さて、突然サンタさんを連れて遊びに行く、ということになったわけなのだけれど。
無論、考えもなしにいきなりそんなことを言い出したわけではなく、これはTASさんからの提案だったりする。
「……下手に連れ回すとトラブルに引っ掛かる、って話だったと思うのですが?」
「それはその通り。……ただちょっと想定外だったことがあって」
「想定外?」
「ある程度ガス抜き──トラブルに接触させておかないと、後々反動みたいな形で爆発することが判明した」
「……わーぉ」
最初に言っていたことと相反するようなことを彼女が言い出したのは、この数日間サンタさんと一緒に暮らすことで様々な変数を実際に確かめることができたがため。
それによれば、どうやらサンタさんがトラブルに出会うというのは、ある種の種族特性的なものに該当するらしい。
「種族特性?」
「そう。サンタの目的というのはプレゼントを渡すことだけど、何度か確認している通り彼女達にとってのそれは『何かしらの手伝い』のようなものも含まれている」
恐らく、子供だけではなく大人も相手として含むこと・および単純な贈り物を求めているような人物だけが相手ではない、ということが関係しているのだろうとTASさんは語るが……。
ともかく、サンタ達の言う『
そしてそのせいと言うべきかおかげと言うべきか、彼女達は野生の勘のような形で周囲の困りごと、というようなものを探知することができるらしい。
「正確には、周囲の人間が困りごとを口に出しやすく・ないし自覚しやすくなるという形。言い換えると相手がサンタに見付けやすくなる」
「話だけ聞いていますと、まるでフェロモンで誘引しているかのようですが……それが、先程のガス抜き云々とどう関わるのです?」
「AUTO、正解」
「……はい?」
「
「……表に出てくるトラブルの量が増える?」
「増えるだけならまだマシ。場合によっては周囲のトラブルと合成された結果、国家転覆級の問題が飛び出してくる可能性もある」
「それはまた……随分と大きな話になりましたわね……」
うーん、まるで『困りごと』という食事を引き寄せているかのようですらある。……やっぱりサンタって神話生物なのでは?
ともかく、下手に細かなトラブルにすら関わらせずにいると、却って大きなトラブルを引き寄せる結果になってしまうらしい。
……で、今ここにいるサンタさんは特にその傾向が強いとのこと。
「帰ろうとする度にトラブルに巻き込まれていたのは、一つの問題に集中しすぎてガス抜きを怠っていたため」
「……ちょっとお待ち下さいまし、それってつまり……?」
「そう、大きな贈り物の準備をしていても、細かな贈り物を蔑ろにしてはいけない。典型的な社畜の気質」
「なんとはた迷惑な……」
彼女は一つの問題に注力してしまうタイプのサンタだが、その癖体質の方は細かなトラブルもしっかりこなさないとすぐに上限を叩いてしまうという、ちぐはぐにも程がある存在であるとのこと。
……ゆえに、一つのトラブルを片付ける頃にはサンタトラブルゲージがカンストし、結果として帰る暇などというものが欠片も存在しない状態に陥ってしまった……と。
ついでにいうと、発散する分と収束する分では後者の方がほんのり多いらしく、このまま彼女にスケジュール管理を任せていたら、それこそ国家転覆級のトラブルが
……うん、サンタが危険物扱いされるのは今さらだが、彼女はそれに輪をかけて危険物だったわけだ。
とはいえ、だからといって早々に追い返すのも宜しくないとのこと。
「ガス抜きをしないまま送り返すというのは、すなわち自分達に被害は及ばないからとミサイルの進行方向を他所にずらすようなもの。……問題を
「今回の場合は彼女の出身世界である、と?」
「そう。そしてそれは、サンタという存在が犇めきあっているのを無理矢理他所の世界に追い出すようなもの」
サンタさんのそれは種族特性であり、彼女がこの世界にいるから起きている、というようなものではない。
つまり、このまま送り返すと彼女は向こうで爆発してしまうわけで。……その結果起きることはサンタワールドの崩壊と、それに伴うサンタ達の異世界への放流である。
……いやまぁ、流石にこれは最悪を想定した時に起こりうることであり、実際に起こる可能性はそこまで高くないはずではあるのだが……ともあれ、他所の世界と余計な軋轢を生む必要はない、というのも確かな話。
そういうわけで、サンタさんのガス抜きは喫緊の対処案件として受理され、結果こうして彼女を連れての休日旅情紀行の開幕と相成ったわけなのだった。
「とりあえず温泉とかは行く予定。確実に何か起こる」
「殺人事件とか呼び寄せそうだから止めない?」
……なお、確かに彼女のガス抜きは最重要事項だが。
同時に、TASさんが現状を楽しんでいることもまた、半ば予定調和であることは言うまでもない。