「……つまり、これは
「多分、そうなるのよね……」
意気揚々と外に出てきた俺達は、再び生け垣の近くでしゃがみ込む羽目になっていた。
その理由は、サンタさんの先程の発言。
これだ、と彼女が落とし物の中のパスポートから引き出したそれは、外に出て改めて中身を確認した結果『違う』という答えを彼女の口から引き出すことになったのである。
中身をちゃんと検めてから持ち出せばそんなことにはならなかったのかもしれないが、そもそもがサンタ精神干渉(?)によって無理矢理押し入ったようなもの。
……要するに、あまり長い時間中に居続けることもできないので仕方がない部分もあったわけだ。
「でも、残りのパスポートはそもそも完全に違った」
「へ?わかるの?」
「それだ、ってお手本を貴方が手に取ったから。あとはそうじゃないものを弾けばいい」
となると、改めて警察署の中に戻って他のパスポートを確かめなければいけない、ということになるのだが……。
流石に、またサンタ精神干渉()をさせるわけにもいくまい。
……となると、格段に確認が難しくなるわけで……なんてことを考えていたら、横合いからTASさんが口を出した。
どうやら、いつの間にか彼女の方で他のパスポートを確認していたらしい。
その結果、このパスポート以外にサンタさんの持ち物らしきものは残っていなかった、ということが判明したのだった。
……えーと、つまり?
「無駄足と言うほどじゃあないが、結果的には無意味だったってこったな」
「ですよねー……」
ROUTEさんの言葉に、がくりと肩を落とす俺とサンタさん。
……落とし物として見付かったのは他人のサンタパスポート。
彼女本人のパスポートは、どうやら他のところにあるということになるらしい。
「一応聞いておくけど、他人のパスポートで戻れたりとかは……?」
「わざわざパスポートって名前が付いてるんだから、それくらいわかるでしょ……」
「だよねぇ……」
試しにサンタさんに『他人のでもサンタパスポートはサンタパスポートなのだから、それを使って帰れないのか?』と尋ねてみたが、結果は思わしくない。
詳しい原理は不明だが、パスポートなんて名前が付いていることからわかる通り『本人以外の利用不可』になっているらしい。
……つまり、今現在彼女の手の中にあるそれは、完全に無用の産物と……?
「いや待った。他人のじゃ戻れないってんなら、そのパスポート落としたサンタさんは?」
「え?そりゃ戻れないんだからこの世界にいるはず……あ゛」
「……探し物が増えたな」
自分のものじゃないと帰れない。
そして、向こうの世界のパスポートなのだから
……これらのことから、彼女の手の内にあるパスポートの本来の持ち主は、彼女と同じくこっちの世界で彷徨っている可能性が非常に高い、ということになるわけで。
彼女達の世界出身のサンタさんは、本来この世界に残り続けてはいけないらしいということを思えば、送り返すべき相手が増えてしまったということになる。
その事に気付いた俺達は、彼女の手にあるパスポートを前に暫し固まることになったのであった。
……警察署に突撃したのが丸っきり余計なことでしかねー!!
「で、どんな人の持ち物なのかわかった?」
「ええまぁ、一応ね」
はてさて、それからどうしたのかと言うと。
とりあえず手元のそれが誰のモノなのか、サンタさんに確認して貰うことにしたのだった。
……なお、中身の文字は彼女の国の言葉──すなわち俺達が直接視認しない方がいいものであるため、確認は全てサンタさん任せである。
え?TASさんがその辺りの視覚情報ごまかしてるんじゃないのかって?
「流石に隅々までジャミングするよりサンタ本人に確認させた方が早い」
別に私達が欲しい情報があるわけでもないし、というTASさんの言葉から察してください、はい。
……ともかく、そうやってサンタさんに確認して貰ったところ、そのパスポートの持ち主は彼女とは別タイプのサンタ──具体的には『ホワイトサンタ』の類いであることが判明したのだった。
「ホワイトサンタってぇと……」
「調理専門のサンタだっけ?」
「ええ、ケーキとかターキーとか作るのが得意なタイプね。性別・年齢欄・写真から判断すると、こっちでのステレオタイプなサンタみたいな見た目……ってことになるんじゃないかしら?」
「厨房で働くサンタ……???」
「変な噂になってそうだな、それ」
困惑する俺を他所に、すいすいとスマホを操作し情報を検索し始めるROUTEさんである。
数分後、彼女の見せてきたスマホの画面には、この近くの中華料理屋にサンタがやってきた、みたいな記事が写し出されていた。
「……中華でサンタで料理……???」
「しまった、お兄さんの許容量を越えてしまった。私達はここで一回休み」
「ええ……?」
いや、まんまサンタクロースの格好で中華鍋振ってるのはおかしくね……?
思わず思考回路がショートしてしまった俺は、サンタの作る中華は辛いのか、はたまた子供向けに甘めなのかという、至極どうでもいい疑問に占領し尽くされる羽目になったのであった……。