分のないこと・およびそれゆえに見付けるのも
「いや、なんでよ?」
「見た目が普通であるのなら、捨て置かれる可能性も高いってこと。下手するとゴミと勘違いされる、なんてこともあるかも」
「流石にそれは極端な例だがな。大抵の場合は落とし物としてサツに回されるのが関の山だろうが……それはそれで厄介なことになるだろうから出来れば止めて欲しいところだ」
「……あ、パスポートだから本人確認をされる、ってこと?」
「そういうこった」
そう、見た目が派手ならば誰かが拾う確率が上がる。
そうでないならば、そのまま捨て置かれ……その内ゴミとして回収される、なんてこともあるだろう。
今回の場合、あからさまなサンタカラーであるためジョークグッズか何かと判断されゴミ箱にシュー!……される可能性はゼロではない。
ゼロではないが、中を開けば普通のパスポートの見た目となるらしいことから、そのまま警察に遺失物として届けられる可能性の方が高いのも事実。
そして、その可能性が高いからこそ問題となる。
何故かと言われれば、パスポートは『本人確認書類』であるため。
それを本人に返すとなれば、要するにそれ以外で本人であることを示す必要が出てくるのである。
写真と同じ人間が取りに行けば問題ないのでは?
……と思うかも知れないが、顔が同じだからといって本当に同一人物と言えるかどうかは微妙なところ、というのは俺達の中ですら成立する疑念である。具体的にはダミ子さんとサンタさん。
なので、確認をする際には恐らく見た目以外、明確に本人であることを示す何かが必要となるだろう。
だが、サンタさんはこの世界の人間ではないため、警察が持つと仮定されるパスポート以外に本人を証明する手段がない。
本来なら住民票などを提示する形になるのだが……それらを用意する手段がないというか。
「一応、形式的に問題のない書類を偽造して持っていくって手段もなくはないがな。基本的に紛失程度ならば書類の有効性までは確認せず、パスポートとその書類の一致を確かめる程度で済むはずだから」
「な、なるほど……」
「だが、今回に関してはそれは非推奨だ」
「なんでよー!?」
「パスポート側の有効性の確認をされてる可能性がそれなりに高いからだな」
「…………」
また、面倒なのが彼女が大雑把な区分上では
これが日本人ならそうでもないのだが、外国人の紛失したパスポートとなれば
結果、そのパスポートが日本国内では認められない・使用できないモノであると判明する可能性がある、と。
まぁ、そもそもパスポートの色って単色であることがほとんどで、二色が使われているという彼女のそれは見た目から偽物である、と判別される可能性も高いわけだが。
……ともかく、迂闊に警察に届けられていると面倒である、というのはなんとなくわかって貰えたと思う。
「なるほど、今回は警察署への潜入ミッション」<ワクワク
「いや止めてね?やらないでねTASさん?」
なお約一名、逆に楽しみにしているのがいたりするが……彼女に関してはいつもこんな感じなので敢えて触れはしまい。
願わくば、彼女の思惑通りに事の進むことのないように、と思うばかりである。