「クリスマスに自分の息子が家族を連れて久しぶりに顔を見せるので、それまでは店を開けていたい……か。なるほど、確かにそれはプレゼントみたいなものってことになるねぇ」
あの後、詳しい話をサンタさんから伺ったわけだが……これを即座に終わらせて帰れ、とは言えなくなった俺達である。
いやまぁ、TASさんだけは「じゃあクリスマスが終わった後まで時間を飛ばす?」とか聞いてたけど。無論止めさせたが。
……ともかく、サンタさんがここに留まり続けている理由は、元を正せば彼女がたまたまこの店に通り掛かったことにあるのだという。
さっさと帰ろうとしていた彼女は、たまたまこの辺りを歩いていて──そこで、倒れている店長を見付けてしまったのだとか。
そのまま流れるように彼の入院を手伝うことになり、その病気がすぐに直るようなものではないと知って……結果、彼の代わりに店を切り盛りすることを決めたのだとか。
「その、病気と言うのは……?」
「あ、いえ。言い方が悪かったので誤解させてしまったかもしれませんが、別に命に別状があるとかではないのですぅ」
「はぁ」
年寄りによくある疲労骨折、というやつだそうだ。
で、くっつくまでに大体三ヶ月くらい掛かるらしく、そうなったのが大体十月の頭くらいだったそうで……。
「なるほど、十二月には確実に間に合わない」
「はい……一応、彼のご家族に言伝さえ届ければ、それ以降は店を閉めておく予定なのですが……」
「息子さんとやらに予め連絡をしておく、ということはできませんの?」
「それがどうにも……一度喧嘩別れしたとかなんとかで……」
「あーなるほど、向こうから一方的に連絡してきたとか、そういう……」
で、どうやら店長さんと息子さんの関係もわりとややこしいらしく。
……十数年前に喧嘩別れした息子が、時間に解決を任せて連絡してきた……みたいな話になるらしいが、確かにそれはどうしようもない。
恐らく電話ではなく手紙、それも住所とか記載されてない一方的なモノだったのだろう。
……となれば、どういう対応をするにせよ直接会うしかない、というのも納得できる。
「……納得できる上で、質問があるんですけど」
「は、はい?なんでしょうか?」
「それ、十月の話なんですよね?でも確か、あっちのサンタさんの言い方からすると貴方は数年前から行方不明だった、ということになりそうなのですが……」
「ええとまぁ……はい……」
「肯定されちゃったよ」
納得できる上で、何やら話がおかしいような気が?
確か彼女とあっちのサンタさんが出会った時、向こうは『数年間顔を見せなかった』ことを怒っていたはず。
言い換えると彼女は数年間行方不明だった、ということになるはずなのだが……こっちのサンタさんの言い種からすると、彼女は十月で帰るはずだったように思える。
それはすなわち彼女の
「理由……ですの?」
「まぁうん……こっちの勘違いならいいんですけど……もしかして、貴方達サンタの言う『クリスマスプレゼント』って、
「……!せ、正解ですぅ。もしかしてサンタ有識者……?」
「変な役職付けないで下さい」
……思わず真顔で返してしまったが、彼女の返答で確信する。
この人、多分だが
そう呻くように漏らした声を聞いて、AUTOさんは暫し首を傾げていたが……サンタさんの方を見て何かに気付いたのか、そのまま遠い目をしていたのだった。
「むぅ、二人だけで仲良さげ。私にも教えてー」
「いやTASさんならわか……ああそうか、過去の話になるから微妙にTASさんの専門から外れるのか……」
そうして遠い目をする俺達に対し、TASさんだけが不満そう(※当社比)に頬を膨らませている。
彼女のことだから真っ先に答えにたどり着いていそうなものなのに、と不思議に思ったのだが……そういえばここでの話題はサンタさんの過去。
それも数年前とのことなので、今俺達が行っているループの外側になり彼女の能力の範囲外……すぐに理解できるモノではないのだ、と把握。
ついでに言うなら彼女達はサンタ。
……本来物語にいるはずのない
そりゃまぁ、TASさんも後手に回るというものである。
つくづくサンタって例外なんだなぁ……としみじみしながら、いい加減焦れてきたTASさんに頭へと噛み付かれる前に、俺は目の前のサンタさんが今まで何をしてきたのか、その予想を言って聞かせたのだった。
「多分だけどこの人、今回の話の前にも同じように誰かを手助けしてたんだよ、それでずるずる数年経過した、と」
「……嘘だぁ」
「本当ですぅ……」
「ええ……?」
困惑しているTASさんとか、初めて見たような気がする。
そんなことを思いながら、思いの外今回の一件が面倒臭そうなことに小さく唸る俺なのであった……。