「この三人での行動、というのもなんだか久しぶりのような気が致しますわね」
「そう?私はいつも考慮してるけど」
「……TASさんのそれは追記内でルート構築の時に全部試してる、ってだけの話だよね?」
はてさて、他の面々を家に残して外へと飛び出した俺達一行。
AUTOさんとTASさん、それから俺という初期も初期の面子であるその一団が進む先は、昨日訪れたばかりの中華料理屋である。
流石にこの時間帯に店が開いているとは思わないが、件のサンタさんの所在を確かめるためにもここに向かうのが最善、ということになったわけだ。
「……予想通り、まだ準備中ですわね」
「人の気配はするから、話を聞く分には問題無さそうだけどね」
で、特に問題もなく店に到着。
昼前ということもあり店は閉まっているが、中から人の気配はするので午後からの開店準備中、といったところだろう。
別に飯を食べに来たわけではないので、そのまま気にせずドアをノックして待つこと数分。
「はぁい……?」
「あ、どうも開店時間前にすみません。ちょっとお伺いしたいことがあるのですが、お時間大丈夫でしょうか?」
「え、あ……え、ええと。どういうご用件でしょうか……?」
現れたのは、目元が前髪で完全に隠れてしまっている黒髪の女性。
女性と判別したのはその声色からだが……いやちっさ。いや聞き取り辛っ。
周囲がさほどうるさくないからこそ聞き取れているが、これ周囲が騒がしくなったら確実に聞き取れない類いの声量と声色だぞ?
……なんてことを思っていたのが伝わったのか、ほんのり怯えている仕草が返ってきたため、隣のAUTOさんに脇腹を小突かれる羽目になる俺である。
仕方がないのでできうる限りフレンドリーな態度を心掛けるようにしたのだが……うん、最初の印象は拭い辛いのかこっちの小さな挙動に一々反応される始末である。
……こうなるとどうしようもないので俺が対応するのは諦めて、AUTOさんに話を任せて俺とTASさんは別のことをすることに。
外で話していると変に注目されるから……というわけではないだろうが、早々に店内へと案内された俺達は現在、普段は家族連れ等が陣取るのであろうテーブル席に座っている。
……それなりに歴史ある店なのか、テーブルには傷が目立つ。
汚れなどは見えないが、やはり年期があるというか……まぁ、そんな感じのテーブルだ。
脇の方には調味料や箸・紙ナプキンなどが備えられているが、これもまた汚れはなくとも年期が窺える。
テーブル上から視線を外し、壁の方を見てみれば、いつ頃から貼られているのかもわからない古いビールのポスターが。
その横にはビールサーバーがあり、酒を飲みたい時にはここから注ぐのだろうということが一目でわかる。
で、その横はカウンター席。
厨房内がひょいと覗けるその箇所は、普段他の店でも見掛けるような普遍的な造りになっており、特に目を惹く箇所はない。
……総じて、普通の中華料理店であるという感想を抱くような、よく見るタイプの個人経営店であることが窺えた。
まぁ、店内に彼女以外の店員が誰一人いない、ということには少々疑問を抱かないでもないが。
「お兄さんが気にしてるのは、あの人が店長だとすると
「それもあるが、個人店なら店員なんてそう多くはないだろう、って部分も気にしてる感じかな」
「なるほど、そっち」
そうして店内を見ていると、TASさんから小さく耳打ちが。
何やら小さく首を捻っているのが目に入った、とのことだが……まぁ、この店内を見て疑問を抱かない方が不思議だろう、とのこともあって俺の返答はすんなり受け入れられた。
TASさんの言う通り、目の前の女性が店長であることを疑っている、というのも少なからずある。
さっきも言ったように、この店はわりと年期が入っていることが窺える。……となれば、代々受け継がれてきたタイプの店であることはほぼ間違いないはず。
にもかかわらず、店内には先代に当たるだろう人物の姿が見えない。
あの空気感で跡を継いでから時間が結構経っている、ということはあるまい。
ならば、お目付け役とばかりに指導する誰かが近くにいるはず、と思うのはそうおかしい話でもない。
また、それに付随して店の規模から個人経営である、と試算したことも疑念の一つになっている。
流石にこの大きさの店で店員が四人も五人もいる、ということにはならないだろう。
精々店長も入れて三人くらいが関の山。
……となれば、朝の仕込みに
先代の店長、推定現店長の女性で二人埋まるのだから、必然昨日のサンタが三人目、かつ最後の店員と言うことになる。
──目の前の女性の頼りなさを思うと、そのどちらもいないというのは最早奇っ怪ですらある、というわけだ。
そういうわけで、結果として目の前の彼女が店長である、という予測は揺らいでいるわけなのだが……。
「はい貴方様、こちらの話は終わりましたが?」
「おっと、ありがとうAUTOさん。で、サンタさんは何処に?」
「彼女です」
「……はい?」
「ですから、この頼りない方が昨日貴方が会ったというサンタさん本人ですのよ?」
「…………はい?」
「こ、こんなのがお探しのもので申し訳ありません……」
話が終わったというAUTOさんの言葉を受け、平身低頭する女性。
……思わず事態が呑み込めず、フリーズしてしまったのは仕方がないと思う俺であった。