うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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お前を生かす<デデン!

 最後の客が俺達だった……ということもあり、特に何を頼むこともないまま外に出てきたわけなのだが……。

 現場は、異様な空気に包まれていた。

 なんというか、妻なり夫なりの浮気現場に踏み込んだ結果、そこで相手方の人間と鉢合わせた時のような緊張感というか。

 

 

「やけに具体的。まるでお兄さんがその現場に居合わせたことがあったかのよう」

「流石に当事者ではないけど、偶然巻き込まれたことはなくもないかなぁ」

「……寧ろ当事者じゃねぇのに、どうやったら巻き込まれるんだその状況」

 

 

 いやほら、配達員のバイトとかしてたら……ね?

 

 そこら辺は今掘り下げる話でもないので置いとくとして、サンタさん側の話。

 パスポートの持ち主を探してやって来た中華料理店にて、出会ったこてこてのサンタクロース。

 しかしそれは、こちらの同行者であるサンタさんの母親、だったのだという。

 

 ……うん、経緯が複雑骨折してるなこれは???

 見た目男性のサンタにしか見えないのが母親……ってのもあれだし、そもそも中華料理店に何故サンタがいるのか、っていう点であれだし。

 まぁ一番のアレなポイントは、そんな最早ギャグのような経緯の癖に、当事者間に流れる空気が緊迫しきっているってことだろうが。

 

 

「……数年前に居なくなったと思ってたら、こんなところで何してるのよ貴方」

「それは……その、パスポートを無くしたから……」

「嘘つきなさいよ!貴方ならこんなもの、なくても帰ってこれたはずよ!!?」

 

(……いきなり驚愕の事実が明かされてる気がするのは気のせいかな?)<ヒソヒソ

(パスポート無くても移動できる、みたいなこと言ったな今)<ヒソヒソ

 

 

 責めるサンタさんと、拙い弁明を繰り返す相手のサンタさん。

 ……どうやらこっちのサンタさんは母親?に捨てられた、みたいな感じに思い詰めていた様子なのだが……。

 すまん、これ聖夜(クリスマス)にやる話かな?いやまぁ当日まではまだ日があるけども。

 でもその前段階にやるような話でもな……え?クリスマス舞台のドラマだって似たようなことやるって?そりゃまぁそうだけども……。

 

 一応弁解しておくと、別に彼女達の仲直りとかを後押しする気持ちがない、みたいな話ではないのだ。

 問題は、こういう飛ばしていいのか悪いのか微妙な立ち位置のイベント(ムービー)だとTASさんが……ってところにあるわけで。

 

 

「」

(ひぃっ!?TASさんが荒ぶってる!!?)

(ああなるほど、飛ばせないやつ(Not skip MOVIE)なのかこれ……)

 

 

 ほれ見てみなよこのTASさんの動き!!

 まるでこれから超加速してどっか別の場所に吹っ飛んで行きそうな微細振動!

 そのままクリアフラグゲットして今年のクリスマスは終わりっ!とかしてきそうな空気感!!

 

 実際には短縮箇所がないので荒ぶってるだけだけど、それはある意味イライラしているってことでもあるわけで。

 ……彼女の爆弾が爆発する前に、サンタさん達の話を終わらせなければならないのだ!

 

 

「貴方があの日、帰ってこなかったから私は……」

「■■■……」

(あからさまに検閲入ったが、多分あれがアイツの本名か)

(やべぇ!!本来なら伏せ字(ピー音)でもヤバいって話なのに、TASさんが半ば役割を放棄し始めてるから漏れ出てる!?)

(なにそれ)

 

 

 見たところ、サンタさん達の話は佳境に入ったところ。

 ……このあとすぐに終わるとは断定できない以上、まだまだTASさんにはネームスキップを頑張って貰わなければならないわけで……え?ムービー中なのに一部音声飛ばせるのかって?

 これに関しては影響箇所が違うのでなんとかなる、みたいな話でして……。

 

 なお、そのお陰というかそのせいというか、こっちに来てからは基本的に呼ばれるはずのない自身の名前が相手から飛び出したことにより、サンタさんが異変に気付いてこっちに振り向きギョッとする、なんて一幕もあったが……。

 それでこっちを気にして早く会話を終わらせよう、等と考えると余計に時間が掛かる結果になるのは目に見えていたため、そのまま話を続けてくれと身振り手振りで返す羽目になったのだった。

 

 たまたま相手のサンタがこっち見てなくてよかったね!!

 変に気付かれてたら変に中断されて変に間延びする結果になってただろうし!!

 

 

「……今さらこんなことを言っても信じて貰えないかもしれない。けれど言わせて欲しい。必ず戻る、だから待って貰えないだろうか?」

「……え、ええ。わかったわ。待ってる、いつまでも貴方を

「……?■「待ってるから!!私向こうで待ってるから!!いいわね!!?」あ、ああ……」

 

(セーフ?!これセーフ!!?)

(全部言い切られてないからセーフ!!)

(よっしゃあ!!)

 

 

 いやガッツポーズは止めようよサンタさん。

 ……そんなわけで、ポカンとする相手のサンタを置いて、俺達は自宅へ続く帰路を走り始めたのであった。

 え?あのサンタは放っておいていいのかって?

 自力で帰るだろうしこれ以上付き合うとTASさんが爆発するから放置だ放置!!

 

 

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