うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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髭は燃えますか?燃えません!

「……はっ!?サンタの作るチャーハンは宇宙だ!?」

「唐突に何を言ってんだテメェ」

 

 

 数分後、正気を取り戻した俺を引き連れた一行は、件のサンタが居るという中華料理店へと足を運んでいた。

 なお、滅茶苦茶混んでた。クリスマス本番はまだだというのにこれ如何に。

 あれか、映えとか言うやつなのだろうか?俺には正直よくわからん概念なのだが。

 

 

「む、お兄さんそれはよくない。だったら私が映えの真髄を教えてあげる」<フンスフンス

お断りします(No thank you.)

「何故に」

「いやだって、TASさんの言う『映え』って本来のやつとずれてそうだし……」

 

 

 あれだ、記録の短縮に成功したのを『感動的。映え』とか言いながら写真に撮ってそうというか。

 もしくは壁蹴りでビルを昇るとか、イベント終わってもいつまでも付いてくるNPCとかを『映え(きろく)』ってやってそうというか。

 ……え?つまるところ『映え』ってのはその人が良いと思ったもののことなのだから、今挙げたのでも別に間違いじゃない?

 そういうのって詭弁じゃねぇかなってお兄さん思うわけ。

 

 

がじがじがじがじ(お兄さんのバカ)

「あででででで」

(なにやってんだこいつら)

(随分と激しいスキンシップなのね……)

 

 

 まぁ、その辺りを正直に指摘したところ、こうしてTASさんからの怒りの反撃を受ける羽目になったわけなのですが。

 ははは、噛みつくならターキーにして欲しいものですねークリスマスの時期なだけに。

 

 ……ともかく、怒り狂う(※当社比)TASさんをなんとか宥め、列の先を眺める俺。

 結構時間が経過していたように思うが、列の進みは遅い。

 どうやら、中華店のサンタは思った以上に売り上げに貢献しているらしい。

 

 

「夕食っつっても結構時間経ってると思うんだがな……」

「それだけ人気なんでしょうね。……ただ、そうだとするとちょっと疑問なのよね」

「はぁ、疑問って?」

 

 

 とはいえ、現在の時刻は夕食と言うより夜食の時間に近い。

 この店がいつ頃閉店時間になるのかはわからないが、普通の個人経営の飯屋なら日を跨いでも開いている、ということは少ないはず。

 ……となると、これだけの人数を捌くだけのキャパがあの店にある、ということになるのだが……さて?

 

 サンタさんが疑問に思ったのも、どうやらその辺りのことのようで。

 

 

「そもそもサンタの作るご飯がそのレベルで売れ行きに貢献……ってのがちょっと想像し辛いのよね。基本的にホワイトサンタのレパートリーってそう多くないから」

「具体的には?」

「さっきも言ったけどケーキとターキー、それ以外は『なんかクリスマスっぽい』ものが一応作れる……みたいな感じになるわね」

「レパートリー少なっ」

「海外の食事事情を思い出すな……」

 

 

 あー、確か海外における食事──それも家庭におけるそれは、基本代わり映えしないのが一般的なんだっけ?

 

 パスタならパスタ、スープならスープ。それも味付けやら具材やらほぼ同一、軍隊食かなんかなん?……みたいな食事が延々と続く……みたいな?

 流石に朝昼晩で献立は変わるようだが、裏を返せば日付違いの朝と朝、昼と昼みたいなパターンだと同一の食事になることがほとんどなのだとか。

 

 そういう意味で、件のホワイトサンタのレパートリーは実に海外的、ということになるのだろう。

 夜は毎回ターキーとケーキ、それから付け合わせのポテト……みたいなことが下手すると一生続く……みたいな?

 日本人からしてみると拷問か何か?って感じの話だが、寧ろそっちの方が世界的だというのだから渋い顔にならざるを得ないというか……。

 

 ともかく、例え中華店のサンタというものが目を引くとは言え、それだけではこの人足の多さに説明が付かない、というのは確かだろう。

 まぁ、逆に言えば作るものが決まっているからこそ、これだけの人数を捌けるということに繋がるのかもしれないが。

 

 

「それはまず間違いないわね。ホワイトサンタならターキーとケーキは一秒で用意できて一人前だから」

「なるほど一秒で……一秒で!?

「?ええ、一秒で。サンタオーブンを扱うのならそれくらいできて当然よ?」

「だから接頭辞にサンタを使えばなんでも許されると思うなとあれほど……」

「すいませーん、次の方どうぞー」

「おおっと、話してる場合じゃなかった。はいはーい」

 

 

 ついついサンタ談義(?)に花が咲いてしまった。

 店員がこちらを怪訝そうに見る姿が視界に入り、俺達はそそくさと店内へと進入。

 そして、そこでお目当てのサンタと対面することになったのだった。

 

 見た目は、ほぼほぼオーソドックスなサンタのそれ。

 ……服の上からエプロンを着用する姿はちぐはぐさを覚えるが、それを言い出したら中華鍋を握ってる時点で手遅れなので問題はない。

 

 特筆すべき部分のない、面白味のないとすら言えるそのサンタが、ただ一点──不釣り合いな場所にいる、というそれだけこそが彼の面白さを強調しているとも言えるわけで……。

 ……なんて失礼な分析をしながら彼を見ていたところ、その視線に気付いたのか彼もこちらを向いて──、

 

 

「……お、お母さん……!?」

お母さん!?

 

 

 驚愕に見開かれたその眼差しは、最後に店内に入ったサンタさんに向けられており。

 その視線を受けた彼女は、震える右手で彼を指差しながら、思わず二度聞きしたくなる言葉を口走ったのであった。

 

 ……いやお父さんじゃなくて!?

 

 

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