うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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誕生!サンタ王

「……とりあえず、別に騒ぎになったりはしてないみたいだな」

「まぁ、別にテロリストが現れたとかそういう話では……」

「?」(ある意味テロリストなTAS)

「?」(実際テロリストみたいなものだったROUTE)

「な、なによ……?」(不法滞在者なので実質テロリストなサンタさん)

「……いや、見ようによってはテロリストの襲撃か、これ」

 

 

 見事に言い逃れできる気がしない面子というか。

 っていうか向こうの持ってる情報次第では、迂闊に立ち入った時点で取っ捕まりそうというか?

 いやまぁ、サンタさんはともかく他二人は未来視系技能持ちなので、むざむざ捕まるようなことはあり得ないだろうけども。

 

 ……ってなわけで、近くの生け垣に隠れながら警察署を窺う俺達である。

 今のところ騒がしさの欠片もないが、これが近寄った途端に崩れたりしないだろうな……とちょっとビクビクしてたり。

 

 

「警察?ってのはよくわからないけど、目的地がここならさっさと行かない?」

異世界(カルチャー)ショック……だと……?」

「……この人何言ってるの?」

「俺からすればそっちが何言ってんだ、だがな……」

 

 

 なお、サンタさんは隠れている俺達の横で堂々と仁王立ちしている。

 ……位置的に建物に隠れているからいいが、そうじゃなかったら目立って仕方なかっただろう。

 まぁ、そのコートの中身をさらけ出した状態と比べれば遥かに地味、というのも確かなのだが。

 

 ただ、彼女の言動が気になったのも確かである。

 そういえば彼女の世界はサンタまみれ、と言っていたが……もしかして言葉通りにサンタ以外何もいないのだろうか……?

 

 

「失礼ね!サンタにも色々いるわよ!ブラックサンタとかグリーンサンタとか!」

「……悪い子向けのブラックサンタが、同時に警察的な仕事をしている可能性はなんとなく思い浮かんだが……いや、グリーンサンタってなんだ……?」

「何って……道案内してくれたりとか、あと大きなソリで移動する時に移動時間の余興をしてくれたりとか?」

「添乗員だこれ」

 

 

 添乗員に緑のイメージはないが……やってることだけ聞くと(まご)う事なき添乗員だこれ。

 ……っていうか、マジでサンタしかいないのかそっちの世界……。

 

 どうやらサンタという単一職に他の職業が付与される、みたいな感じになるらしい。

 聞けば他にも調理担当の『ホワイトサンタ』や、恋愛相談担当『ピンクサンタ』。

 それから変わり種として何でも屋みたいな感じの『レインボーサンタ』なるものまで存在しているとかなんとか。

 

 

「特にレインボーサンタは凄いわよ。何に対しても適正があるってことだから、色んなところで引っ張りだこだし」

「……端から見るとゲーミングサンタでしかないのに……」

「?そっちはそっちでいるわよ。確かゲーミングって色んな色に輝くって意味よね?他所の世界で覚えたわ。……まぁ、こっちでの正式名称はイルミネーションサンタだけど」

敢えてもう一回ツッコミ入れておくけど、サンタって付ければなんでもいいって思ってない???

 

 

 というか飾り付けまでサンタが()()んかい。

 そこはなんかこう、今までのサンタグッズ的なもので済ませておけよ……。

 

 ダメだ、彼女に口を開かせると強制的に思考が停止する。

 このままだと全く話が進まないままにまた一日が終わりかねないので、意を決して生け垣から出ていく俺達。

 そのまま、ずんずんと警察署の入り口に向かっていく。

 

 

「こんばんわー」

「はい、こんばんわ。ご用件はなんでしょうか?」

「こっちの方がパスポートを紛失しまして……」

「なるほど。遺失物ですね?ではこちらにどうぞ」

 

 

 中に入れば婦警さんがにこやかに挨拶を返してくれる。

 それに挨拶を返しつつ、そのままこちらの用件を伝えれば、彼女は普通に俺達を案内してくれたのだった。

 ……なんというか、拍子抜けである。

 

 

「心配の仕方としては過剰だったからな。普通ならこんなもんだろ」

「ふむ。……選択肢を弄ったりは?」

「してねぇよ普通の対応だよ。いやまぁそっちが何かしてない、とまでは保証できねぇが」

「私も何もしてない。()()()()()()()()()

「あん?俺達がなにもしてないなら異常になんぞならねぇだ……ああなるほど」

 

 

 そうして先導する婦警さんの背を追いながら、こそこそと会話する俺達。

 一応、TASさん達は何もしていないとのことだったが……その言い振りからして、これは……。

 

 

「な、なによ!なんだか問題がありそうだからってちょっと気を利かせただけなんだけど?!」

「いやサンタさん、普通は他人に思考誘導なんてしかけないんだわ」

 

 

 視線をずらし、最後尾を歩くサンタさんに向き直れば、彼女は弁明するように口を開いた。

 ……この反応からわかる通り、どうやら先導してくれている婦警さんは何かしらの精神的誘導を受けている、ということになるらしい。

 いや、そもそもその後ろを歩く俺達を見ても他の人達が大した反応を見せない辺り、干渉を受けているのはこの婦警さんだけじゃないなこれ???

 

 ……そういうの、バレた時酷いことになるから止めた方がいいと忠告する俺なのだが、他所の世界に行く時はデフォルトで発動してると言われれば渋い顔をせざるをえず。

 

 

「いや、どっちかというとこっちの干渉を無視するアンタ達の方がおかしいんだからね!?」

「なるほど、つまりお互い様と」

「誰もそんなこと言ってないわよ!?」

 

 

 そのまま、こっちが異常なのだと責任転嫁してくるサンタさんに対し、TASさんはどっちも異常ならどっちが悪いとかない、とかなんとか言いながら頷きを返していたのだった。

 ……うん、流石の俺もその開き直りには同意できないかなー。

 

 

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